第9話 俺は龍人族らしい

光る玉(リリスというらしい……)が、俺を龍人族だと言う。


”え?龍人族?何ですかそれ?僕は人じゃないの?”


”オヌシは人族ではない。龍人族という種族じゃ”


”ええ!?じゃあ僕は人間じゃないの?”


俺の転生って一体……。放心しそうになったところで、リリスが笑った。


”ふはは。広義では人間じゃよ”


”どういうこと?”


”……意思疎通出来るから勘違いしていたが。オヌシはまだ赤子じゃもんな。知らぬのも道理じゃ。”


そう言うと、リリスは俺に丁寧に教えてくれた。


この世界には、大きく生物種目分けとして『~石(ストランと呼ぶ)』という大カテゴリーがある。各石(ストラン)の中に『~種』がいるらしい。


例えば人間で言えば、人間石(ストラン)人族。


エルフで言えば、人間石(ストラン)エルフ族。


ドワーフで言えば、人間石(ストラン)ドワーフ族。


”まぁ、この世界にいる者達はたいがい人間石(ストラン)じゃな”


”つまり、龍人族は……。人間石(ストラン)龍人族?”


”ほう、もう理解したのか。赤子とは思えん知性と理解力じゃ”


リリスは、感心したようだった。


赤子の割に知能が高いのは、俺が転生者であり、中身が35歳のおっさんだからだ。


(俺が転生者だと言うことに、リリスは気がついていないみたいだな。)


ただ、これは確定では無い。


光る玉という超常的な存在だけに、どこまで見抜いているのか未知数だ。


敢えて、俺が転生者だと教える必要は無い。


とりあえず会話を続けよう……。


”僕がは龍人だとして珍しいの?”


”珍しい?珍しいなんてもんじゃないわい。とっくに絶滅している種族じゃからな。”


”ぜ、絶滅……!?”


”龍人族は世界最強の種族として繁栄していたのじゃが、数千年前に絶滅した。”


そう言うリリスの声は、少し哀しそうな色を含んでいた。


何か凄そうな種族である。しかも、最強とか。ちょっと憧れる。


”最強……。な、何かの間違いでは?僕なんか……。”


”いや、オヌシは龍人族じゃよ。間違いないその魂の輝きは。”


”魂の輝き?”


”……ワシにはわかるんじゃ、ワシもかつて龍人族じゃったからな、”


そう言うリリスの声は、少し哀しそうな色を含んでいた。


(え!?リリスも龍人族だったの?それが何で、こんな球体に?)


変なオーブに話しかけられる俺……、そして、そのオーブは自分は龍人族だったと主張する。


変な関係がはじまった。


会話は続く……。


”ああ……。ソウルオーブという?”


“ソウルオーブ?”


“うむ。この世の者は、死ぬと魂になる。そして天界に強制転送される。しかし、一部の者は転送されないのじゃ”


”その一部があなただと?”


”そうじゃ、転送されることも可能じゃが。ワシのほうでキャンセルしておる。それは生前に力のあった者しかできないことじゃ”


”なんでキャンセルしてるんですか?”


”理由があるのじゃ……。この世に未練があるのでな”


”それって地縛霊…………。”


”い、一緒にするでない!失礼なガキ……赤子じゃ!”


”少しリリスは怒ったような口調に変わった。オーブのくせに感情豊かな奴である。”


”失礼いたしました……”


”しかし、オヌシ……。本当に赤子か?会話できておるのが驚きじゃ”


まずい……。なんか疑われてる……。

とりあえず知らばっくれよう。


”そうなのですか?”


”うむ、通常であればオヌシくらいの赤子は自我すらない。”


”僕にはわかりません”


”フム、まあ龍人の子はたまに天才児もおるからな、その類か……。”


よし!納得しそうだぞ。勝手に勘違いさせておけばいい。


”あの、本当に龍人だったんですか?”


”本当じゃ。証明できないことが口惜しいがのぅ。憧れるか?”


”はい。とっても”


”というか……。オヌシは龍人じゃがな!ふはは!”


リリスは楽しそうに笑った。


なんだか孫と会話するお爺みたいな雰囲気だ。


”あの……。色々聞いていいですか?”


”もちろんじゃ……だが、そろそろ時間切れじゃ。夜ならもう少し会話できるんじゃが……。”


なんだ、リリスは時間制限有りの存在なのか?


”え?そうなの?ごめんなさい。また会えます?”


”ああ、またすぐ会えるとも。またな龍の子よ。”


その言葉を残して、部屋にあった沢山のオーヴと共に消えた。


話してみると、なかなか良い奴だったな。また夜に会えるのかな。


(俺が龍人族?本当かな?しかも絶滅種とか勘弁願いたい……。)


俺はリリスが居たあたりを見つめた。


そこには何もない。


シン……とした部屋が、何だか少し寂しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る