第33話 王都見物を振り返り

※お話の都合から短めです※


俺が呆気に取られて呆然としていると、横からリリスの声がする。


「ヤマト。何を呆けておるんじゃ。アホみたいな顔をしとるぞ。」


「!」


いつの間に実体化したのか、リリスが呆れたような顔をしている。


左手は腰に手を当てて、右手は顎に添えてある。


彼女のお決まりのポーズだ。超美人なだけにサマになっている。


「リ、リリス……。いつからそこに居た?」


「実体化したのは先ほど、視覚化は最初からじゃ。見ておったぞ。どうしたんじゃ?アホみたいな……。」


「それはもういいって!うるせーよ!」


ハイエルフの少女に言われたとおり建物に入って行った。


信じられないことに、そこで両親と再会できた。


この建物は、ちょっといわくつきの事務所であった。闇ギルドと呼ばれている場所の臨時事務所だったみたい。


なぜ、そんな危険な場所に両親が居たかと言うと。俺を見失って混乱したマリーシア達が、どうやら人探し専用依頼を裏家業の人間にまで頼もうとしていたらしい。


マリーシアは泣きじゃくっていたのか、目が真っ赤。俺を見たとたん、安心感でぶっ倒れてしまって大変だった。


ごめんよう……母上。


王都で2泊ほどした後、俺達は村に戻った。


マリーシアの看病やら、当初のギルドカードの更新やらで忙しくて、肝心の王都の住宅建築を見学するという野望は達成できなかったが……。それでも店や商業施設建築は見れた。


ただ肝心のものが見れなかったのが心残りである。つーか、残念である。残念過ぎる。


王都の住宅エリアは、商業エリアから離れていて。俺が見れなかったのも仕方ないことを後で知った。


今回の旅で学習できたのは、馬の停留所での交渉。乗り合い方法。王都での城門審査の申し込み方。などなど、とても勉強になる旅だったな。

村に戻って落ち着いてから。


今は、自室でリリスと今回の旅について語り合っている。


あのハイエルフに助けられたことは記憶に新しい。


(しかし、あのハイエルフの子。不思議だったよな……。)


(うむ。ハイエルフとは珍しい。)


(やっぱそう?)


(珍しいとも。エルフ族1世代に1名しか誕生しないと言われておる。つまり500年周期に1名じゃ。かなり希少じゃな。)


(本で読んだことがある。しかも王族から生まれることが多いんだろう?)


(そうじゃ。しかし、あの娘は王族なのかのぅ。あんな場所に1人で不用心じゃわい。)


リリスは一般知識は持っているが、あたり世情には詳しくない。エルフの王族の名前や顔など知るはずと無い。


(まさか、王族じゃないだろうよ。あんな場所に居るわけない。)


(そうじゃな。)


(はは。でも、あの子のおかげで俺は両親と再会できた。感謝はしているよ。)


(立派な迷子ちゃんじゃったからのぅ。しかし良かったのか?婚約までしておったが。)


(迷子ちゃんって言うなよ…。婚約?そんなんしたっけ?)


(覚えておらんのか?お嫁さんにするとか言ってたぞい。)


(あははは。あんなの”ごっこ”だろう?子供って、そういうの好きだから。)


(見た目はな。しかし、彼女は立派に成人じゃった気もするがのぅ。)


(た、確かに。)


(迂闊な奴じゃのぅ。)


(ま、まぁ…。多分、二度と会わないだろうし。そのうち忘れるだろ?)


(そうじゃな……。)


俺はあのハイエルフにもらった月の糸を、毎日腕にはめていた。


紐な形状だから、それほど邪魔にならないしね。


どう言うわけか、これをつけていると体の調子がすこぶる良かった。


異世界版ピップエレ〇バン


そんな位置付けです。


俺の中で、ちょっと手放せない逸品だ。


こうして、俺の王都見物は終わった。

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