第48話 マイホームイズ、穴ぐら

あれから2日もの間。ロクなものを食べていない。


草とかドングリを食べて凌いでいる。


そんなものを食べても腹の足しにならない。当然にお腹が空く。


ただ……。水だけは飲めている。川の近くに拠点を作ったのが正解だった。


(しかし、川にしかけた罠に、小さい魚が一匹かかっていたなかったら、ヤバかったな。)


あれが無かったら、まじで動けないくらいヤバかった。


「腹減った……。」


俺が青ざめた顔をしていると、リリスは唸った。


「食料問題もあるが、拠点がテントだけなのは危険じゃな。」


「だな……。夜、魔物がウロウロしてるから怖ぇよ。全然、眠れない。」


「うむ……。洞窟なんかが理想なんじゃが、作るとするか!」


「ど、洞窟を作る?」


俺は聞き間違いかと思ったが、リリスは無視して話を進める。


「うむ。洞窟は無理じゃが、穴ぐらくらいなら……。ここは本当に良い場所じゃ、あっちの裏に崖があったな。どれ、見に行くぞ!」


「りょ、了解……。」


俺はリリスが指示する小高い崖についた、目の前に大きな断崖がそびえ立つ。


川の近くのせいか苔や草などが纏わりついていて、ジメジメしていて少し衛生面で問題がありそうだ。


しかし、強度や高さの点では申し分ない。


「リリス、この崖を?」


「ここに穴を掘ろう。」


「あ、穴を?俺スコップとかもってないぞ?」


「そんな時間はない。手っ取り早く石を撃ち込んで、爆破させて穴を作るんじゃ。」


「な……。大胆過ぎるだろう。」


「じゃろう?」


「褒めてないし。できるわけねーよ。」


「穴ぐらを作るのじゃ。魔獣は危険じゃ。これは必須なのじゃ!」


「今日は正念場じゃ!」


「じゃーじゃー。うるせーな!考えてみればさ、俺まだ5歳よ?こんなサバイバルしてる5歳児って俺くらいじゃね?」 


「まずは寝床じゃ、はよ石を集めんかい。」


「無視かい……。」

俺は言われたまま、石をアホほど集めた。


「うむ。身体強化魔法を使って。あそこに全部投げろ。力いっぱいじゃ。」


「りょ、了解。」


俺は石を数十発撃ち込んだ。


俺は自分の力を舐めていた。


撃ち込まれた石は、まるで弾丸のようで。一発一発が壁に激突すると爆発が起きた。


「うわ!すっげ!」


「よし!続けろ。」


「お、おう。」


そのあと、俺は100を超える石を投げ続けた。


結果として、かなり大きな穴が深くできた。


ちょっと深めの穴が完成。


石を投げて作りました……。はい。


「ま、まじで出来た。こんなやり方で穴ぐらみたいのが出来るとは……。」


「うむ。深さはあとで何とかするとして。ほれ!石が散在しているから、それをバリケードとして利用するんじゃ。」


「お前……。ちょっとは動けよな。」


「ワシは実体化出来るが、か弱い女くらいの力しかない。仕方ないんじゃ。」


「ずるー!」


「うるさいわい!」


晴れてここが、新しい俺の拠点となるらしい。俺はその穴を見つめながら唸ってしまった。


「うーむ……。」


普通の家の子として、これまで不自由なく育ってきたのに……。ここが俺の家かよ……。


マイホームイズ、穴ぐら!!


ちなみに、穴を開けただけだから前がガラ空き。


(冬とか寒そう……。それにあとで入り口に何かカモフラージュ作らないとな、安全面ではまだまだだ。)


「ふむ、まぁまぁの出来栄えじゃ。これでいったん完成じゃ。今夜はここで寝るとしよう」


「つ、疲れた……。」


「……次は食料じゃな。」


「やっぱり何か動物を狩るのか?食えれば魔獣でも俺はいいぞ?」


「魔獣は止めておけ、魔素が強い魔獣を食うと卒倒する。」


「わかった。動物を狙うわ。」


「それが良いだろう。」


「じゃあ、探しにいかないとな……。ふぅ。忙しいな」


「急いで夜までに探さないと、今夜も飯はないぞ。」


「うわわ……。わかった!」

それから俺は動物を探した。


そりゃー。一生懸命に探した。


もう必死になって探したよ。何せ夕飯がかかってるからね。


けど、狩りなんてしたことない俺には荷が重かった。


すごい難しい。それをすぐに痛感することになった。


「リリス……。鹿が多いね。この森ってさ。」


「うむ。多いな。」


「ほら、あそこに群れでいるよ。」


「うむ。いるな。」


「なのに、なんで捕まえられんのよ!!」


俺はジタバタと暴れた。


「暴れるな。無駄に体力を消耗するな。ヤマト。」


森中に動物の気配はあるんだけど、接近すると逃げて行ってしまう。これには参った。


強化魔法で速度を上げて追いかけても、奴らは森の住人。


木を利用してスルスルと逃げやがる。何回やってもうまくいかないのだ。


鹿に翻弄される俺を見て、リリスは溜息をついた。


「うーむ。これは難航するかも知れんの……。」


そして、夜になってしまった。


飯(動物)が見つからないまま……。


「仕方ない、穴ぐらに戻るぞ。夜は魔物がウヨウヨ出てくる。危険じゃ。」


「え!?マジか。俺なにも収穫なし?」


「さっき見つけたドングリがあるじゃろ?それを食って我慢するんじゃ。」


「またあれかよ~。」


俺はうんざりした顔をした。


「それより穴ぐらに戻ることじゃ。魔獣に囲まれて生き延びるほど、オヌシはまだ成長しとらん。」


「もう、嫌……。」


俺まだ幼稚園くらいの年齢なのに……。


なぜ、こんな厳しい環境に……。


俺達が拠点に戻り、俺の新しい自宅(穴ぐら)が見えてきた。


今日もあそこで眠るかと思うと、気持ちが萎える俺であった。

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