12話 絶好調な初撃
新聞部の記事に理沙のインタビューとともに自習スペース開放の発表が行われた、凛が生徒会長になってからの大きめな活動、それは凛の生徒会長としての支持を多く増やした。
「すごいな、前年度の4月に比べて意見箱に多くの意見が入ってるぞ」
優也は資料を片手に意見箱を眺めて言う、ざっと20枚以上は紙がはいっている。
「それじゃ開封しましょうか」
理沙がわくわくしながらくじを引くように紙を取り出す、2つ折りの紙を広げて文字が見え始める、記念すべき一つ目の内容は櫻田会長との交際の申し出であった。
「はい、却下、次行きますね」
ポイっと紙を投げ捨てる、再び箱に手を突っ込みガサガサとしだす。
「付き合いたなら直接来なさいよね」
床に落ちた紙を拾い上げてクリアファイルに保管する、意見箱の紙は半年ほど残している、別に理由があるわけでもないがすぐに捨てるのもどうだろうという凛の考えからである。
「他も何個かあるわね……」
理沙がどんどん紙をめくっていくが似たような物ばかりである、中でもまともだったのは部費の増加、部活時間の増加、体育館のエアコン設置など。
「エアコン設置は去年やろうとしてたよね」
「あぁ、玲奈先輩が急に言い出したやつか」
前会長玲奈が夏場の体育に嫌気がさして行動を開始したけれども、実現できなかったという過去がある、生徒会室には会長よりも先に来てエアコンをつけてキンキンにしておくべしというなんとも自分勝手なルールも作り出していた。
「まぁそんな玲奈先輩も美咲ちゃんには甘かったけど」
「たしかに」
「さすが玲奈先輩ですね、美咲先輩の可愛さをしっかり分かっています」
うんうんと頷き感心している、玲奈は他の役員はこき使うが美咲はいいんだよといつも特別扱いをしていたのだ。
「エアコンの件、夏場も近いし前みたいに塩分補給できるものとか、エアコンとまでいかなくても、でかい冷風機とかならいけるんじゃないかな」
「どうだろう、ゆきてぃに聞いてはみよっか……実際去年熱中症になった子多かったし」
凛がメモを取っている時、下校のチャイムが鳴った。
「もうそんな時間ですか」
「先輩一緒に帰りましょーわたしパフェ食べたいです」
「ダメだよ理沙ちゃん、夜ご飯食べられなくなっちゃうよ!あ、待って鞄忘れてるよ!ま、またね2人とも」
バタバタと美咲と理沙が帰っていく、相変わらず仲のいい2人を眺めながら優也は和んでいた。
「お母さん……?」
「わかるけどな」
「私も帰る、その前にこれ戻しに行きましょ」
といって意見箱を両手で持ち生徒会室を出て行く、優也は当たり前のように凛のバックを持ちあげる。
「はいはい会長……」
「よろしい!」
両手にバックを持ちながら凛の後ろを歩く、すれ違う生徒みんなが凛に挨拶をする、本当に凛は会長になったんだなと優也はあらためて実感する。
「よし、完了」
「ご苦労さん」
優也は凛に鞄を渡そうとする、しかし凛はそれを受け取らずに玄関に向かい靴を履き替える。
「おい、要らないのか?」
「まだだめ、いいよっていうまで持ってて」
優也は困ったようにしょうがないなと言う、凛は満足げに笑い優也の方を向く。
「会長命令です!」
その後凛は自分の家の近くまで鞄を持たせた、ただひとつの気持ちからくる照れ隠し、恋愛なんてしたことない彼女は無意識に奥手であり、だれよりも純粋である。
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