2つ目 ガーデニングに力を入れたい
19話 素直じゃない
一つ目の項目である自主スペースの設立をクリアし、次の項目である「ガーデニングに力を入れたい」というものに挑戦しようとしていた。
「なるほど」
「小山先生的には賛成らしいけど、やっぱり植物を育てる以上しっかり管理する体制が必要みたい」
ガーデニングの担当は美咲、先に小山先生に話を通していたらしいが条件付きということだ。
「まぁおおかた予想通りね、維持するためには人が必要ってことよね」
「うん」
「それじゃ行きましょ」
凛が席を立つ、美咲は訳がわからずわたわたしている。
「ガーデニング部を作るのよ」
「な、なるほど」
簡単にいうなぁと思いながらも、なんとかなりそうだと思ってしまう美咲。
「生徒会長の私が声かければ10人は集まるわ、余裕ね」
そして凛が意気揚々と出て行き数時間が経った、生徒会室に戻ってきた凛の表情は真顔かつ涙目だった、部員の確保は失敗したらしい。
「みんなぁ、ごめんねぇ、ダメな会長でぇ」
「まぁ今の時間残ってるやつらは部活がある生徒だけだからな」
「橘くん!もっと早く言ってよぉ~!」
ぷんぷんと起こりいつもの椅子に座ってそっぽを向いてしまった会長、優也はしかたないなと言い電話を一本入れる。
「なぁお前部活入ってなかったよな、ちょうど新しい部活立てるんだけど入らない?」
電話の相手は誰なんだろうと凛は耳を済ませる。
「なんの部活?」
「ガーデニング部」
「うーん……どうしよっかな」
電話の相手が躊躇っているのが伺える、女の子の声だ、自分の耳の良さに感謝しつつ様子を見る。
「どうせすぐ帰ってもゲームしてるだけだろ」
「そうだけどさ……うーん、あ!」
何かを閃いたように声をあげる、そしてその後やけに猫撫で声になり何かを言っている、残念ながら凛にその部分は聞こえなかったが。
優也は「わかったそれでいいよ」と言い電話を切り、親指を立てる。
「了承してもらえたんですね」
「あぁ、真面目に取り組んでくれると思うぞうちの妹は」
「先輩とは違って器が大きいですね」
どうやら相手は妹だったらしい、女の子の声だったことに少し不安を感じていた凛は妹だと知り安堵する。
「ふ、ふーん……妹ね……」
「なんだ?」
「別に」
しかし何かを条件につけられていた気もする凛、どうしてそれを話してくれないんだろうと思う気持ちがあった。
「さて、いい時間だし帰るか」
あと10分ほどでチャイムが鳴るといったところで優也は席を立つ。
「そうね、部員問題は橘くんに任せるわ」
「りょーかい」
荷物を持ち上げて生徒会室を出て行く、そして扉が閉められたとたん凛は「もう」と不貞腐れたように言う。
「あれは何か隠してる時の先輩ですね」
「気づかれてないとでも思ってるのかしら」
「あはは……」
美咲は苦笑いした、凛はどうして自分の心がざわついているのか、何が嫌だったのか、はっきりとは分からなかった。
「寂しいんだね凛ちゃん」
美咲が突然いったその一言、凛は腑に落ちた。
「そっか」
自分は頼って欲しくて、隠して欲しくなかったのかもしれない、でもそれはわがままなんじゃないか?そう自分の問う凛。
自分は今でも大切な仲間に過去を打ち明けられていない、なのに相手には隠し事をして欲しくない。
そんな自分を彼は受け入れてくれるのだろうか?モヤモヤした気分のまま凛は帰宅した。
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