第8話 オーブ

///////神崎視点に戻る///////


この体は、赤子なだけあって突然に眠気が襲ってくる。


今日何かあるとは理解していたのだが、また超絶眠くなってしまった。


睡魔は突然襲ってくる。


(きょ、今日は起きていないと……。)


何せ、どこかに連れられてしまうかも知れないのだ。ここで寝てしまうわけにはいかない……。


(スヤ……スヤ……。)


そして、俺は眠ってしまっていたようだ……。


(は!ね、眠ってしまった!?)


その昼寝から起きたら、状況が変わっていた。


どう変わったかと言うと……。


…………可愛がられてる。


いや、前から可愛がられてるけど……。ちょっと強くなってると言うか、何と言うか。


抱っこされる時間がやけに長い。この家の女性のほうは、もう俺を片時も離さない。常に俺を抱っこしている。


合間、合間にはキス攻撃だ。頬にキス。額にキス。チュッチュッの嵐。


交互に抱っこされたり、撫でられたり。


むちゃくちゃ可愛がられている。もう凄いくらい。


(ちょっと意味が分からないんだけど……。一体どうなってる?今日、追い出されるハズだったはずでは……?)


訳が判らない。


とにかく、俺はこの二人……夫婦にもみくちゃにされてる。


※俺は、この二人を夫婦だと断定した。男と女なのは間違いないし多分合ってる。


うーん……。言語が分からないし、目も不自由な赤子だと情報に限りがあるな。早く言葉を覚えたい。


しかし予想外だったな。しばらくこの家に居れそうだ。


はは……。俺の推測なんてアテにならんね。


まあ、それは良かったけど。


それはそれとしてだ……。


それよりも、俺は別のことでも俺は驚いている。俺はいま不思議な体験をしているのだ。


それは……。


光る物体が見えるようになったのだ。


そう……。光る玉のようなもの。


ほら、いまも俺の目の前にフワフワと光る物体があるのだ。何か……こうオーブ的なボンヤリ光る玉が見える。


(これ何?人魂?超怖いんだけど。)


もみくちゃにされながら、俺はその玉が気になって気になって仕方ない。


幻覚?


いや、その割にリアル過ぎる。


(何?これ?)


それも、1個や2個ではない10〜20個ある。飛蚊症?んなわけないか……、俺はまだ赤ちゃんだしね。


モミクチャにされた後、俺は自分の部屋(?)に戻された……。


(ふう………なんだか疲れるぜ。)


ちなみに部屋に入ったから、あのオーブは消えたかと言うと……。


今もあるよ。目の前にたくさん……。


どうやら、俺に付いてくるみたい。


ああ!もう!正直すっげえ鬱陶しい。


何なんだよ!これ?


赤ちゃんで目が不自由なのに、はっきり見えるし!


うーん……こまったな。精神衛生上よくないぞ?とりあえず、威嚇してみるか?


「あぇぇぇぇ、うぇぇふぇ!(ごらぁぁ!あっち行けぇ!)」


赤ちゃんなので、なんだか可愛らしい声しか出なかった……。


うぬー……。まったく反応なしだ。


そもそも、光る玉は家の住人には見えていないようだった。

こんだけ沢山あるのに驚いた様子はなかったし。


(イライラするが……。特に攻撃してくることはなさそうだ。)


俺はオーブを目で監視することにした。


「…………。」


1時間ほど観察してみたが……。

オーブは、俺の周りをフワフワ浮いているのみ。何もしてこない。


俺は考えを改めることにした。


これに慣れるのだ。


ほら、見つめていると何だか愛着がわいてきたぞ?うん、家のインテリアとして見ればいけるか?


いや……。無理だな。無理がある。


(まぁ、でも……。攻撃してくるわけでもないし。しばらく放置しとくか……。)


そう思って、俺はオムツの中が「小」でいっぱいになってきたのを感じる。

そろそろ 住人を呼ぼうかと思っていたところ。


…………”まさか!なぜ?”…………


変なノイズが頭の中に響いてきた。


(うん?MASAKA ? NAZE ? )


そういう音だった!うん、そこは間違いない!しかも日本語?


いや……。MASAKAって音で、全然違う意味かも知れない……。

いったいどこから?


俺が不思議そうにしていると。まだノイズが……。


…………”こやつ、きこえてる?”…………


(……!また!)


聞き間違いじゃない、確かに聞こえた!

しかも、意味が分かる感じだ。何故に日本語!?


何か、こえぇぇぇ!むっちゃ怖い!


(と、とりあえず 家の人を呼ぼう)


「ふ、ふえぇ!」


泣き叫ぶ準備をしかけたとき。


………”まてまて!怖がるでない。龍人の子よ”…………


オーブは意思をもって、俺のすぐ目の前まで降りてきたのだった。


(オーブが話しかけてきた!謎の伝達方法で!)


しかも龍人?何それ?


と、とりあえず返事してみるか?


言葉は俺はまだできない。だって生後15日の赤ちゃんだ。

しかし、なんだかテレパシー的な通信なので、こちらもテレパシーで交信してみよう。


頭の中で思えばいいのか?


”もしもーし、もしもーし聞こえてますかー?”


”やはり!うむ、聞こえておるぞ。もしもしとはどういう意味か分からぬが”


(おお!会話できている!続けてみよう)


”聞こえてるんですね あのーどちら様でしょうか?”


”うむ。自己紹介が遅れてすまぬ。ワシはリリスと言う”


リリスさんか。なるほど。しわがれた声に聞こえる。老人なのかな?言い回しも古いしね。俺はリリスと会話を続けることにした……。


”あの、リリスさん。自己紹介ありがとうございます”


”オヌシの名前を聞かせてくれるか?”


”ごめんなさい、僕の名前はまだ無いんです”


”名がない?何故じゃ?”


リリスは心底不思議そうに聞いてきた。


生後15日でも名前がないって普通じゃないのか?でも俺は捨て子扱いだし。それを説明するか。


”僕、捨て子だったんで。親がいないんです”


”やはりそうか。しかし、何故龍人の子がここに……”


さっきも龍人とか言っていたな。何なのそれ?

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