第13話 レイ・クルーズの魔法書

”何だって?リリス、魔法教えられるって?”


”ああ、ワシは龍人族いちの魔法使いでもあったぞ?”


”まじかよ……。じゃ、じゃあ教えてくれ!頼むよ!”


”教えるのは構わんが、まだオヌシは10歳になっておらん。魔力が発現しておらんでの……。まだ早い。”


”そ、それでも知識だけでも。ほら、詠唱とかもあるんだろ?”


”ほう……。よく知っておるのぅ。そんな知識をどこで……。”


まずい、興奮して口走ってしまった。まだリリスに俺の過去を話していないんだった。


”は、母上に聞いたんだよ!”


”なるほどのぅ。”


リリスは考え込んだ。


”どうしたんだよ。早く教えてくれよ。”


”いや、ちょっと思うところがあってな。”


”思うところ?”


”いや、ワシが死んだのは数千年前じゃろ?その時と今とでは常識が異なっておる。”


”そりゃ……。数千年経っていればな……。”


”ワシの当時教えていた魔法理論と今の理論が異なっていないかが不安じゃ。”


”魔法理論って変わるもの?”


”ああ、変わるぞ。日々進化しておる。もしワシの当時のやり方が間違っていれば、オヌシの成長を阻害する可能性がある。”


”そりゃ困る。”


”じゃろう?それに魔法属性が分からない奴に、魔法を教えると弊害になるんじゃ。属性を知らないのは危険なんじゃよ。”


”じゃあ、どうすれば良いんだよ!俺は学べないってこと?”


”いや、いや……。そのリカオン殿の書斎にある魔法書を一度見てみたいのぅ。さすれば、最新の魔法理論とワシの魔法理論のスリ合わせができる。”


”なるほど。”


リリスの考えに俺は感心した。ダテに何千年もオーブをしていない。


”ならば、その今夜の侵入作戦はやってみるべきじゃ。”


”よし!”


こうして俺とリリスは、リカオンの書斎部屋への侵入作戦を続行することにした。

その後、書斎への侵入を果たした、本が重たくて持てなかった。少し悩んだが、仕方なく本棚から転がして落とした。


ドスン!


物音に、家族が起きないか心配したが、誰も起きなかったようだ。


(よし!)


俺達は狙いの魔法書を手に読み込みを開始した。


(どれどれ、俺に読めるかな……。く、暗いな……。読めんぞ。これは盲点。)


”ワ、ワシにも見せてくれ”


”お!リリスが近寄ると明るくなる!”


”ワシはランタンか!”


”いいから、いいから。これで読める。読もうぜ?”


”う、うむぅ。複雑な心境じゃ。”


書名。著者は……と……。


魔法学入門

著者:レイ・クルーズ


そう書いてあるな。よし何とか読めそうだぞ。この世界の文字は簡単なものであれば、大体覚えているので大丈夫なはず。絵本レベルだけど。


どれどれ、目次を見てみるか。



1章 魔法適性と7属性

2章 幼年期の魔法訓練法

3章 下位と上位魔法

4章 魔法とセクシャルハラスメント

5章 魔法における性的興奮

6章 魔法ありきのエロス

7章 魔法とサディズム


おいおい、4章から意味分からないんだが!!魔法とセクハラって何か関係あんのか!?5章の魔法における性的って何よ!?


”のう。ヤマトよ。これゴシップ本じゃなかろーか?”


”ま、まあ。まずは1章から読んでみよう。”


”う、うむ……。”


何だか変な著者確定だが、俺は読み込みを進めた。


1章 魔法適性と7属性


【魔法学を極める上で、適性を知ることが肝要である。まず適性が無ければ魔法自体が発動しないが、主適性を知らずに訓練をすると恐ろしく未熟な魔法使いが出来上がる。】


(ほう、適性ね・・・・)


【そのため適性を知ることが第一歩である。また幼少期にまだ魔法発動を知らないうちに適性を知ることも最重要事項である。】


(うん?なんでだろ……。)


【最初に使った魔法が、その者の主魔法と魂がプログラムすることが実験で証明されている。つまり、最初に属性違いの魔法を使うと魔法訓練をいくらしても育たない魔法使いが生まれてしまう悲劇となる。】


(そ、そうなのか。危なかった。こっそりこの本で覚えて使うところだったよ。読んでおいてよかった。そ、それでどうやって適性を調べるんだ?)


”…………。”


リリスは黙って読んでいるようだ。


【魔法適性を知るにはエンジストーンにより光の色や光度により適性を知ることが出来る。これが一番確実であり、安全な方法である。かの魔法道を極めた伝説の種族、龍人族も同様の方法を取っていたと、書籍が証明している。】


”エンジストーン?なんだそりゃ……。おお、龍人族って単語が出てきたぞ、なんだか感動。な?リリス”


”ここまではワシの認識と変わらん。龍人族の魔法理論と同じ理論を推奨しておる。このレイという著者は、なかなかやるのぅ。”


”そうなの?”


”ああ。この世界の魔法理論がそうなのか。それとも、この本の著者が優れているのかは不明じゃが。この理論は、龍人族だけの秘匿事項じゃ。”


”なるほど……。でも何で、そんな本が父上の書斎に。”


”全く読まれていない感じじゃが、おそらく。この本は新理論過ぎて相手にされていなかったんじゃなかろーか……。”


”そ、そう言うこと?”


”おそらくな……。”


俺はエンジストーンという単語について興味が惹かれたので、ページをパラパラとめくってみた。


(エンジストーンについての説明はないようだな……。)


パタン……。


軽い疲労を感じたので俺は本を閉じた。


そして暫し考え込む。


(この本で訓練する前に、エンジストーンとやらで俺の属性を知る必要がありそうだ)


しかし、そのエンジストーンってどこにあるんだ?そんな石っぽいの見たことねーぞ?家の中に、そんな石なんて無かったぞ……。


”ヤマト。エンジストーンについても調べたほうが良い。ワシの時代にあったものと相違ないか調べたい。”


”了解……。じゃあ、本棚を照らしてくれよ。”


”じゃから、人をランタン代わりに使うな……。”


ぶつぶつ文句を言いながら、リリスは本棚を照らしてくれた。


今度は、エンジストーンを調べる番だ。


俺は心が躍っていた。

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