第11話 俺の名前はヤマト

毎日、この家の女性……もはや母親と呼んで構うまい。母親から、毎日話しかけられている。


この人は、俺が理解しようとしまいと何かニコニコしながら毎日語りかけてくるのだ。


これが母の愛ってやつなのかな。


言葉の意味は分からないけど、何だか嬉しい気分になる。


それはそれとして、俺は貴重な言語学習機会なので、必死に聞き取ろうとしている。


中学のとき、これくらい真剣に英語をやっておけば優秀な成績だったろうに……。


しかし、俺は金銭的な理由から高校へは行けなかったから、勉強する意味すら無かったかもだけど……。


生活がかかると、やる気が全然違う。


そのおかげか、少しなら聞き取れるようになった。


そして、家の人がつけてくれた名前がやっと分かった。


毎日、両親が呼びかけてくれるから、まず自分の名前から判明したんだ。


俺の名前は……。


【ヤマト】


……って、なぜ日本っぽいんだ?


ヤマトって……。


ここは異世界だろう?ジークとか、フリードリヒとか、色々あるだろうに……。


何故【ヤマト】なのだろうか。


まぁ……いいか。


悪くはない。【スポポン】とか【ピヨーン】とか、変な名前より格好良い。


異世界なのにヤマト。これはこれで良いじゃない。


ちなみに、四ケ月で自分の名前を認識する赤ん坊は普通どこにもいない。


転生によって自我が既にあるため、聞き取りに集中していたことが強かった。


俺の種族も関係あるのかも知れないけどね。龍人族は色々優秀らしいから。


ちなみに両親は「ヤマト〜」と呼ぶと振り返るから、大喜びだ。


あくまで予想だけど、「ヤマトちゃんは天才ベイビーでちゅねー」などと言っているように聞こえる。


バカ親が炸裂である。


しかし、とても優しい両親である。俺は好きだ。いい人達に拾われた。


俺は、ヤマトという名に納得していたが、ふと"あること”に気がついた。


ヤマトという単語がある以上。もしかしたら、この世界に転生してきたのは、俺だけではないのかも知れない。


案外、他にいるのかも知れない。


…………だとすると日本人の可能性が高い。


あ、あと。俺にも家名とかあるみたいだけど、まだ長すぎて聞き取れない。


その日、リリスに俺の名前が判明した!と告げた。


リリスも嬉しいそうに。俺の名前を尋ねたら。


【ヤマト】と聞くと、非常に驚いていた。


何故かあそこまで驚いていたのかは分からない。ただ、驚きと懐かしさをミックスしたような声で


”やはり……、そう言うことなのか?いや、しかし… ”


そんなことを言って消えてしまった。


俺の名前を聞いた途端、どうしたんだろう。あいつ。

時が流れ。

転生して六ケ月が過ぎた。


言葉も大分理解出来るようになってきた。生後六ケ月でこれは凄いことらしい。


実際、リリスも驚いていた。


龍人族ということを差し引いても、この体はスペックがかなり高いらしい。


俺をこの体に転生させたのは誰なのだろう?


あの女神という可能性も残っている。


この半年の間、女神が出てくることも、話しかけてくることも無い。神様だから、地上界には干渉出来ない?そういうことも考えられる。


しかし、今となっては調べる術が無い。


頭の片隅に不安を残しつつ。俺は毎日を過ごしていた。


この頃になると、ハイハイが出来るようになっていた。


自由きままに散歩している。家の中だけだけどね……。


外は危ないと両親も出さない。俺も出たくない。転生初日に狼に襲われそうになったしね!


しかし、家の中であれば何処でも行ける。


俺がハイハイをするようになってから、両親は大変そうだ。よく見失って大騒ぎをしている。


「あの子、ハイハイの速度が尋常じゃないのよ。」


「はは、いいじゃないか。運動神経抜群なんだな。」


「目を離すと、すぐ居なくなっちゃうから困るわよ。」


「ははは。ヤマトは可愛いな~。」


両親は俺の成長を喜んでくれているようだ……。


また、言語も大体であれば理解するようになっているし。マリーシアに絵本を毎日読み聞かせをされているので、読書もある程度可能だ。


既に発音も出来てきている。カタコトであれば話せる。


これには両親は驚いている。


「あなた!この子凄いわよ。半年で話し始めてる。天才かも!」


「普通じゃないのか?」


「お隣のお子さんなんて、同じ月齢だけど全然よ。」


「ヤマトは偉いなー、天才なんだな!えらいでちゅよー!」


何かする度に褒められて、スリスリされる。悪い気はしない。


母は美人さんだしな。親父のほうは止めて欲しい。まじで髭が痛いんだ。


しかし、両親は俺の発達は「天才」だと思っているようだ。まぁ、俺の場合 精神年齢が35を超えているせいもあるのだけど。


そうそう!言語と文字が少しできるようになったので、さらに家名と両親の名前が判明した。


俺の名前は……。


ヤマト・ドラギニス


母親は

マリーシア・ドラギニス


父親は

リカオン・ドラギニス


両親の生家は没落貴族らしい。


そして、両親の職業は何と【冒険者】。


すごい、本当に冒険者って職業あるんだって感動してしまった。


家名があるから貴族?って、はじめ期待しちゃったよ。両親に聞いたら笑われた。


遠いご先祖様は子爵だったらしいけど、没落してミドルネームも無い。名残で家名だけは残った感じ。


でも、俺から見れば結構いい生活してる。木造3階建てだけど、屋敷って感じがするし。部屋は7つもある。調度品とかも良いもの使ってる。


ちなみに電気は通っていない、どうも中世あたりの文明らしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る