第22話 トンカンの町

馬車のなか、俺はリリスに教わっていた知識を整理する。リリスが居れば詳しく教えてくれただろうに……。


(リリス……、どこ行ったんだろ。本当に……、もう会えないのかな。)


い、いかん。憂鬱な気分になっちまう。


えーと……。何だっけ。気分を変えて行こう!


そうそう。まずは魔法属性についてだ。


魔法属性は大きく7つに分類される。


【火】【風】【水】【土】【光】【闇】【ユニーク】


ちなみに、リカオンは【火】1属性持ち。マリーシアは【光】と【ユニーク】2属性持ちだ。


ユニーク属性は大変珍しい属性だ。


全体魔法使いの中でも1%いないんだそうだ。魔法使いは人口全体の0.01%以内だぜ?その中での1%ってどんだけよ。


すげーぜ。ママん!


属性の特徴をまとめると、こんな感じ。


【火】攻撃魔法が多い。

【風】攻撃・防御どちらにも使える。

【水】防御に強い、攻撃にも使える。

【土】防御に強い、攻撃にも使える。

【光】治療系の魔法が多い、またデス系の敵にも有効。

【闇】攻撃というか精神錯乱みたいな魔法が多いみたい。

【ユニーク】よくわからない、スキルとの区別も難しい。 


ユニーク……どんな性質なのかは、わからないし。スキルとの区別が、非常に区別が難しいそうだ。


また、属性は1人1つ、つまり……。


1属性が普通。


2属性は忘却人に多い。国で保護レベル。王宮魔法使い候補。


3属性持ちは英雄や勇者レベル。なのだそうだ。


マリーシアは、本当にすごい人みたいだ。


2属性持ちで、その内1つはユニークというのは貴重すぎるみたい。


今も各国から引き抜きに狙われていたり、結構しつこいみたいだ。


そういう煩わしいのが嫌で、夫婦そろって片田舎に住んでるんだってさ。


ちなみに、結界…封印の魔法が得意だったレシータ巫女は、意外にも【ユニーク】のみの1属性だったけど、その特性の貴重性から、あれだけの活躍ができたみたい。


属性が多ければ良いというものではないらしい。


トンカン町は加工業が盛んな町で職人が多い。あまり治安は良くない。


しかし、最寄りでは一番栄えている町だ。俺はこの世界で外の町を見るの初めてなので楽しみだ。

そんなこんなで、ようやく到着。


つーか、馬車の乗り心地が最悪すぎて本当に疲れた。


ちなみ大きな都市だと厳格な審査などがあるが、ここは町の城門に二人見張りがついているだけだ。


何か持ち物チェックとか、身元照会とかなく普通に入れた。

魔物とかの襲来に備えているだけで、基本的に人間であれば入れるらしい。


町に入ると、そこは活気あふれるトンカンの住民達で溢れかえっていた。


「なめし皮はいらんかね!安くしとくよ!」


「鉄資材の買い取りはこちら!高値で買うぜ!」


至るところで、呼び込みや露天商が大声で叫んでいる。


(おおぉ。すげぇ。これがトンカンの町か!)


ぶっちゃけ、カタナールの村とは全然違う。寒村って感じだもんな……、カタナールってさ。


人に圧倒されたのか、俺は眩暈がする気分だった。


「ふぅ……。」


軽い疲労感からか、俺はため息を吐いてしまう。


すると、マリーシアが俺を抱っこしながら、心配そうな顔で俺を覗き込む。


「あらあら、元気ないわね。ヤマトちゃん、どーしたのかしら?」


馬車で疲れたのは本当だ。この体はまだ赤子だ。かなり無理をしたみたいだ。


リカオンも心配そうに俺をみつめると、提案をしてきた。


「ヤマトには酷だったな。もう夕刻だし、今日はどこか宿屋に泊まるとするか。」


おいおい。ここまで来て休めるか、このまま行こうぜ!


「ぼくいきたい。」と、お願いしてみる。


「お?偉いぞ、ヤマト。ガッツがあるなぁ。」


「ヤマトちゃん!偉いわ☆グリグリ!」


マリーシアとリカオンは、俺のあたまをグリグリ撫でる。


「でも。ダメよ?今日は休んで、明日の朝に神殿にいきましょ!」


「そうだな。」


(な、なぜ!?)


俺達はそのまま宿屋に直行することになった。

一家団欒で宿屋で一泊。

とりあえず、俺達は宿屋で一泊して体の調子を整えると、そのまま神殿に直行することになった。


俺の体は完全に良くなった。


1歳未満の赤ん坊だし。無理してはいけないな……。


そんなことを考えつつ。朝のトンカンの町を観察する。


町の中をキョロキョロ確認してみたけど、なんだか町っていうか……。


工場町って感じ。


そこかしこに作業服をきた町人が元気に歩いている。


飲み屋とかバーとかも結構ある。


昨日は華やかなイメージがあったのだが、よく見ると違った。


ここは労働者の町なんだ。


(まぁ、辺境だしな。こんなとこか。)


「さ、急ごう。ヤマトのことを考えると、今日中にカタナールに戻りたいしな。」


「そうね。」


両親は、足早に神殿に向かった。


俺は、マリーシアの胸の中から町を見学をしながら、神殿に到着。


これが神殿か。


……って。


(で…………でかい。)


俺は巨大な神殿を見上げて驚いた。


5階建ての大型石造りの建築物。


ぶっちゃけビルだ。


外壁は堅牢なお城のような色合い。入り口は、オークでも入るのかってくらい巨大な開き扉がついている。


おおーい!?町に比べてバランス悪いだろ!


(これおかしいよね!?絶対おかしいよ!)


入口で呆気に取られていると、神殿は大盛況のようだ。


人が次々に入っている。


「さぁ、行くぞ。ヤマト。」


「行きましょう。ヤマトちゃん。」


両親に連れられ、ビクビクの俺は神殿に入る。


(おぉ。これがこの世界の神殿……。)


日本に居たころに、そういったものに縁が無かったので基準が無いが、素晴らしく厳かで美術的にも非常に価値の高そうな彫刻や石像が立ち並んでいた。


奥は数段高くなっており、そこに巨大な女神であろう石像が立っている。


良くみると、その足元に祭壇が設置されていた。そこに司祭っぽいのが立っている。


(あれが司祭か……。)


司祭がいる祭壇までの長い行列だ。


俺達親子は、そこに並ぶのであった。


俺の魔力適性審査がとうとう始まるのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る