第30話 魔人避け

俺はあれから土嚢に魔力を込めまくった。


(一体なにやってるんだ俺は。)


土嚢に魔力を浴びせまくる生活……。


3つくらい仕込んだところで、リリスが「最低10は必要じゃ!」というので、頑張った。


かなり日数をかけて俺は魔力を浴びせまくった土嚢を10本ほど作成した。


やった。やりきったよ。


(作ったぞ、リリス。これをどーすんの?)


リリスは10個の土嚢を、満足そうに眺めながら答えた。


(ふむ……。良くヤマトの魔力がしみておる。これなら十分じゃろう。)


(しみてるって……。)


(良くやった。よし、これで終わりじゃ。)


(へ……?これで終わり?)


(そうじゃ、この魔力が染みついた土嚢は、大人が雨が激しいときに自然と川岸に積んでくれる。)


(ま、まさか。)


(そうじゃ。川岸に積まれた土嚢は雨や川の水で溶かされていく。)


(判ったぞ!魔力は水に溶ける!俺の魔力は下流に散らばるんだ!)


(ご名答。)


体力が無い俺には、これ以上無い作戦だ。なんてコスパが良いんだろう。


この地方には雨期が年に3回ほどある。その度に川の氾濫を防止するために土嚢が運び込まれる。リリスの言うとおり、これなら放置しておけば良い。


勝手に大人がやるので、もはやすることが無い。


(お前、頭いいな!リリス!)


(まぁな。ふはははは!)


美少女の顔で高笑いされても……。


(魔力避けとして十分じゃろう。これで魔人を混乱させられるはずじゃ。)


(んじゃ。この倉庫から出るか。リリス……は視覚化しているから、このままで良いか。)


俺達は満足気に倉庫から出て部屋に戻った。


しばらくすると、マリーシアが部屋に入ってきて俺に洋服を着せてきた。


(散歩か?)


と思ったが、マリーシアの表情は硬い。


俺は不思議に思い質問してみた。


「ママ、どこいくの……?」


「ヤマトちゃん。大丈夫だからね。今日、近くの町に行くわよ。そこで診てみらいましょ」


「え?」


「ママ、診るって何を?」


すると、マリーシアは深刻な顔をして俺に伝えた。


「ヤマトちゃんの病気を診るためよ」


「え!?病気!?」


この後、マリーシアを説得するのが大変だった

とりあえず、命の危機は完全に脱した、と言って良いかも知れない。


この作業が終わった後、訓練を終了かな?と思っていたら、リリスの提案で継続することになった。


(魔力操作能力はあって損するものではない。継続じゃ。)とのこと。


まぁ。勉強と一緒に続けていけば良いか……。


そういう訳で、リリスと一緒に訓練を続けることになった。


最近は魔力を圧縮することに成功するようになってきている。


リリス曰く、「ここまで魔力をコントロールようになるには、龍人族と言えども5年はかかる。すばらしい。」とのこと。


そして、俺は魔力が無茶苦茶高いらしい。リリスはそこにも驚いていた。


「オヌシに魔力属性さえあれば、素晴らしい魔法使いになったじゃろう。」とのこと。


「はは。俺は魔法使いとしての才能は無いんだけどね……。」


「魔力も異常じゃ。こんな赤子は見たことない。本当にカリアースの生まれ変わりじゃなかろーか。しかし、惜しいのぅ。」


「カリアース……。」


ちなみに、リリスの生きた時代に居たヤマト・カリアースって男は、龍人族の中では最強だったらしい。


戦闘能力も高かったが、龍人族随一の魔法使いだったみたい。魔力も桁違いで神と対等に渡り歩く男だったとのこと。


すげーな。


カリアースの話をよくリリスから聞く。


しかし、聞けば性格は結構お茶目な人だったらしい。


彼の趣味は、【エロ本収集】と言うから笑える。しかも、よく若い女性のお風呂をノゾキをしたり。ハチャメチャなところがあったらしい。


良くリリスは、カリアースを怒鳴っていたみたいだ。


(なんか、親近感湧くな……。)


「奴は容姿だけは素晴らしく、絶世の美少年じゃった。そう言う意味でも惜しい奴じゃったよ。カリアースは。ふはは。」


カリアースの話をするときには、リリスは優しい目をする。凄く可愛がっていたのだろう。


他にも、リリスから龍人族の歴史や昔話をよく聞く。


龍人族でのリリスは、そりゃあ人気あったみたい。本人曰くだけどね……。


2100歳で死ぬまで、見た目は若いままの容姿をもち、優れた知性と魔法力。さらに龍人族のカリスマ的リーダー。


確かに人気出そうである。


リリスは美少女。カリアースは美少年。


それとは別に、俺は?


俺も成長してきて、顔立ちもハッキリしてきた。


両親曰く「世界で一番整った顔の子供。」らしい。


マリーシアは、「将来、きっと美形になるわぁー。女の子あんまり泣かせてはだめよー」 と、うっとり俺を見ている。


親の欲目だろう?と思ってた。


鏡で毎日見ているから見慣れていたんだが、近所の奥さんが、わざわざ俺を見にくるほどだ。


本当に可愛いらしい。


マリーシアは、その応対で大忙しだ。


俺はパンダか……。


さらにリリスの監修のもと修行は続く。俺の勉強も継続されていく。


毎日が充実していた。


平和な時間が過ぎていく。

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