第31話 不思議な少女

とある夏。


両親にギルドカード更新のために、王都レシータの冒険者ギルドに行かねばならない用事が出来た。


わざわざ遠く王都まで行かないと駄目なことに疑問を感じていたら。


マリーシアが教えてくれた。


「私とリカオンは、ラスタリス王国では名が知られているの。5年に一度の報告も兼ねて、義務付けられているのよ。」


俺はそれを聞いて驚いた。


そんなに両親はすげー人達だったんだ。


考えて見ればそうかも知れない。


マリーシアは2属性だし、リカオンは魔法剣士だ。


2人とも、とても珍しい存在だ。


しかし、何だか誇らしいな。


うちのパパとママすげーんだぞ!って誰かに言いたい。


彼女達は俺の家族だ。転生した直後は違和感を感じていた。しかし、今では第二の父と母と本気で思っている。


「しかし、困ったわぁ。ヤマトちゃんを置いて一ヶ月以上家を空けちゃう。」


マリーシアは心配しているが、うちの有能美少女メイドのナタルがいる。


そのあたりは問題ないだろう。


しかし、リカオンが意外な提案をした。


「ヤマトにも一度、王都を見せて置くべきだろう。」


「え?あなた。ヤマトちゃんを連れて行く気?」


「ああ。ヤマトはこの年齢で博識だ。実際に目で王都を見せてあげたい。」


「ヤマトちゃんと離れないのは嬉しいけど。でも……。」


マリーシアは心配なようだ。


俺は飛びついた。


「い、行きたいです!父上!母上!」


俺ももうすぐ5歳である。この頃になると、両親のことを父上、母上と呼んでいた。


王都と言えば、屋敷や一戸建てがたくさんあるに違いない。このカタナール村にも家はたくさんあるが、最新デザインの家というものをチェックしておきたい!


行ってみたい!王都の家々を見物してみたい!俺の夢はマイホームなのだ!


「うーん。」


マリーシアはまだ心配なようだ。


「王都の景色や交通方法を教えることも勉強だよ、マリーシア。この子のためになる。」


ナイス!リカオン!


「そうね。分かったわ!私もヤマトちゃんと離れるの嫌だし!行きましょう。ヤマトちゃん!」


リカオンの後押しで、俺は王都に行けることになった。

そして、俺達親子は王都に向かった。


長旅だったが無事、俺は王都レシータの中にいる。


王都は、それはスケールが大きい場所だった。


高い城壁。行き交う人達。商店の種類の多さ。


俺は終始圧倒されていた。


しかし、俺の目的は最新の住宅デザインを心に刻むこと!住宅エリアに興味があったのだが、そこには両親は行かないようだった。


これにはショックだった。


ショックついでに迷子になった。


人が多過ぎるんだもん。ここ。


今、俺は道端で立ち尽くしている。


大勢の人が行き交う道。誰も彼も忙しそうだ。


困った。どうすりゃ良いのよ。交番とかあるの?


「……参ったな。」


(何してるんじゃ。ヤマト。迷子とは情け無さ過ぎるぞい。)


リリスが視覚化して俺を呆れた目で見てくる。


(だってよ。ちょっと露店を見ていたら、リカオン達がはぐれて……。)


(オヌシがはぐれたんじゃい。)


(……。とにかくリカオン達を探そう。)


その後も、かなり長い間、両親を探したが見つからない。


さらに冒険者ギルドを探そうとしたんだが、広すぎて見つからない。


これは、本当にマズイかも知れん。


「はぁ。疲れた。」


2時間は歩き通しである。子供の体では限界がある。


(ヤマト、あそこに椅子があるぞ!)


リリスが道の傍にベンチを見つけた。


(あそこで休もう。)


俺はベンチに座ると、ジンジンする足を休めた。


(はぁ。これからどうしよ。まさか、このまま一生離れ離れとか無いよな。)


(冒険者ギルドに向かえ。そこの両親がいるじゃろう。)


(そこが分からないのよ。)


(田舎もん丸出しじゃな。)


(うるせー。)


俺が絶望としていると……。


俺の背中から声が掛かる。


「そんなところで何やってるの?」


俺の眼の前に、輝くようなグリーンヘアーの美少女が立っていた。


「?」


少女は無表情に俺を見つめている。


俺は驚いたのと、少女の美しさに呆気に取られた。うまく反応が取れない。


そのまま返事をしてしまった……。


「何って。ちょっと人を探しているんだ。」


「あなたみたいな子供が一人で?」


俺は自分のいる建物と建物の間を振り返った。


(しまった。説得力ないよな。)


俺は慌てて、しどろもどろになる。


「あの、それはその……。」


「あなた……。凄いのね。何者なの?」


「え?」


俺はその少女の透き通るような瞳。ブルーアイに視線を奪われた。

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