第4話 転生3日目
※※神崎視点※※
女神に突然焼かれたとき、俺は終わったと思った。
その表現は正しくないかも知れない。厳密に言うと神界に行ってたときには、既に俺は死んでたらしいから。
それはともかく。
あの炎で焼かれるのはキツかった……。死んだ状態でも痛覚ってあるのね。激痛だったよ……。アレは、色んな意味で”終わった”と思った。
思い出したら腹が立ってきたな。
そもそも、何で突然焼かれなきゃならんのよ?
「焼き入れるぞ!ワレ!」ってセリフがあるけど、リアルに焼かれたし!
そもそも神様だろ?酷い奴だよ。あいつは。
極悪ギャングだって、いきなり火炎ぶっ放したりしないぞ。
(もしかして、あいつ。女神とかじゃなくて邪神とかだったんじゃないのか?)
そう思ったりもする。
ムカムカするが、それは一旦置いておこう。
とにかくだ……。とにかく、いま俺は生きている。
しかも赤ん坊の状態で。
そう、俺はいま赤ちゃんになってしまっている。
念の為言うが、精神的にではない。肉体的にだからね?
理由は判らないけど、炎に焼かれて気絶してから第二の生を授かったらしい。転生ってやつだ。
(俺の知っている転生テンプレとは大分違うな。)
驚いたよ。焼かれたと思ったら、いきなり”転生”&”森に放置”だ。
何なの?一体これ。
これも、あの女(女神のこと)のしわざだろうか?
転生させられるのなんて神くらいだろうし。
やっぱり、あいつが転生させたのかな?
もし、そうだとすると…。転生処理するのに炎で焼く必要があったのかな?
(そんなわけないよな……。)
推測の域を出ない。
しかし、これだけは断言しよう。
あの女神は邪悪だ。それは間違いない。
そして、理由は判らないが、俺は赤ん坊として生まれ変わった。
ただ……。転生テンプレだと、新しい家の母かメイドに覗き込まれてスタート……っていうはずなのだけど。
俺の転生は、それとも大分違った。
(転生した途端に、また死ぬかと思ったし……。)
いきなり転生した俺だが、やっぱり赤ん坊の状態だった。そこまではテンプレだ。
しかし、そんな状態で森に放置されていたんだぜ?そこが大分違う。
新生児は五感が発達していない。それでも俺はすぐに自分が置かれている状況を把握した。
俺の記憶は引き継がれていたし。経験と推測で把握した。
実際、赤ん坊と言っても新生児に近い状態みたいで目があまり見えなかった。しかし、光を感じることは出来るし、耳はちゃんと機能していた。そして手足の感覚もあった。
その感覚から、”夜”であること。そして、”外”にいること。さらに”自分がどうやら赤ん坊になっていること”を認識出来た。
さらに風や木々の葉のこすれる音から、ここは外で、どうやら森のような場所にいることも認識はしていた。
聴覚をフル活用して状況を把握したところ、周囲に誰も居ないことも理解はした。
状況は絶望的だ。
いきなり第二の人生終了かと思ったぞ。
だって、その後に獣に取り囲まれているのを理解したから……。
抵抗しようにも赤子にできることは何も無い。本当に死ぬかと思った。
しかし、生きている。
俺はいまも生きている。
見知らぬ人に助けられたのだ。
本当に感謝。感謝だ。
その後、その人に連れられて今に至る。
俺の計算では異世界に転生してから3日目に突入しているが、ちゃんと生きている。
今の状況は、いま暖かい部屋で一人でベッドに寝かされている。至って、安全な状況だ。
助けてくれた人の家に連れてこられて、そのまま面倒をみて貰っているのだ。
はじめは警戒していたが、まじで良い人だったらしい。
清潔なベッドに、ミルクをちゃんと貰っている。
俺は面倒を見られながら数日、この家の様子を伺っていた。
どうやら、この家には二人しかいないらしい。
助けてくれた人と、もう一人だ。
ベッドから見える光景はボヤボヤしてて、良く見えない……。
視力はボヤけてまったくダメだし、筋力もない……。首を横にしようにも、まったく動かないん……。無力ってこういうことを言うのね。
とにかく、俺は恩人の家で安全に暮らしている。
ただ、暇だ……。
赤ん坊では仕方ないが、特にすることがない。
(ああ!もう!不自由だなぁ!)
「ふぇ!ふぇえぇ!」
思った発音が出てこない……。
声帯もできあがっていないので、声も出ないのだ。くそー、スマホもないし、1日中横になってるのってツライんだよな。
(暇、暇すぎる……。)
「だう、だうう……。」
カタン……と、ドアが開く音がして誰か近づいてくる。
誰か来たらしい……。
ふわりと、自分の体が浮き上がる。
この感覚、抱き上げられたんだな。
……この無重力感、なかなか怖いものがある。
ただ抱っこされてるだけだけどね、怖いのよ。
「@/h&ohhc?,??!」
何やら俺に何か話しかけているが、何言っているのか、まったく分からない。この世界の言葉だ。解るはずがない。
目もボンヤリだし、シルエットしか分からないけど、今話しかけてくれている人は、たぶん女の人のほうだと思う。助けてくれた人は男性。その相方のほうだろう。
声の高さから推測するにだけだから、確信は持てないけどね。
言語スキルとか、転生にお決まりのスキル付与は無いらしい。
不便この上ない……。
「$&””&&###!?」
うん?何か言っているな、なんか慌ててるみたいだ?
なんとなく子供慣れしていないのは分かる。きっと若い人なんだろう。たぶん。。
カチャ……。
うん?俺の耳がもう一人この部屋に入ってきたことを告げる。
たぶん助けてくれた男のほうだ。
(何か二人で話しているな。)
「&/#Z,..Y//&&」
「@/h&ohhc?,??!」
二人で何かを話し合っているが、二人とも慌てているのが分かる……。俺が泣いていたと思ったんだろう。対応に困っているんだろう。
(大丈夫ですよ~?俺は何ともありませんよ~?ちょっとイライラして喋ってただけですよ〜?心配かけてすみません~。あはは!)と発音してみるが、出てくる言葉は……。
「あば~。ぶぷぅ。きゃっきゃ!」だ。
どうしようも無い……。ただし、喜んでいる気持ちは表現できたと思う。多分……。
「’"(''&/@」
「|\99=5+5々42#♡」
なんか、落ち着いたみたい。良かった良かった……。伝わったようだ。
お?
チュ!チュ!
二人して、俺のオデコにキスしてくる……。
なんか知らないけど、この二人子供慣れしてないけど子供好き?
まぁ、何でもいいけど。
俺は再びベッドに戻された。
そして、二人は部屋から出て行ったようだ。
シーン……。
静寂が部屋を満たす。
(ひ、暇だ……。)
はぁ、どうしよう。これ……いつまで続くの?
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