第14話 そこかい!

”リリス。この本棚の何処かに無いかな。そういう資料……。”


”どの道、10歳からじゃ。オヌシが気にしても仕方あるまい。”


”いや、もしかしたら今からできることがあるかもよ?”


”まぁ……。な……。”


超気になる……。この本にはエンジストーン自体のことの説明は書いていなかった。他の本で調べるか。


幸いにも、ここは我が家で唯一の書籍部屋だ。ここで調査続行だ。


”リリス、書棚の高いところは行けないから。見てくれるか?”


”分かったぞい。全くオーブ使いの激しい奴じゃわい。”


ブツブツ言いながら、リリスは言うことを聞いてくれる。オーブ使いって何よ。


フワフワと書棚の高いところを彷徨いはじめた。


”これは違うの……。これでも無い……。”


などと、調べてくれている。


俺は地面に、「お座り」して待っている。赤ん坊の姿だと、これが限界だ。


これだけ本があるんだ、何か情報を得られるはずだ。


リリスが書棚を一つ一つチェックを続ける。


すると、リリスが声(テレパシー)を上げた。


”これは……?”


”見つけたのか!?リリス!?”


”【はじめての子育て!これでパパとして一人前!】という本じゃ”


”それ……子育て本じゃん。違うだろ。”


”いや、そうでもないぞ。きっとエンジストーンにも触れているはずじゃ。”


”そ、そう?”


なんだか笑ってしまうタイトルだが、近くにあったモップの柄を使って本を叩き落とす。


そして、地面に本を置いたままパラパラとページをめくる。


(リカオン……、パパとしてこんな本読んでいたんだな。子煩悩な奴……。ありがたい父を持ったもんだよ。俺は……。)


何だか感動しつつ読み進める。


すると……。


「はじめての適性審査」って項目があった!


”おお!リリスの言うとおりだ!これならエンジストーンについて触れられていそうだ。ビンゴな本を見つけたものだな。”


”ビンゴ?なんじゃ、それは?”


”いや、何でもない。”


俺は読み進める。


(なになに?)


【魔法適性審査は子供との最高の思い出になります、適性審査はエンジストーンが必須です。エンジストーンは、希少なので厳重に国が管理しています。主に比較的都市部の神殿にはエンジスト―ンがおかれています。そこでは適性審査が毎日行われており、まず子供を……。】


そこまで読んで顔を上げた。


(これだ!!)


しかし、都市部まで行かないといけないのか?俺一人では無理だ。赤ちゃんだし……。明日、リカオンやマリーシアにお願いしてみるか?そんな遠くになんか連れていってくれないかもしれないけど……。


そもそも近くの都市っていうとどこだろう?


”リリス、この周辺でエンジストーンがありそうな都市はあるか?”


”いや。そこまで詳しくは分からん。大体の地理などは理解しているが……。そうじゃな、この本なんかどうじゃ?”


リリスが示す書棚を、さっきのモップを使って叩き落とす。


結構音がしたが、家族が起きる気配はない。結構、防音がしっかりしているようだ


ふむ。本のタイトルは……?


【王都レシータの歴史】


”歴史書?地図が知りたいんだけど……。”


”読んでみぃ。大体現在の都市との比較地図などが付いているもんじゃ。”


”そ、そうなの……。分かった。”


俺は読み進める。


【王都レシータ。世界最大の大陸ラスタ大陸を統括している人族の王国。ラスタリス王国の王都である。歴史は古く、3000年前に建設されたとされる。全世界の中でも最大級の魔法都市であり。これを超える都市は、龍族の王都くらいである。】


”え!?龍族?龍族って龍人族のこと!?”


”いや、それは違うぞ。龍族と龍人族は似て非なるものじゃ。”


”エルフ、ドワーフとかは知ってたけど。そんな種族いるんだ。”


”会話に出てこなかったからのぅ。他にもいろいろいるぞ。今度教えてやるわい。”


”よろしく。”


俺は引き続き読んでみる。


【古くは約2000年前。魔王が地上界で暴れ回り、地上界は荒れに荒れていた。魔王の力はすさまじく、最強種族である龍人族がリーダーとなり戦った。しかし、龍人族は敗れた。最後の一人である龍人族女王リリス・ドラガラムが殺され、龍人族はこの世界から消えることにった。】


”……!?”


”……”


俺は驚いてリリスのほうを見た。


”…………リリス。これって。”


”ああ、隠すつもりは無かったのじゃが……。”


”いや、驚愕だって……ビックリした。”


”そうじゃ、ワシは龍人族の……。”


”お前、女だったの!?”


”そこかい!”

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