第16話 予知夢
俺が見た夢を、予知夢と言うリリス。
俺は意外な回答に驚いていた。
"よ、予知夢?”
”ああ。そうじゃ。間違いない。”
俺は思わず笑ってしまった。
”夢なんて誰でも見るだろう?大げさな……”
しかし、リリスは真剣な声でつづけた。
”いや、オヌシはただの赤子ではない。龍人の子じゃ。”
”龍人が見る夢は、全部予知夢なのかよ。”
”見る夢による。オヌシの見た映像はやけにリアルじゃったろ?”
”うん。すげぇリアルだった。”
”それは龍人が予知夢を見るときのパターンじゃ。間違いない。”
リリスは少し間をあけて、俺の周囲をフヨフヨ飛び回った。まるで考えごとをしているかのようだ。
”その緑色の化け物は、おそらく魔人じゃ。それを鮮明に見たということは予知夢確定じゃ。”
”ま、魔人?この世界って、すげぇいろんな種族がいるな。”
”魔人は、この世界の住人では無い。魔界の住人じゃ。”
”ま、魔界……?”
”教えてやろう。この世界には、4つの界層があるのじゃ。”
そういうと、リリスは説明を始めた。
■地上界:俺たちが住んでいる世界。
■神界:神々が住む世界。
■魔界:魔族が住む世界。
■天界:精霊が住む世界。人の魂もそこに行くらしい。
”この4つの世界は、お互いに干渉できないようになっておる。”
”その魔界の住人である魔人が、なんで地上界にいることになるんだよ。”
”この世界は、お互いに固いゲートによって閉じられているんじゃが……。魔界だけは別でな。”
”別?”
”そうじゃ。魔界と地上界は、割と行き来できるんじゃよ。”
”ええぇ!?”
そんな……。ちゃんと閉めておいて欲しかった。
”地上の物語にも、悪魔・魔人・幻獣などがあるのじゃが、あれは魔界の住人が、こっちに流れてきた実話を元に作られておる。”
"そ、その魔人ってやつが、何で俺を狙う?”
”龍人の子が10歳までに死にやすいと前に教えたな?”
”あ、ああ。リリスは何でか教えてくれなかったけど……。”
すると、リリスは数秒間を置いて告げた。
”魔人の好物は、龍人の子なんじゃよ。”
”え……!?”
”それ故、龍人の天敵は魔人と言われておる。”
”こ、好物って……。「どら焼き」好きな動物型ロボットじゃあるまいし。”
”なんじゃ?その「どら焼き」と言うのは?”
リリスが怪訝な顔をする。
”あ、何でもない。”
しかし、とんでもねーな。あんな緑色の化け物に食われるなんてゴメンだぞ。絶対に避けないとイカン。
”ど、どうしよう。”
”魔人は強い。おそらく人族では敵わん。下級魔人相手でも人族の戦士10~20人でやっと勝てる相手じゃ。その夢にみた魔人は下級じゃと思う。”
”下級で、そんな強いのかよ……。”
”魔界の住人は元々強いからのぅ。しかし、夢では5歳の誕生日に襲われるのじゃったな?”
”ああ。そうだ。”
”ならば、5年弱の猶予があるということじゃ。”
”そ、そうなるのかな。”
”そうじゃ。それまでに対策を練っておこう。何とか撃退するのじゃ。魔法が使えれば良いんじゃが。”
”そ、そうだ!魔法!魔法を覚えれば!”
しかし、自分で言っておいて気がついた。魔力は10歳まで発現しないのだ。
”無理か……。”
俺ががっくりしていると、リリスは慰めるように言った。
”可能性が無いわけではない。”
俺はそれに飛びついた。
”え!?何か案があるのか!?”
”案という訳ではないのじゃがな…”
”オヌシはちょっと変わっておる。今までの龍人の子とも違う。もしかすると魔力を早めに授かるかも知れんて……。”
”……。”
”のう、ヤマト。オヌシは色々異常じゃ。それほどの知性を待つ赤子などワシは見たことがない。何か隠しているのではないか?”
”……!”
俺はちょっと考えこんだ。
このままリリスに隠し事をしていて良いのか?
リリスは、俺の唯一の理解者である。
はじめ警戒していたが、リリスはいつも俺のことを考えてくれている。
信頼のできる奴だ。
これから魔人って奴が襲撃してくるのに、俺はリリスにいろいろ情報を渡しておいたほうが対策が練りやすいんじゃないのか?
俺が転生者であり、女神に殺されそうになったこととか……。
もしかすると、それを伝えれば突破口が見つかったりしないだろうか……?
(どの道、命がかかってるんだしな。リリスには言うべきだ……。)
俺は決意した。
リリスにすべてを打ち明けようと……。
”あ、あのさ。リリス……。ちょっと話すことがあるんだけど。”
”何じゃ?改まって。”
”あのな……。”
俺はリリスに全てを打ち明けた。
俺が別の世界から来た転生者であること。
女神オステリアに焼かれたこと。
その記憶を引き継いでいること……。
全てを打ち明けた。
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