第18話 魔水晶

リリスから聞いた女神オステリアの話は後にするとして……。


あの夜、俺とリリスが調べた結果。馬車での移動半日で到着できそうな町があった。


町の名前は、鍛冶町【トンカン】。


予想でしかないが……。そこであれば神殿もあるだろうし、エンジストーンも設置されている筈。


しかし、俺は赤ん坊だ。当然、馬車の運転は出来ない。


リリスにいたっては、光る球体でしかないので何も出来ない。


(改めて思うけど……。俺ら二人って、何も出来ないな……。)


とにかくトンカンの町まで、両親に連れて行ってもらう必要がある。


”どうするのじゃ?ヤマト?”


”どうするって、お願いしてみるしかないだろう。”


”直接か?”


”ああ、直接。今夜、夕食のときに言ってみる。”


”大丈夫かのぅ。”


リリスは心配そうだった。


しかし、俺だって心配だ。でも、やるだけやってみるしか無い。このまま5歳のときまで、何もしないという選択が無い。


もし、何もしないでいれば予知夢のとおりになってしまう。


両親は殺されて……。俺は喰われてしまう。


そんなの嫌だ。


何とか生き延びてやる!

その日の夕飯時。

俺は意を決して相談してみた。 


マリーシアは俺にスプーンをもってスープを飲ませている。リカオンは俺の目の前に座ってニコニコ見ている。


「パパ……ママ……あの相談があるのです。」


舌の筋肉が発達していないので、たどたどしく話す。俺はまだ赤ちゃんだから……。


「あら?ヤマトちゃん。何かしら?何か欲しい玩具あるの?」


「うん、玩具か?パパに言ってみな!今度、隣町まで行くから買ってきてやる。」


お?隣町?まさかトンカンか?これはちょうどいい!


「魔法を使いたいのです。」


「あらあら、ヤマトちゃん。魔法を使いたいの〜?ふふふ!」


そういって、マリーシアは堪えきれずに笑いだした。


「ちょーっとヤマトには早いんじゃないかな〜。はははは。」


リカオンもニコニコ笑っている。


な、なんだ? 何か変な雰囲気だ。ダメなのかな?


「だ、ダメなの?」


すると、リカオンが諭すように言葉を掛けてくる。


「ヤマト〜?魔法を使えるようになるのは、10歳くらいからだぞー?」


10歳まで待っていたら、俺は食料だぞ!ここで引くわけにはいかない。


「で、でも。使えるかも知れないし……。」


「ははは。ヤマト。無理なものは無理だよ~?パパが玩具買ってくるから。ね?」


「う~。」


俺が困って唸っていると、マリーシアが満面の笑みで答えた。


「ふふふ、あらあら!強情ね。じゃあ、魔力測定器もってくるから、やってみましょう。」


”ま、魔力測定器?そんなのあるんだ?”


俺はテレパシーでリリスに聞いてみる。


”ほう。ワシの時代では相当高価だったが。あるのか!”


リリスも意外だったようで興味津々だ。


”ヤマト!これがあれば魔力が発現しているかどうかは判別できるぞ!”


”う、うん!”


パタパタとマリーシアは席を外すと、大きな水晶を持ってきた。


「マリーシア。そんなものいつ買ったんだ?高かったろう?」


リカオンは笑っていた。


「ふふ、いつかヤマトが魔力を授かったらって思って!」


マリーシアはウキウキだ。


「気が早いぞ、こいつぅ。」 


二人はイチャイチャし始めた。


あの~。今は測定して欲しいんですけど。


「あの。パパ、ママ、これ……?」


「あら?ごめんなさいね、ヤマトちゃん。これはね!この水晶に両手を置いて詠唱すると光るのよ。」


「光る?」


「そう!魔力の大きさによって光るの。」


リカオンは笑顔でマリーシアに声を掛けた。


「しかし、マリー。乗せたところで意味が……。」


「いいのよ。リカオン。何事もやってみて、納得させるのが大事なの。」


「そ、そうか!よし!ヤマト。やってみなさい?」


おぉ。父と母の愛情を感じる。ありがとう、リカオン。マリーシア!


「さ、手を乗せてみて?」


マリーシアは俺の小さい両手を水晶の上に置いた。しかし、詠唱が判らない。


「?」 


どーすればいいのよ、ママン。


「そしたらね、そのままで良いわ 。ママが代わりに詠唱してあげる。」


【   魔水晶について   】


魔力測定器:通称「魔水晶」


水晶の輝きによって魔力レベルがおおよそ測れる。値段もそこそこする。


※日本でいうと3万円くらい。


エンジストーンは、色や反応まで表現するので詳しく適性が測定できる。


しかし、この水晶は基本 「光る」だけ、測定したら即タンスの肥し。


その「光る強さ」から、魔力量を測定する。


ちなみに魔力は、10歳くらいから発現する。これは種族関係なく10歳と決まっている。そのあたりに、測定指標としては以下。



【米粒くらいの光】

発現の可能性有り。

10歳くらいは通常このレベル。


【直径10cmくらいの光】

魔法学校卒業レベル。

魔法使い見習いなどが該当。


【全体的にボンヤリ光る】

平均魔法使いレベル。

C~Dランク冒険者などが該当。


【全体的にハッキリ光る】

上位魔法使いレベル。

王宮魔法使い。A~Bランク冒険者が該当。


【部屋全体を照らすくらいの光】

伝説の勇者レベル。

神話クラス、龍人族が該当。


【閃光(眩しくて)見れないくらいの光】

神クラスが該当。

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