第52話 ステータス鑑賞会

俺の種族について、二人で「あーだ、こーだ」言い合っても結論は出ない。


混血と言われても、全く思い当たるところが無いのだ。


「と、とりあえず。他のステータスも検証してみよう。」


「そ、そうじゃな。」


俺たちは鑑賞会をすることにした。


改めて、自分のステータスを覗き込む。


【ヤマト・ドラギニス】

『種族』龍人族・龍神族・精霊族(根源精霊)の混血。

『職業』魔法使い見習い。

『状態』飢餓。

『魔法Lv』身体強化Lv1。

『スキル』自己ステータス表示。

『称号』三つの龍を宿すもの。


「あれ?今気がついたけど、力とか魔力とか数値化されないの?」


「なんじゃそれは、オヌシの世界では力が数値化されるのか?」


「いや。俺の元いた世界ではステータス魔法自体がないけど、ラノベの話だけどさ。」


「らのべ?オヌシの前世のものか?」


「ああ。小説……。本の物語だよ。」


「ふーん。よく分からん。」


リリスには今いち理解出来ないようだ。


まぁ……よく考えて見れば、ラノベで読んだものと違うのは当たり前だよな。


「種族のところだけど、精霊族にカッコがついてるぞ。」


「カッコ?」


リリスには俺のステータスは見れない。説明を細かにしてあげなければいけない。


「うん。根源精霊って書いてある。」


「根源精霊……聞いたことがあるぞ。」


「知っているのか?リリス?」


「いや、お伽話で聞いたことがある程度じゃが、はじまりの精霊と言われる精霊じゃ。」


「はじまりの精霊?」


どこかで聞いたことがあるような単語だ。俺はそれが何か思い出せそうで、思い出せない。誰から聞いたんだっけか。


「なんじゃ。知っておるのか?」


「うーん、何だっけなぁ……。どっかで聞いたような。リリスの時代でお伽話って、かなり昔の精霊なのかなぁ?」


「少なくとも、ワシの時代に「はじまりの精霊」という精霊は見たことがない。」


「ということは、架空の精霊ってことも?」


「それはあるじゃろう。神話に出てくる登場人物は大体架空じゃ。」


「へぇ、神話。」


前の人生では神話なんて興味なかったが、今は神様と絡むことが多いので興味津々である。


知っておいたほうが何かと今後、役に立つかも知れない。


「ワシも大分昔に一度聞いただけでな。うろ覚えなんじゃよ。すまん……。」


「ざっくりでいいよ。どんな神話?」


「世界創生という神話じゃ、その最初の一節にあるんじゃ。」


「最初の一節だけでも聞かせてくれ。」


「うむ……。「はるか昔に世界は無であり神も生物もいなかった。しかし大いなる存在。はじまりの精霊が全てであり、その根源精霊たる精霊は……」と、こう始まる。」


「うーん。はじまりの精霊が根源精霊ってこと?」


「うむ。同じことじゃろう。」


「それだけ?」


「すまんがウロ覚えでの……。ワシは神話というものが大嫌いでの。」


「お前、お伽話とか嫌いそうだよな。」


俺は笑った。


たしかにリリスは実利や現実主義の性格をしている。お伽話とか神話とかって、相容れないものなんだろう……。


「しかし、なぜに俺のステータスに「はじまりの精霊」が?謎過ぎるぞ……。」


「ワシにも判らん。今考えても判るまい。」


「だな。三つの龍を宿すってステータスは何だろ?」


「これはあの、白い龍のことじゃろうか?後二つも宿しているってことかのぅ?」


俺の体っていろいろあり過ぎて、どこから突っ込めばいいんだろうか……。


「あと自己ステータス表示ってスキル。これは分かる。そのままだな。」


「こうなってくると、ステータス魔法という呼び名は相応しくないのぅ。これからはステータスとだけ呼ぶかのぅ。」


「あとは魔法Lv1の身体強化のみだな。Lv1なんだな。」


「属性を調べるまでも無かったのぅ。」


「ちょっとショック……。」


「無だったんじゃから、進歩じゃよ。」


「龍神とか、根源精霊とかのくせに属性が1個で、レベル低くない?」


「レベルについては修行と経験で伸びていく。5歳で魔法が使えていること自体が凄まじいがのう。それに属性はヤマトの場合、増える可能性もある。」


「属性が増えたら嬉しいなぁ。ちなみにレベルって、どれくらいあるの?」


「Lv1=低位魔法 Lv2=中位魔法 Lv3=高位魔法 Lv4=神位魔法じゃ。」


「そ、そうなのか。思ったよりもざっくり分けられているんだな……。」


「今は低位魔法までしか使えんということじゃ。」


「でもさ。おかしくないか?」


「何がじゃ?」


「ステータス魔法って伝説の魔法なんだろ?」


「ああ、そうじゃ。」


「なのに、何故お前がレベルの区分けできるの?」


もし、伝説級なら。魔法にレベルがあること自体知らないはずだ。


「ああ。そういうことか。さっきも言ったが、カリアース使えていたからじゃ。」


「あ、なるほど。」


「このレベルの区分けも、カリアースが考案したものなんじゃ。」


「へぇ。ちなみにカリアースのレベルは?」


「Lv5=超越とか言っておったな。」


「何それ……。」


「基本的にアホじゃったからのぅ。勝手にそう言っていただけじゃよ。」


「……。」


「ワシはLv4=神位魔法じゃったな。」


「すげぇ……。最高レベルじゃん。」


「それでもカリアースには敵わんかったがのぅ。奴は魔法と戦闘にかけては敵無しじゃったから。」


「凄いんだか、凄くないんだか。良く分からない人だな。カリアースって。」


「それはワシもそう思う。」


「それに状態は飢餓か。それは言われないでも判る。」


ステータス鑑賞会を終えた。


はっきり言って俺は自分が何者か分からなくなってきていた。

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