第34話 5歳の誕生日

更に月日を重ね。

今日、俺は5歳になる。


予知夢で俺が殺される年齢だ。しかも、誕生日の日に……。


まさに今日である。


しかし、できる限りの対策は講じてある。


不安が無いと言えば嘘になる。


だが…。


魔人避けに、リリスによる魔力制御。


さらに屋敷の周辺にいくつか罠を仕掛けてある。


念押しで魔人避けを量産したのでm俺の魔力は下流に広範囲に拡散してある。


(来たら死ぬから必死よ……。)


リリスも、「絶対とは言えぬが、大丈夫じゃろう。魔人避けは過去の龍人も使っておったし有効性は実証されておる。」とのこと。


俺も大丈夫なんじゃないかなって思ってる。


人間やることやると、あとは運を天に任せるというか……、そういう心境になる。


あ!そうそう!


今夜、5歳の誕生日を両親がしてくれることになっている。


毎年誕生日には、甘いお菓子や、肉料理をマリーシアが作ってくれて。ホームパーティを開いてくれるのだ。


そこには、プレゼントなどは無い。しかし、俺は施設出身だったので自分のためだけのパーティというのに毎年感動している。


すごく嬉しい。


「おめでとう!ヤマト!」


「おめでとう、ヤマトちゃん!」


「ヤマト様!おめでとうございます!」


テーブルに並べられた料理の数々に、俺は満面の笑み。


「ありがとう!父上!母上!」


「ヤマトも、もう5歳かぁ……。早いもんだな。」


「そうねぇ。グス……。こんなに大きくなって……。」


「こらこら、マリーシア。泣く奴があるか。」


本気泣いているマリーシアに、俺は胸がジンと熱くなる。


(良い人達に拾われたよなぁ。俺って……。)


リカオンとマリーシアは、俺を実の子じゃないことは隠し通すつもりらしい。俺は転生者なので、すべてを記憶しているから知っているんだけどね……。


それでも、両親の意向に従おうと思う。


「転生で知ってました!」とか、言えないしね…。


本当の子として育ててくれてるし。俺は血がつながっているとか、そういうのは関係ないとすら思い始めている。


親として愛情を与えてくれて。俺は信頼に応えたいと願っている。


俺の大切な両親はこの人達なんだ。


それだけで良いじゃないか。


実の子とか、他人の子とか……。俺とマリーシア達には関係ないことだ。


とにかく、家族には感謝しかない。


「母上……。ほら。せっかくの料理が冷めちゃうよ。」


泣きじゃくるマリーシアを俺は宥める。


「グスン……グスン。そうね、ヤマトちゃん!たっぷり食べてねぇ!」


「うん!」


食事とお菓子をたっぷり堪能した後、そろそろお開き……となりそうだったのだが。


「ヤマト!俺達からのプレゼントだ。」


そう言って、包装紙に包まれた3つのプレゼントを俺の目の前に出してくれた。


「わぁ!父上!母上!いいの!?」


「ははは!当たり前だ。」


「あれ?3つある?」


「これとこれは私とマリーシアからだが、ナタルも用意してくれたみたいだよ。」


「ナタル!ありがとう!」


「ふふふ。ヤマト様が5歳になられたんですもの。ナタルも一生懸命用意しました。」


「うれしいよ!」


「さぁ。開けてみなさい。」


「う、うん!」


父と母からの誕生日プレゼントは、俺が欲しがっていた。


「ラスタリスの全領土領主の紋章図鑑」


「防寒マント」


だった。俺はそれを見て驚く。


「うわぁ!!これ欲しかったんだぁ!」


「うれしい?どう?うれしい?ヤマトちゃん。」


俺は本とマントを抱きしめながら叫んだ。


「はい!とっても!」


「うふふ。良かったぁ。」


マリーシアは満面の笑みだ。


「しかし、渋いものを欲しがるものだ。ヤマトは将来学者か王宮文官になるかもな。」


「マントは実用を兼ねてね!ヤマトちゃんの希望どおり、黒色にしたわよ?」


「すっごくカッコいいです!母上!冬は寒いので、欲しかったんです。」


「喜んでくれてよかったぁ。」


ナタルからのプレゼントは、手袋だった。


「うわぁ。なめし皮の手袋だ!」


内側にやわらかい毛皮がついていて、とても温かそうだった。


「ふふふ。ヤマト様。丈夫な手袋を欲しがっていましたもんね。」


そうなのだ。


毎年、冬になると。マリーシアが編んでくれるのだが、耐久性に問題があって困っていたのだ。


「ありがとう!ナタル!」


「どういたしまして。ヤマト様」


両親は俺のことを慈愛に満ちた笑顔で見つめてくれている。


「ふふふ……。」


「ははは。」


俺は家族達に見守られて、幸せを嚙みしめた。


そんなことを考えていたら、自然と涙が出てきた……。


(俺は幸せ者だ……。こんなに、あったかい家庭なんて他にない。血のつながっていない俺なんかを、こんなに大事にしてくれて……。)


泣きだした俺を見て、皆は大慌てだった。


「ど、どどどうしたんだ!ヤマト!?」


「あらあら。どうしたのぉ?ヤマトちゃん。」


「ヤマト様。目に何か入りましたか!?いま、水を!」


俺は本当に幸せ者だ。

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