13話 会長と副会長の休日
朝9時、凛は今日着ていく服に悩んでいた。
「うーん」
自慢の桜色の髪に似合う服、こういう時に制服というものは便利だなと実感する、みんな同じものを着ているから浮くことがない。
「もうこれでいいや」
結局いつもの私服に着る白いぺフラムに黒いチノパンを選択、白いショルダーバックをかけて髪を結ぼうと洗面所へ向かう。
鏡の前に立ち、髪にゴムを通して星形のヘアピンを着ける、準備が完了し速足で玄関に向かう、今日は美咲とスイーツを食べに行く日なのだ。
***
待ち合わせは駅前にある甘味処の木々堂という場所、ショッピングモールの2階にあるお店だ、2年前くらにオープンした甘味処で美咲や凛はこの店の常連である。
「お待たせ凛ちゃん」
店の前で待っていると美咲がやってきた、茶色いカーディガンに紺色のロングスカート、ここに来るまでナンパされてないか疑うくらい可愛いなと凛はまじまじと見つめていると美咲が困ったように「は、入ろっか?」と言い、2人はお店に入った。
扉を開け鈴の音が鳴ると店員の「いらっしゃいませ!」という元気のよい声が聞こえてくる。
「あら、凛と美咲じゃない」
「こんにちは朱音さん」
「いらっしゃ!いい時間に来たわね?すいてるわよ」
店内を見ると5人ほどしか客がいない、といっても人気が無いと言うわけではなく、平日の学生が帰る時間や休日などはとても混む。
2人は席につきメニュー表を開く、今日は特に新作等はないので2人はいつも食べるものを注文することにした。
「はいはい、抹茶アイスクリームフルーツトッピング2つね」
店員の朱音は厨房に行き注文を伝えに向かう。
「それにしても生徒会長としてだいぶ有名になっちゃたね」
「前から目立ってた気もするけどね」
苦笑いで答える、生徒会長の凛もだが副会長の美咲も生徒の間ではかなり話題に上がっているのだ、男子間で行われた付き合いたい女子ランキング堂々の1位の実績を誇っているためアプローチする男子も少なくない、彼氏はいないが恋そのものには興味がある美咲だが、生徒会での日々を気に入っているため彼女自身は今のままでも十分満たされているのだ。
「凛ちゃんはやっぱり上に立つのが好きなの?将来も社長さんになったりするのかな?」
「私将来は今のところ看護師って決めてるから、どうだろうね」
「そういえばそうだったね」
凛自身が病に苦しんだように、同じような人を助けたいという思いから看護師を目指すようになった、ちなみに凛は病気であったことは誰にも話してはいない、話すことで同情されたり気を使われるが嫌だからである、表向き中学校は通っていたことになっている、遠くから引っ越してきて高校に入学したという設定も教師以外にはばれていない。
「そういう美咲は?なにかなりたいものがあるの?」
「はっきりとはないんだ、大学はいくつもりだけど」
「そうね、橘くんも同じようなこと言ってた」
そんな話をしてると2人の注文したものが運ばれてきた、抹茶のアイスの周りに桃やみかん、リンゴがトッピングされたものだ。
「お待ちどうさん」
「ありがとうございます!美味しそうだね」
「さすが木々堂!いつ見ても綺麗だね」
満足げな2人をみて朱音は嬉しそうにほほ笑む。
「若いお二人さん、将来のことなんて不安になっても無駄よ、大事なのは今なの」
「朱音さん聞いてたんですか……?」
ニヤニヤとしながら2人の肩を優しくポンと叩き。
「頑張りなさいよ、2人とも可愛いんだから」
「それ関係あります?」
「あたりまえよ!私なんていまだに結婚できないのよ!いい?若いうちが肝心なの!今のうちにいい男はーー」
「はいはい店長静かにしてください!!すみませんお客様!」
奥から駆け足でもう一人の店員がよってきて朱音を連れていく。
「あはは……」
「なんか真面目な空気だいなしだね」
困ったように笑う美咲、その無邪気な笑顔が凛に罪悪感を与える。
自分は過去を隠し、嘘をついているんだと。
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