第15話 悪夢

"いや、リリスが女性ってことにも驚いてる。それに龍人族の女王ってことにも驚いているけどさ。”


”けど……。なんじゃ?”


”何か実感が無いというか……。歴史書って文字だし、お前は光る玉だし。絵空事に聞こえてさ。”


”一理あるのぅ…。”


”まぁ、それはそれとして。読み進めるか。お前は光る玉に過ぎないわけだし。”


”う、うむ……。何か腹立つが続けよう。”


何だか気まずい雰囲気が流れつつ。俺は本を読み進めた。


【龍人族が滅ぼされ、魔王に地上界は蹂躙されるかと思われた。しかし、ここで人族のレシータ巫子が登場する。彼女は現レシータ王都に流浪の果てに辿りつき。ここで5人の英雄。5大英雄を集めた。詳しくはレシータ戦記にあるとおりである。それがこの王都レシータのはじまりとされている。】


”魔王……。マジでいるのか。それに龍人族って自然絶滅したんじゃなくて、滅ぼされたんだ。はじめて知った!”


”この本は大分事実と違うがのぅ”


”え?そうなの?”


”まぁ、ええわい。続けて読んでみぃ。”


”あ、ああ。”


俺は続けて読む。


【5大英雄とレシータ巫女の力をもってしても魔王討伐ならず、ここまでかと思われた。そのとき、滅びたと思われていた龍人族に生き残りの少女が現れた。】


おぉ、生き残りが居たんだ!


【彼女と協力し、封印のためにレシータ巫女は1人生き残った龍人の少女の命をささげて大魔法を発動する。そして見事に魔王を封印した。生き残った5大英雄のうち、炎の魔法使いガーネルが、レシータ巫女からこの地の管理者を引き継いだ。これが初代王であるとされている】


そこまで読んで、本の後ろに地図がついていることに気がついた。


”おぉ!リリスの予想通り、今と昔の地図がついている!”


”地図を手に入れるのに大分時間がかかったのぅ……。”


”確かに……。”


早速、調べてみる俺とリリス。


ええと……。うちの村から近くて、大きな神殿がありそうな町って……。


地図で該当する町が一つあった。うちの村から北東の位置にある。それに馬車で半日ほどの距離だ。


”これなら何とか日帰りで行ける距離だな。”


”両親に連れて行ってもらえば……じゃろう?”


”もちろん。俺がどうやって馬車に一人で乗るんだよ。両親をどう説得するかだな……。”


”まず、無理じゃろうがな。”


”元も子もないこと言うなよ……。”


俺は疲労感を感じていた。


(何だか疲れたな……。)


部屋が暗いせいか、目がチカチカする。暗闇で本読むのって疲れるのね。


しかし衝撃的な内容だったな。


龍人族って魔王に滅ぼされたんだ。その王様がリリスだったとか……。


魔王とかって封印されたって書いてあったけど、復活しねーだろうな。


いやだよ。せっかく生まれ変わったのに魔王と戦争とかさ。


それはそれとして……。


俺は隣町に行く必要が出てきた。エンジストーンで魔法適性を知る必要がある。


まだ赤ん坊な俺を過保護な両親が連れていくとは思えない。


しかし魔法は早く覚えたい。


それにさっきの本を読んだせいか、魔王のことも若干気になってきた。もし魔王が復活とかになったら、魔法を早く覚えておかないと色々と危険な気がするし。


(でも、リリスの言うとおり。そんなに急がないでも……。)


ドクン!


そのとき、俺は胸の動悸を覚えた。


(なんだ。動悸が!どうしたんだろう。変な話を聞いたからか?)


俺が胸を押さえていると、リリスが心配してきた。


”どうした?胸が痛いのか?”


”いや……、本を読んだせいなのか、動悸が止まらない。”


自分でも、どうしてここまで不安になるのか分からなかった。


(早く魔法の修行をしないといけない。そういった胸騒ぎがする。この感覚は説明ができない。何か変だ。)


俺は動悸が収まるのを待つと、息を整えた。


”戻って休んだほうが良いぞ。ヤマトよ。”


”そ、そうだな……。”


俺は父親の部屋から出ることにした。本を読むのはここまでだ。


そして、部屋に戻るとすぐに眠ってしまった。

そして、俺は夢を見た。

翌朝、俺は悪夢にとび起きる。


「う、うわぁ!」


俺の叫び声に、マリーシアとナタルが部屋に飛び込んできた。


「どうしたの!ヤマトちゃん!」


「ヤマト様。どうしました!?」


「はぁ……。はぁ……。はぁ!」


息を激しくしている俺に、マリーシアが慌てる。


「ど、どうしたの!?ヤマトちゃん!?」


何とか宥めようとしたマリーシアに抱っこされて。俺はいくらか落ち着いた。


と、とにかくマリーシアを安心させないと。


「もう大丈夫……ママ……。こわい夢みた。」


顔を見合わせるマリーシアとナタル。


そして安堵のため息を吐いた。


「ゆ、夢?なぁんだ。それは怖かったわねぇ?ヨシヨシ。かわいそうに」


「かわいい。ヤマト様」


何とかその場は収まった。


二人に言ったように俺は夢を見た。それは本当だ。


しかし、内容が凄まじかった。その夢の内容は、とても言えるものじゃない。


それくらいリアルで迫る夢だった。


”どうしたんじゃ?ヤマト。昨夜からおかしいぞ?”


二人が去ったので、リリスが心配そうに語りかけてきた。


”うん。何だかおかしいんだ。すげぇ悪夢を見た。”


”どんな夢じゃ……?”


”えっと……。”


俺は夢の内容をリリスに伝えた。


それは気持ち悪い夢だった。


5歳の誕生日に俺は家族にお祝いをしてもらう。途中までは、とても幸せな夢だった。


しかし、問題はその日の夜だ。


緑色で光る角を持った化け物が、うちを襲撃してくるのだ。


リカオンやマリーシアは、俺を守ろうとするが殺されてしまう。


5歳で魔法も使えない俺は、生きたまま化け物に食われてしまうんだ。


その時の映像を思い出すと、吐き気がする。


”と言う夢なんだ……。こえーだろ?”


話し終えた俺は幾分か落ち着きを取り戻していた。話すと楽になるみたいだ。


”……。”


”所詮は夢だしな。ごめん、いろいろ騒ぎ立てて。忘れてくれ。”


しかし、リリスは無言だ。


”……。”


”何だよ。何か言えよ。リリス……。さっきから無言だぞ?”


すると、リリスは真剣な声で俺に告げた。


”ヤマト。それは予知夢じゃよ。”


”え……?”

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