第37話 異変の夜

夕飯時。


俺はマリーシアともリカオンとも、ほとんど口をきかず夕飯を食べる。


マリーシアは話しかけてくれていたが、俺は「うん……。うん……。」と適当な返しで気まずい雰囲気が流れていた。


「ごちそうさま。」


俺はさっさと席を立つ。


「あ、ヤマトちゃんお話があるの。」と、マリーシアは声をかけてくれたが、俺は……。


「眠いから、もう寝る。」と、振り返りもせず自分の部屋に入った。


俺はタメ息をついてベッドに横になる。


「はぁ、また嫌な態度を取ってしまった。」


本当にどうしたんだろ。俺……。イライラが止められない。


「リリス。」


シュン!


リリスが視覚化した。


リリスはこちらに近寄り、俺の顔を見ながら説教地味た声をかけてきた。


「くだらぬ、素直に新しい家族を祝ってやればいいのじゃ。何を子供じみた。」


「うるせー……。分かってはいるんだよ。」


「ならば謝ってこい。それで解決じゃ。」


「……。今日はいい。明日謝るよ。」


「うむ……。どうした?今夜は訓練をせぬのか?サボっている暇はないぞ。」


訓練とは、魔力操作のことだ。毎夜、俺はリリスに教わりながら訓練を続けていた。


「やってるよ。」


「やっておらぬではないか。」


「外見てみろよ。」


「?」


リリスは窓から外をみると驚いた。


「こ、これは!」


家一軒くらいの大きさはあろうか、球体の魔力の塊が空に浮かんでいたのだ。


ギ……。ギギ……。


魔力が圧縮されている証拠に独特の音がする。この音は訓練された者しか聴き分けることが出来ない。


リリスは唸る。


(コヤツ!これだけ習熟しておったか!それにこの魔力量!カリアースを超える才かも知れん……。)

その日の夜、静かに屋敷に近づく不穏な影があった。


それは人の姿をしてるが人ではない。魔人と呼ばれるものだった。


最下級魔人。


魔人にも何種類も種族がある。今回接近している種はゲーカト種。


トカゲに由来する形状をしており、ときおり人里を襲う。


人語を理解し話すが知性は低い。


最下級とはいえ魔人。


その戦闘力は高く。倒すにはSランク冒険者が数人必要と言われている。


「ここに龍人の匂いがするぞぉ。うん?赤ん坊を腹にいれた女の匂いもだぁ。じゅる……。たまらねー、早く食べたいぞぉ」


深夜に月明かりしか頼る光はない。


すでに村の大多数が眠りについていた。


ヤマトも、リカオン夫婦も深い眠りに身を任せて、スヤスヤと眠っていた。 

その夜……。事件は起きた。


俺は、寝付けずにいた。あの日、マリーシアの手を叩いたことを後悔していた。


(明日には謝ろう。謝れば元どおりさ。妹や弟が生まれたら追い出されるなんて、俺の妄想だ。そんなことあるはずないじゃないか。)


そう思って俺は就寝した。


まさか、二度と謝れなくなるなんて夢にも思わなかったんだ。


深夜……。


俺や家族は深い夢の中にいた。


しかし、とある音で起こされる。


ドキャ!!ドン!!


深夜に爆音が屋敷内に響き渡る。


俺はベッドから飛び起きた。


「な、なんだ?なんの音だ!?リリス!」


リリスを視覚化して目の前に出す。


(地震ではないようじゃ、外から音が聞こえたぞ。は!まさか、魔力落とし穴に誰か落ちたのか!?)


リリスと作った特殊な落とし穴だ。これは悪意を持った者しか落ちない。ちょっとした自信作だ。


(まずい……。泥棒か!?解除しておくべきだった!)


俺達が焦っていると、音がする。


ギィ……。


一階の扉の音がする。


一階ドアは閉めていたはずだが……。


そもそも落とし穴に落ちたのが人間であれば、しばらく再起不能のはずだ。


その時、ドタドタっと階段を駆け上がる足音が聞こえた。


人の足音?!リカオンの足音ではない。これは!?


リリスが警鐘を鳴らす。


「何か変じゃ!何者かが二階に上がってきておる!!」


「!」


俺は飛び起きて、ドアをあけて廊下に飛び出る。


暗い廊下の先を凝視してみる………。


(何かが上がってくる、近づいてくる!?)

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