20話 変われないまま
優也は両親と妹と暮らしている、共働きの両親に変わって妹と兄である優也が変わりばんこで買い物をしている。
「ただいまぁー」
優也はダンボールを抱えて家に入る、先程学校から帰宅したところにちょうど配達員が来たのだ、そのまま2階へ行き菜乃葉と書かれたプレートのかかった扉をノックする。
「おいなの、荷物届いたぞ」
優也が声をかけるとすぐに扉越しから、ちょっとまっててという声が聞こえてきた、それから30秒ほどして扉が開かれる。
「ありがとうお兄ちゃん」
先日、ガーデニング部に入ってくれとお願いした際にねだられたものを手渡す、菜ノ葉がゲーム好きであり主にシューティングゲームを好む、そんな菜ノ葉がガーデニング部に入るための条件が、新しいヘッドセットを買って欲しいというものだった。
優也は長期のアルバイトはしないが、まとまった休みなどで短期のバイトをすることがある、そこで貯めた貯金を代償に部員を1名得ることが出来たのだ。
「てことで部活の件よろしく」
「わかってますとも」
「あと友達に部活入ってない奴がいたら勧誘してくれ」
優也の言葉に菜乃葉は「ヴっ!」と声を出す。
「私の周りほとんど部活はいっちゃてるよ、仲いい子は特に」
「まぁそうだよな、なのが絡んでるやつらはリア充の具現化だし」
「そこにいる私もリア充!」
休日はほとんどゲームしてるくせに、まぁ本人がそれで満足してるならそれこそリア充なのだろうとも優也は思った、同時に自分はいま満たされているのだろうかという疑問も湧いてきた、凛に誘われるがまま生徒会に入りずっとなんとなくやってきた自分が小さい人間なのではないかと。
「おーいお兄ちゃん?」
「あ、悪い……なんだ?」
「あまり期待はしないで欲しいけど、声は掛けてみるから」
別にその件で表情を曇らせていたわけではないのだが、菜乃葉は優也にそう言う、おそらく気をつかってくれたんだろう。
「あぁ、ありがとう」
部屋の扉が閉じられ優也も自分の部屋に戻る、そして椅子に寄りかかり手で顔を覆う。
「まぶしいな」
生徒会室での光景が脳裏によぎる、生徒会の仲間を誰よりも体制つに思っている美咲、人懐っこくて学年問わず好かれる理沙、誰よりも熱心な凛。
最初はなんとなくだった、凛と生徒会に立候補し、一緒に歩み成長できるんだと思っていた、思いあがっていた。
「何も、変わってないじゃないか……変わろうとして」
変われないまま、誰かと親しくなることに一線を置く癖がある自分自身に嫌気がさしている、あの日からずっと優也は人生を楽しもうとして楽しめずにいた、また誰かと親しくなれば、それほど別れがつらくなる。
「陽斗……」
今でも、彼は大切だった親友に別れを告げられていない。
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