24話 一目惚れ
5月の末に差し掛かる頃、優也の携帯に一本の電話が来た。
「おはよう優也、俺だ」
「なんだ黒川」
朝8時、ちょうど顔を洗ってご飯を食べようとしていたところであった。
どうやらすけら部で受けた依頼が思っていたより大変だから手を貸してほしいとのことらしい。
「で、どんな依頼なんだ?」
「恋愛成就的なやつだ」
「ほう」
優也は食パンをトースターに突っ込み出来上がるのを待ちながら黒川の話を聞き続ける。
「1年の藤原という男が木下と付き合いたいそうなんだ」
「木下と?」
「あぁ、だがあれは俺の手におえない」
「似たもの同士な気もするけど」
「あいつの天然と俺の狂人さを一緒にするな」
自分で狂人という黒川に呆れながらも一理あると思わされる。
「具体的に何をすればいいんだ?」
「簡単だ、告白の内容を考えて欲しい」
「はぁ?」
あきらかに人選ミスだろと突っ込むも、普通そうだから頼みたいと言われてしまった。
「その藤原ってやつは何組なんだ?」
「3組だ、会いに行くのか?」
「人柄が分からなきゃな、黒川みたいなのが真面目な告白したら相手は爆笑するだろ」
「確かに、俺は恋愛なんて興味ないが」
本当かよ、と言いそうになったが確かにそんな気もすると考えた。
「まぁやり方は自由にしてくれ、とにかく頼んだぞ生徒会長の部下」
「部下じゃないわ」
通話終了ボタンを少し強めにタップして終了させる、それと同時にチンッっと食パンが焼けた音がする。
「な……いちごジャムが切れている」
***
休み明け、すけら部に依頼した張本人である
「藤原くーん生徒会の人が読んでるよ〜」
クラスの女子生徒のひとりが藤原を呼ぶ、立ち上がって優也の方に向かってきた男は、身長が高く、運動部らしい肉の付き方をしている。
「えっと、なんでしょうか」
少し面倒くさそうに要件を尋ねる、すけら部の依頼を手伝うために来たと優也は説明すると藤原は先程の態度と変わり穏やかになる。
「そうだったんすね」
「ここじゃあれだし生徒会室に来なよ、2人きりにするから」
「うっす」
まずはどういう経緯で理沙を好きになったのか、その辺のことを聞こうと優也は思った。
***
「一目惚れ?」
「はい」
生徒会室に移動してさっそく藤原から話を聞くと理沙に一目惚れしたらしい、優也は頭を悩ませることになる。
「ムズいな、一目惚れから付き合うっていうのは」
「だからインパクトのある告白文を考えて欲しいんすよ」
普通友達からお願いしますとかじゃないか、と思いながらも前向きに考えることにした。
「とりあえず明日までに考えてみるから」
「お願いします」
藤原は深く頭を下げる、それを見て恋愛に熱心なやつだと優也は思った。
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