4話 強度のノックとギターの旋律

 黒川が立ち上げた助けるかどうかは俺らがえら部、通称すけら部(命名、理沙)と協力して昔の生徒会長が残したかもしれない物をさがすことになった。


「私たち暇人みたい」


 窓の外で走っている運動部を横目に美咲が言う、理沙は特に気にする様子はなさそうに歩く、凛は小声かつ早口で「いや、わたしは別にひまとかじゃなくってただ変な部活が悪さしてないか見てるだけだから、好奇心とかじゃないから」と長々と言い訳している、生徒会長が仕事そっちのけで校内散策ともなればプライドが傷つくのだろう。


「俺らが遊んでるみたいじゃないか、なぁ?音羽」

「依頼選んでる時点で楽しむこと前提な気がする」


 音羽の正論が黒川にダメージを……与えることはなく、開き直って「確かにな!ははっ!」と笑っている。


「と、着いたか」


 翔馬がとある教室の前で立ち止まる、そこは先ほどまで凛たちがいた生徒会室。


「まぁ一番ありそうなのはここだよな」

「私たち2年間くらい生徒会役員だけど、そんなものあったかな?」

「改めて探せば何かありそうですね」


 理沙が腕をまくって生徒会室に入る、書類棚を端から探すつもりらしい。


「俺らも探すぞ翔馬、音羽」

「あ、関係者以外立ち入り禁止です」

「事前にアポをお願いします」


 凛と優也に厄介払いのように扱われるすけら部一同、そして「悪いな」と真顔で一言放った優也がためらうことなく生徒会室の扉を閉めた。


「な、なぜだ……!俺らはともに財宝を求め旅した仲じゃないのか!?」

「違うぞ」


 翔馬が無慈悲に否定する、そして音羽が壁にもたれかかりケースからギターを取り出す。


「それではお聞きください、黒川隼の裏切られた日」

「歌わんぞ!!おいっ開けろ!俺も気になるぞ!」


 黒川の扉を叩く音と音羽のギター、2つの音が廊下に響く……怒りのノックと嘲笑のギター音。


「以上、裏切られた日でした」


 翔馬がイマジナリーギャラリーに深くお辞儀をしたのと同時に、部活動終了及び下校のチャイムが鳴り響いた。


***


 夕日が差し込む生徒会室で4人は例の物を探そうと、書類棚や机の引き出し、様々なところを探したが、下校のチャイムが鳴ってしまったため止む無く帰宅の準備を始めていた。


「また明日か」

「そうねっと……ありがとう」


 優也の投げた鞄を凛がキャッチする、そして美咲の傍に行き一緒に帰ろと誘う。

優也と凛の関係は彼らを知る人達からは説明しずらいと言われる、ともに戦ってきたスポーツのダブルスパートナーのような、ビジネスパートナーというにはお堅いが、互いに遠慮のいらない仲であることは間違いない、2人が知り合ったのはそれこそ高校生になってからな訳だが。


「橘君!凛ちゃんが一緒にっんん!?」

「い、一緒に……明日の作戦会議!そう明日の作戦会議するために帰ろう!ね?」

「お、おう……」


 照れた凛をただ不思議そうに眺める優也であった。

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