21話 最初の花たち

 生徒会に菜乃葉が来た、部員集めの件を優也に報告しに来たらしい、しかし案の定親しい友人は皆部活に入っており、大会の練習などで兼任が難しかったりするとのこと。


「今年の1年はほとんどが部活に入ってるからね」

「そうなんでよ~ていうか会長可愛いですね!」


 菜乃葉が凛の頭から足先まで眺めて言う、顔を赤くしながら「どうも」と呟く凛。


「ごめん遅れました!って誰ですかこのちっこいの!?」

「ちっ……こい!?」


 遅れてやってきた理沙が無慈悲な言葉をぶん投げる、会心の一撃と言ったところだろう、その証拠に菜乃葉は膝から崩れ落ちている。


「私だって毎日牛乳のんだり努力してるのに……」

「まず徹夜癖を直せ」

「いやいや兄上!今のご時世深夜こそがゲームの時間なのですよ!」


 急に変な喋り方になり熱弁を始める、優也は軽くあしらい凛に部員をどうするのかを問う。


「私、慕われている自覚はあるけど、仲いい人は少ないわよ」

「そうだったな」

「むっ……」


 凛の場合向こうが一歩引いてしまう、生徒会長だから恐れ多いという生徒がほとんどである、仲いい友人といえばそれこそ美咲が一番である。


「先輩もぼっちじゃないですか」

「最近は黒川とゲーセンいったりしてるぞ」

「そうなの?」

「あぁ、よく昇降口で出待ちされる」


 凛はふーん、へーと小さく呟く、優也と凛は長い付き合いなのだが一緒に遊んだりしたことはない、凛の場合は友人、それも異性となるとどう誘えばいいのかも、どこに行けばいいのかもチンプンカンプンだからだ。


 人と、それも同年代の人と付き合う機会がいままで少なかった凛、高校も卒業が近くなっているというのに未だに優也とはプライベートで遊んだりしたことがない。

いつだって彼女の周りにいたのはずっと大人の看護師であったから。


「ところで美咲は?」

「そういえば用事があるって」


 と噂をしていると生徒会室の扉が開かれる、入ってきたのは美咲ともう一人の女子生徒。


「初めまして2年の飛崎花蓮ひざきかれんと言います」

「私の幼馴染なんです、調理部なんですけど、あまり忙しくは無いので兼任してくれるらしいです」

「ありがとう飛崎さん助かるわ!」


 部活設立には最低でも3人は必要である、どうするか凛は頭にある数少ない人脈をたどる……そして数秒で諦めた。


「あの、凛ちゃん……私も生徒会と兼任って形で入っちゃダメかな?」


 美咲が凛の前に行き尋ねる。


「いいの?助かるけども……大丈夫?」

「大丈夫だよ、ありがとう」

「美咲先輩、やりたいって言ってましたからね」


 美咲が率先して2つ目の項目を選んだのもガーデニングをやりたいという気持ちからである。


「それじゃ設立の届け出書いてくるね!」


 嬉しそうに美咲が生徒会室を出て行く、凛はそんな美咲を優しく見送った。



 

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