11話 存在感を示せ!いざ取材!

 自主スペースの空き教室確保から3日が経ち、新聞部の取材が行われる日がやってきた。


「私の美貌全生徒にアピールします!」

「取材って言っても記事だけどな」

「ぬわぁん!もっと早く言ってくださいよ先輩!」


 理沙は持っていた手鏡を机に置き足をバタバタさせる、美咲はいつも通り紅茶を飲んでいるがどこかソワソワしている、そんな中凛と優也だけは落ち着いていた。

理沙以外は今回が初めてではない、というより前までは付きまとわれていたといっても過言ではないくらい新聞部とは縁がある。


 優也と凛は2年の頃に前会長が主催した全生徒テニス大会、バスケ大会、誰が一番頭いいかな?大会全てにおいて圧倒的なコンビ力で他の生徒を圧倒させた、それ以外にも卓球部に乱入してキャプテンやら部長やらを負かしたり、会長の無理な要求もこなすことから生徒会の双狂者と呼ばれていた。



 今でこそ2人は落ち着いている、そもそも前会長玲奈に問題があったわけだが。

見たいドラマがあれば他の役員に仕事を丸投げ、式やら行事の挨拶はだいたい代理で凛がでる始末、そんな彼女が会長になれたのはそれまでは文武両党のおしとやかな生徒だったからである、権力とは恐ろしいものだと当時の凛たちは思った。


「そろそろ来るんじゃないかな?」


 凛が壁に書けてある時計に目をやる、時刻は15時40分約束の時間だ。

そしてすぐに生徒会室の扉がノックされる、美咲が扉を開けて新聞部員に挨拶をして中に招く。


「よぉ双狂者!元気か」

「たったいま気分がわるくなったんだが」


 へらへらと笑いながら入ってきた茶髪の髪をした男子生徒、優也の友人である篠田拓夢がメモ帳とペンを胸ポケットから取り出しながら椅子に座る。


「まぁそういうなって、なぁ?」

「私は嫌いじゃないけどね」


 凛は双狂者という呼ばれ方を気に入っている、逆に優也はそうではないみたいだが。


「早速聞いたんだけど自主スペースを作るって本当?」

「えぇ、すでに教室は確保したしゆきてぃにも話した」

「まだその呼び方なんだな……」


 ゆきてぃとは生徒指導の小山雪乃先生のあだ名である、凛しか読んでないのだが小山先生は指摘するのが面倒で諦めている、雪とティーチャーを合わせ可愛くした呼び方である。


「理沙ちゃんはまだ自己紹介してないよね?3人は2年の時も役員だったから書いたことあるけど」

「そうですね、理沙ちゃんファイト!」


 美咲が両手をグーにして頑張れポーズをする。


「まずは生徒会役員になった動機を聞こうかな」

「はい!美咲先輩が可愛かったからです!」

「うん、わかる!次」


 美咲が顔を真っ赤にして小さい声で理沙ちゃん!理沙ちゃんと声を出している、当の本人には聞こえていないみたいだが。


「えー休日は何をしてますか?」

「アルバイトです!」

「なるほど、アルバイト先は聞いても大丈夫かな?」

「ダメです」

「素直で潔いね、嫌いじゃないよ」


 拓夢がヒートアップしているのを凛が感じ取る、普通の人なら戸惑うが理沙なら大丈夫だろうと楽観している。


「ずばり!現在彼氏は!」

「いません!」

「でも彼女なら!?」

「美咲先輩がいます!!」

「ちちちち、違いますぅ!!」


 勢いよく椅子から理沙の方にかけよって両手で口をふさぐ、顔面を真っ赤にしながらソファーでかわいらしい攻防が繰り広げられる。


「今回のタイトルは副会長のかわいいシーン取れましたにするか」

「や、やめてください!」

「私がメインですよ!!」


 そんなこんなで騒がしい取材はその後も続き、タイトルは可愛い子を求めて会計にというタイトルに決定した。


 


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