第51話 ステータス魔法

翌朝、俺は眼を覚ますとリリスは居なかった。


不安になった俺はリリスを呼んでみる。


「リリス!リリス!」


大きな声で呼んでみる。


「何じゃい?」


リリスはすぐに入口のほうから戻ってきた。


どうやら、俺が寝たあと見張りをしてくれていたようだ。


リリスの姿に安堵する。


この誰もいない森の中で、リリスは心の拠り所に感じていた。


「見張りしてくれていたのか……。すまない。」


リリスは、実体化しているときには睡眠も必要になる。食事は必要ではないのだが、それは不思議。


彼女も眠気を耐えて見張りをしてくれていたのだ。


「ワシは良いんじゃが。昨日の話に戻るが、まずは食料じゃ。メシを食わねば、いずれ餓死するぞ。すぐ狩りに出発じゃ。」


「メシ……。今日こそゲットしたいな。」


そして、俺はまたメシ(動物)を探しに行った、


ところがだ……。


3日経っても動物は捕まえられなかった。


大型動物は諦めてリスとか小動物を狙ってはみたものの、まったく狩りは成功しなかった。


救いは、水不足になることはなかったがカロリー不足甚だしい。


このままでは危険だ。


「は、腹減った……。」


とにかく腹が減って仕方なかった。


かなり衰弱してきている。状況は深刻だ。


「これは危険じゃ……。」


さすがに焦りを感じたリリスは色々と(あっとを探せ、こっちを探せ)、指示を飛ばす。


しかし、一向に動物は捕まえられない。


単純なことであった。


野生の動物をそうそう簡単に捕まえられるはずがないのだ。


警戒心が強い動物は俺が遠くにいることを早くから補足しており、近寄った時点で逃げている。 


素人な俺が、動物を狩れる確率はゼロに近い。


空腹で衰弱に向かう俺は、このままでは死んでしまうと思うようになってきている。


(こ、これはヤバイ。本当に死ぬかも。)


思考も朦朧として仕方がない。


空腹のあまり、そこらへんに生えている。


草や木の実を食べているが、まったく栄養が無いせいか力が抜けてくる。


リリスが心配してくれている。


俺の気でも紛らわそうと、「使えるかも知れん。」と、ステータス魔法を教えてくれた。


ステータス魔法とは、伝説の魔法と言われている。


魔法と言うより、【スキル】に分類される。


「かつて龍人族でも、限られた存在しか使えんかった。魔法というよりスキルじゃな。」


「そんなの、俺が使えるわけねーだろ。」


「判らんぞ。カリアースは使えた。」


意味深に俺を見つめるリリス。


「カリアースが使えても、俺は別人だし……。」


身体魔法が使えるだけの男が、そんな伝説の魔法を使える訳ない。


「まぁ、使ってみよ。ものは試しじゃ。」


「じゃあ、詠唱呪文を教えてくれよ。」


「ない。」


「は?」


「いや、これはスキルじゃから……。」


「まじか…。」


「まぁ、やってみるか……。」


俺は渋々試してみることにした。


(ステータス……、ステータス……。前世で見たラノベで出てくるあれだよな。よし!イメージは出来た。)


「ステータス……!」


俺が念じると、あっさりそれは成功した。


ブオン……。


目の前に3Dホログラムのように現れた。


「で、出た!」


「まことか!」


ここでも俺は詠唱なしでステータス魔法を成功させたのだ。


「ほ、本当に使えたよ。おい……。」


驚いて尻もちついてしまったぜ。


3Dホログラムには、文字がびっしりだ。


「リリス。これお前にも見えているのか?」


「いや、ワシには見えん。そもそもステータス魔法は他人には見えんが、ワシはオヌシと魂同化しているのに、どう言う訳じゃろう……。」


そう言うと、リリスは考え込んでしまった。


考え込んだリリスを放置して、俺はステータスを見る。


(俺のステータスは……。)


【ヤマト・ドラギニス】

『種族』龍人族・龍神族・精霊族(根源精霊)の混血。

『職業』魔法使い見習い。

『状態』飢餓。

『魔法Lv』身体強化Lv1

『スキル』自己ステータス表示。

『称号』三つの龍を宿すもの。


これが俺のステータスだ。


あれ……。


俺、【龍人族】だけじゃなくて【龍”神”族】と【精霊族】。


は?


「こ、混血!?」


俺のセリフにリリスが驚く。


「ど、どうしたのじゃ。」


「リ、リリス……。」


俺は見たものをリリスに伝えた。


「な、なんじゃと!?」


固まるリリス。


「龍神族、精霊族って何?」


初めて聞く名前である。俺の知っている歴史書にも書いてなかったような……。


「龍神族とは、創生期に生まれた種族。龍人族と龍人の祖先じゃ!神に近しい存在……、伝説の龍族じゃ!」


「で、伝説の龍族?」


な、なんか中二魂が呼び起されそうなネーミングである。


「そうじゃ。ワシが生まれていたときには伝説と化していて。存在すら疑われていた種族じゃ。」


「な、何で俺が?え?どういうこと?」


二人で顔を見合わせる。


リリスも状況を理解出来ていないようだ。


「精霊族は?」


リリスは頭を抱える。


「精霊族とは、神や悪魔の上位族と言われている。それは神話の世界の種族じゃ。」


「今度は神話……!?どーなってんだよ。」

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