第41話 オーラと豪炎

ズボ……。


腕を引き抜く魔人。


ボタボタ……。


ヤマトの腹から大量の血が地面に落ちていく。


それを見つめながら、ヤマトの意識が遠のく……。


「く……。」


とても立っていられない。


「ごは……。」


ヤマトは血を吐いて地面に倒れ込んだ。


ドサ……。


「ヤマト!!」


リリスがヤマトの頭を抱えて叫ぶ。


魔人は嬉しそうに声を上げた。


「て、手こずらせやがって……ぐぎゃ。でもこれで龍人の子をたべれるぞぉ……ぐふふ。」


魔人がヤマトの体に手を伸ばそうとしたときだった。


魔人はヤマトの体に異変を感じた。


バ!!


跳び退く魔人。


「な、なんだぁ?」


魔人は、自身の身への危険信号をキャッチしていた。


危険……。この龍人の子は危険。そう告げていた。


異変は目に見える形で表れていた。


ヤマトの体が青く発光しはじめ、全体的にオーラを纏っているのだ。


「青いオーラ……。ヤマトの体が青いオーラで包まれている。」


リリスがごくりと唾を飲み込む。


「何が……。何が起きるのじゃ。」


逆に魔人は少し驚いたが、光っているだけなことに安心したようだ。


「ビ、ビビらせても無駄だぁ。食ってやるぞぃ。」


「く!させるか!」


リリスがヤマトを地面におろし、手を広げてヤマトを庇う。


「どげぇ!」


魔人が手を再度伸ばそうとしたときだった。


ドゥン!!


「ぐぎゃああ!?」


魔人が宙を舞った。


「な!?」


リリスは驚く。


リリスは何もしていないのだ。


突如として、魔人が宙を舞ったのだ。


「何が……?」


しかし、リリスは理解した。


ヤマトが起き上がり、魔人の腹を下から上に殴り上げたのだった。アッパーカットのポーズをとっているヤマト。


「い、いつ起きあがったのじゃ。見えんかった………。」


ゴン!!


そのまま落下し、地面に叩きつけられる魔人。


リリスはヤマトの様子を観察した。


「ヤマト!傷は!?」


「ふー…。ふー…。」


ヤマトの目は虚ろで、言葉が通じているようには見えなかった。


「ヤマト?」


ふとヤマトの腹のあたりを見てみるリリス。


「ん?」


驚いたことに貫通していた傷は塞がっていた。


「な、なんと!」


そして、まだ跡になっている傷の部分が青く光っている。それも完全に治ろうとしていた。


「こ、これは!神や悪魔の能力……。超回復!?何故ヤマトが!?」


ヤマトは右腕を上げた。そして魔人のほうへ手の平を向ける。


「な、何をする気じゃ……ヤマ……。」


リリスの言葉を無視するように、ヤマトは口開く。


「スネイク・ファイア……」


ヤマトが言葉を発したかと思うと、魔人の体に青い炎の蛇が発生。


蛇は魔人の足元に巻き付いた。


慌てる魔人。


「ぐげ?なん……だ?この蛇……。ギャオ……引きちぎってやる。」


魔人が蛇を引きちぎろうとしたとき、蛇は豪炎となり一気に吹き上がった。


ゴァァ!!


「ふぎゃぁぁぁ!?」


足元から青い炎に焼かれ、苦悶の声を上げる魔人。


魔人自体が、まるで青い火の玉のようになっている。


「ぎゃあああ!!」


マグマが溶かすかのように魔人の体が焼かれていく。魔人は膝をついて地面に倒れ込んだ。


「す、すさまじい火力じゃ。しかも青い炎など初めて見る。」


魔人の体に燃え広がった青い豪炎は収まる気配がなく。まるで生き物のように燃えている。


「ぎゃあああ!!やめ……ろぉぉ!……や……め……。」


はじめ魔人は狂ったように苦しんでいたが次第に弱っていき、最後は動かなくなっていった。


最後は真っ黒な炭の状態で横たわり、物言わぬ者となった。


ブスブスと焼かれる音と臭いが周囲を満たす。酷い臭いだ。


「何とあっけない。すさまじい火力じゃ。魔人の体が一瞬で…………。」


リリスは魔人の強さを知っているが故に、ただの炎ではないことを感じていた。


それを操ったであろう。張本人を見つめる。


「魔人は倒したが……。こやつはどうする?」


「フー…。フー……。」


荒い息使いのヤマトだが、これを今度は正気にもどすことが先決だ。


そのときだった……。


パチ!パチ!


ヤマトの右手首から白い火花が散る。


「こ、今度は何じゃい!?」


見ると、ヤマトが着けていた月の糸が、青いオーラと反発するように火花をまき散らしているのだ。


「ぐ、ぐあ……!」


その火花はヤマトを包みこんで行く。


「ヤ、ヤマト!」


ドウン……。


ヤマトはその火花に包まれると、苦しそうに悶えながら地面に倒れ込んだ。


駆けよるリリス。


「だ、大丈夫か!?熱っ!」


火花はリリスの手を拒むかのように焼いた。


「く……。」


焼かれた手が、ヤマト自身の魔力によって修復されていく。これがリリスではなかったら、大変なことになっていた。


「一体……。」


ヤマトの背中がまばゆい光に包まれたかと思うと、青いオーラは消滅した。


そして火花も消滅した。


「消えた?ヤ、ヤマ……!」


リリスがヤマトに声をかけようとしたとき、信じられないことが起きた。


「………ん?」


ズオオオ………。


「!!」


なんとヤマトの背中から白いドラゴンが出てきたのだ。

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