第49話 世界創生神話 ※資料

※※長いです。読まなくても大丈夫です(作者)※※


※※ヤマトの根本にかかわる話ではあります(作者)※※



世界がまだ生まれて間もない時代。


神界も地上界もない……。ただ一つの世界だった頃のお話。


「はじまりの世界」がそこに有った。


その世界には、はじめ白い空間しかなかった。


存在するのは、精霊達のみであり。白い「無」の世界。


精霊達の言葉を借りれば「楽園」がそこにあった。


楽園には精霊しか存在しない、動物すら存在しない世界であった。


何もはじまっていなかったが、それが故に無限の世界があった。赤子は未熟でなにも出来ないが、その純粋な瞳が無限であるかのように……。無限であった。


この精霊達は、「はじまりの精霊」と呼ばれ、世界創生前の精霊であり非常に強い力を持っていた。


はじまりの精霊達は暇を持てあましていた。


あまりに暇であるため、気まぐれから楽園とは別次元に地上を創造した。これが地上界の元となるウチラース界と呼ばれる世界で、ヤマト達がいる世界である。


精霊達は楽器のような音色を出してウチラース界を楽しみ歌う。


そこから、まず天族が生まれた。そして、龍神、エルフ、ドワーフ、人、動物が生まれた。


精霊達はそこに生まれる小さな命の奇跡を慈しんでいた。


すべての種族は平等であり、動物以外はほとんど同じ力を持っていた。


生命は平等であったのだ。


龍神族は、やがて龍族と龍人族に別れた。


動物達は強い力の影響を受けていた。その中で少数だが獣人族として変化する者も現れた。


感情をもった生物たちが地上を覆い、それはやがて「喜び」「怒り」「嫉妬」「妬み」「悲しみ」「愛」が満たされていく。


精霊達はそれを楽しんでいた。


しかし、精霊達も想定していなかったのだが、逆に精霊達側が影響を受け始めた。


影響を受けた精霊達は感情をコントロールできず、存在を変えることで安定をはかった。


ある精霊は「神」となった。


とある精霊は「悪魔」となった。


精霊のまま、存在の高みを目指し「精霊王」となるものもいた。


もちろん、精霊のままで存在し続けるものもいて、ざまざまな個性をもつ精霊が増えた。


自らの形態を変えざると得ない状況に、精霊、神、悪魔たちはウチラース界に恐れを抱き始めた。形態を変えずに残っていた「はじまりの精霊達」は、そうそうに「楽園」に逃げ込んだ。


しかし、ある「はじまりの精霊」の一人だけは、踏みとどまった。地上界が心配だったのだ。


はじまりの精霊は、無責任な精霊達に怒ってもいた。


はじまりの精霊は地上界を本当に愛していたのだ。


その精霊は、精霊として長く存在していたが、名前も体もなく。光り輝く「それ」でしかなかった。


今となれば、ウチラース界(地上界)に残った、ただ一つの「はじまりの精霊」である。


「それ」は、もともと精霊達の中でも群を抜いて強大な力を持っていた。比べようもなく強い力を持っていた。


その気になれば、「それ」は精霊王にもなれるし、神にもなれる。強い知能と力をもっている高い次元にいた。


しかし、「それ」はウチラース界を憂いていた。


なぜなら、地上は争いが絶えず悲しみを増産し続ける。神は享楽に沈むものが多い、悪魔は好き勝手に暴れて回っている。


魂の進歩がない…………。


龍族や龍人族も、エルフも、寿命や力が多少あるだけで人間とそれほど変わらない。


もはや「それ」は、世界のあり方自体に意味を感じていなかった。


そして絶望するようになっていった。


愛するが故に、その絶望感は深く、そして病魔のように「それ」を侵食していった。


進歩がなく退廃していく世界に何の意味があるのかと。そして、「それは」決意した。


意味のない存在達を「喰べよう」と……。


それから、「それ」の行動は恐ろしいものだった。


精霊・神・悪魔・龍・エルフ・ドワーフ・獣人・人・動物


何でも「喰った」。


食べて食べて全部が一つになれば、今よりは良くなるだろうと……。


「消えてしまえ……。」


半ば怒りをぶつけるがごとく、世界で一番凶悪な捕食者となった。


【捕食者】の誕生の瞬間でもあった。


当然、食べられる側も黙ってはいない。


地上界にいた神・悪魔たちは連合を組んで戦いを挑んだ。


しかし、はじまりの精霊である「それ」は強すぎた。


補食すればするほど、強さを増す「それ」は手の付けられない存在になりつつあった。敵うものがいるとしたら、「楽園」に逃げていった、はじまりの精霊達だが、地上界では誰も敵になりえない。


神でさえも敵わない強大な「それ」に神々と悪魔達は恐怖を感じ、逃げ出した。


神は《神界》を作り、そこに逃げた。


悪魔も同様に《魔界》を作り、そこに逃げた。


精霊王達はまだ見所があった。精霊界を作って逃げたが、地上界に眷属である精霊を数多解き放ち、精霊界に逃げた。自分よりも弱い存在である人や龍族が心配であったのだ。 そのため、地上界には残った精霊達が、いまも存在している。


ここに、「楽園」「地上界」「神界」「魔界」「精霊界」 が、5世界が出来上がる。


※神達の呼び名である世界。地上界での認識と異なる※


5世界の他に、「幽界」もあるが、これは死んだものが一時的にあつまる場所、人格などは消され。ただ魂の保管庫ともいうべき場所だ。これについては「世界」とは言えない。


5世界は、基本的にお互いが、お互いの出入り口を固く閉じ、何者も干渉することができない。


魔界のみが、多少の出入り口を作ったようであるが……。


精霊王と神と悪魔の逃げるだけの行いをみて、「それ」は急に何もかもバカらしくなった。もう疲れてしまっていたのだ。


「贖い、贖罪せんとす。戦おうとす。それが存在するものの責務。それすら放棄するか………。」


虚しかった……。「それ」が感じた孤独感は尋常ではなかった。


そして、「それ」は自ら消えることを選んだ。死にたいと思うようになったのだ。


自らを消すため、とある龍神族の国に入っていった。龍神族から龍族や龍人族が生まれて、急激に龍神族は少なくなってはいたが、まだ龍神族はパラメン14世のもと、大きな力を持っていた。


強大な力をもち。各種族の中では最強、最大の軍事力と科学力をもつ国ではあった。


パラメン国王が統べる、龍神王国である。


その中で、一番高い山を選んだ。その山を選んだ理由はとくにない。ただ「近かった」からに過ぎなかった。


その山の名前は、「ピュクレス山」


天まで届く高い山で、夏には新緑や花が咲き乱れる。自然豊かな山である。上にいけば行くほど、気温は下がり。何者の生命も存在を許されない極寒の場所でもあった。


ピュクレス山に入った「それ」は、誰もいない場所を選び。自らの存在自体を消そうとした。


しかし、うまくいかない……。


捕食し過ぎた「それ」は強すぎたのだ。


「それ」は、自滅するために計画が必要なことを悟り、皮肉にも、「積極的」に自分を調べた。


調べて、考えに考えた結果、自らを消すには過剰な魔力燃焼ループを自分の体内でくりかえし、対消滅することが唯一の方法だと判明した。


そのため山に小さな小屋を建て、そこに引きこもった。


虚しい世界に呪詛をはきながら、世界が滅びるほどの魔力ループを行い、自己消滅の準備を行っていた。


長い時を得て凶悪な捕食者は忘れられていった。そんなとき、「それ」は2人の夫婦に出会った。


もう少しで消えるというときに……。


とある、龍神族の夫婦。


白龍と黒龍である。


二人とも龍神族である。


この夫婦は、消えようとする「それ」を見て悲しみ泣いた。とても優しい夫婦であった、この白龍と黒龍は「それ」を生かそうと、あらゆる手を尽くしてくれた。


しかし、意思は変わらない。「それ」はとても疲れていたのだ。


しかし、毎日 通いつめる夫婦をみて「それ」の尖った心は少しずつ癒されていた。


白龍のお腹には赤子が宿っており、黒龍はそれが産まれることを大層楽しみにしていた。「それ」も赤ん坊が生まれるまでは消えないでおこうと、不思議な感情に包まれ、まだ存在していた。


「もう少しだけ地上界で生きてみよう」


そう思っていたのだ。


1年後。


難産であったが、無事に赤ん坊は生まれた、すばらしく可愛い赤ん坊であった。


さっそく、赤子を見せにきた夫婦は「それ」がどういう感情を持つか不安であったが。光輝く球体である「それ」が赤子をみて、淡い優しい光を発したのを見た。「それ」が、我が子の誕生を喜んでくれているのを感じた。


白龍と黒龍は、「それ」に名付け親になってもらうことを決心して、提案した。そうしたことで何とか生きる希望をもってもらおうとしたのである。


「それ」は、了承した。


「それ」は、

その赤ん坊の名前を「イエンムト(ヤマト)」と名付けた。


夫婦は喜んで、その名前にして大切に育てた。


「それ」も、イエンムト(ヤマト)が大きくなるまでは待とうと思うようになり、夫婦の作戦どおり、生きる希望を持つことになっていった。


しかし、その幸せは長くは続かない。


弱った「それ」の存在を知った神と悪魔達が、龍神族の山を襲ってきたのだ。龍神の国をも襲われ、龍神族は必死に戦った。

白龍と黒龍も戦った。


龍神族は強かったが神や悪魔達ほどではない。みるみる倒されていき、その攻撃にほとんどの龍神が殺された。残るは、龍神国王と、わずかな龍神のみになっていた。


その戦闘のなか、絶望が起きた。白龍は赤子を胸に抱きながら、父である龍神国王パラメン、夫である黒龍に守られていたが。流れ矢が赤子に当たってしまったのだ。


流れ矢に当たった、「イエンムト(ヤマト)」を泣きがら抱きしめ。「それ」の隠れ家に夫婦は逃げていった。頼るところが無かったのである。


血だらけの親子とイエンムトをみた瞬間、「それ」は激怒した。


とくにイエンムトが傷ついた姿をみたとき、青白いオーブ状態であった「それ」が赤黒い色に変わり、そして天空をも焼き尽くさんばかりの炎を発した。


「それ」自身も驚くほど、怒りの感情が爆発したのだ


「許さぬ………。」


隠れ家から出ていき、力が弱ってはいたが、「それ」を襲って来た神や悪魔達を皆殺しにした。それは、赤黒く輝く凶悪なハリケーンのようであった。敵は恐れおののき撤退をはじめたが皆殺しにした。「それ」は強すぎたのだ。ようやく、怒りを収めた「それ」は、隠れ家に戻り親子のもとに戻る。


まだ赤子だった、「イエンムト」は、虫の息であり。まもなく死ぬという状況だった。弱弱しい呼吸音が辛うじて生きている希望だった。


白龍と黒龍はひどく悲しんだ。なぜ我が子が殺されなければならないのか、比喩ではなく、絶望のため赤い血の涙を流した。


その夫婦の姿をみて「それ」は決断した。赤子の命を救う方法があると…、告げた。


それは「それ」の命を、赤子と融合させることだ。と夫婦に話した


しかし、「それ」の魂は、あまりに強大なため、赤子の魂が崩壊する危険がある。そのため、いくつかのステップが必要だと説明した。


「是非お教え給え」と夫婦は懇願した。


「それ」はためらったが、方法を説明した。


まず白龍と黒龍の魂を「イエンムト」の魂に結合させ魂を強くする。それにより「二つの龍を宿す者」にする。これにより、かつてなく強い魂を持った龍神の子になるだろう。


さらに最強の龍神族。銀龍パラメン国王の魂を結合させる。


これにより、さらに強力な「三つの龍を宿す者」にする。


そして、それが成功した後、すぐに「それ」の魂をイエンムトに結合させる。


そういう手順が必要だと話した。そうすれば赤子は助かるだろうと……。


夫婦は歓喜した。我が子が助かるなら、何でも良いと。


しかし、「それ」はデメリットがあることも話した。


まず夫婦が死ぬこと、そのためその子は親無しの人生を歩むこと。


さらに「それ」は、注意点を伝える。「それ」の魂は強力なので、おそらく転生を繰り返し。ある性質を受け継いでしまうだろうこと。


「捕食者」としての性質を……。


                       ※世界創生神話終わり※

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