うっかり、怪談に巻き込まれた

しのびちゃん

第1話

ねえマスター

氷多めの

モヒートで

暑くて暑くて

肝から冷えたい


それならば

カウンター端から

順番に

怪談ばなし

はじめましょうか


ドアベルが

鳴らずにすでに

中にいる

エンジニアブーツ

重い足音


沈黙で

満場一致

言わねども

見えない誰かに

全身鳥肌


みえちゃった

天井と棚の

そのすきま

ほらほらあたま

あるでしょいるでしょ


ごろごろと

あたま落下し

はじまる怪談

君の背後で

既にネタバレ


なにかいる?

たずねられても

こたえない

見えちゃったこと

言えるわけない


順番だ

さてどうしよう

どれにしよう

にごさなくては

バレたくないから


実害を

及ぼしてくる

にんげんが

私はそれが

いちばんこわい


ソラミミか

木製の壁

爪でかく

ガリガリガリと

ほら聞こえるでしょ


おさな児か

女の子の

笑い声

ケタケタケタと

お店の外の


もう既に

他のお店は

閉店時間

人がいるのは

この店だけだ


そもそもね

深い真夜中

丑三つ時に

子供が1人

雑居ビルなんて


噂話

しないでほしい

たぶんそのこ

カウンターの中

マスターの足元


地下鉄が

動き出すまで

あと2時間

マスターごめんね

店閉めないで


鞄の中

奥の方から

取り出した

般若心経

かいてある手帳


ウイスキーの

瓶と瓶に

ならぶように

真っ白い顔が

こっちみていた


こわいかなぁ

スマートフォンの

アルバムに

保存してある

この写真見てよ


うちらがね

さっき言ってた

顔だけど

その写真と

そっくりそのまま


私は金髪

両腕にタトゥー

目を逸さぬは

顔色のない

人ならざるものだけ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

うっかり、怪談に巻き込まれた しのびちゃん @bowwowbaamaa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画