3話 奇人と生徒会メンバー
噂の真相を確かめるべく生徒会の4人は例の部活を尋ねた。
「開けるわよ……」
凛がまるで変人と会うかのような顔をしながら声をかける、他の3人が深く頷くのを確認し扉を開ける。
「よぉ〜こそいらっしゃーいませ!」
派手すぎない黒髪のショートレイヤー、羽織っている制服はご立派なマントが着いている、怒られていないのが不思議だと皆が思っている。
「おいお客さんだぞ!もてなせ!」
黒川が一声かけると中にいた2人がだるそうに腰をあげる、そしてそのうちの1人鈴村音羽がギターを手に取る、そして。
「らっしゃいませぇ……」
鳴り響く某便利店の入店音、そして深夜の勤務に疲れた店員のような声音で挨拶をした。
「おい、店長の俺がいるのになんだそのだらけた態度は?」
黒川たちの悪ノリが始まってしまった、生徒会メンバーは呆れたまま成り行きを見ている。
「その辺にしとけ隼、困ってるだろ」
「そうだな」
本を読んでいた1人の男子生徒、武田翔馬が悪ノリを止め、再び本を読み始める。
「要件はわかってるぞ、俺らが依頼を受けた話だろ?」
「そうよ、別に好奇心じゃないわよ?生徒会長としてちゃんと活動してるかーー」
黒川は皆まで言うなと手を前に出す、言葉を遮られた凛は少しムッとしてそっぽをむく。
「ちょうど俺も訪ねようとしたとこだ、この一件はお前たち生徒会役員に関係がある」
「私たちが?」
美咲が首を傾げる、黒川が不敵な笑みを浮かべ依頼文であろう文字を読み始めた。
「春華高等学校は誰かが後悔を書き残したノートが存在する、これが本当か確かめて欲しい」
「美咲先輩から聞きましたし私もその話は聞いたことあります!」
手を挙げて理沙がでかい声で告げる、ぴょんぴょんとはねて「私詳しいよ!」と言いたげなのを黒川が見て。
「ではそれが昔の生徒会長のものだということは知っているか?」
「し、知らないです」
「だろうな……」
論破したかのようにドヤ顔を決める、落ち込む理紗を美咲が優しく撫でている。
「櫻田凛、お前たちが探し出して見せろ、これはきっと過去の生徒会長からの試練だ!」
「依頼者は普通の生徒だけどな」
武田の無慈悲なマジレスが黒川ワールドをぶち壊す。
「と、とにかくだ、俺たちと共に探そう」
「どうしよう?」
優也は凛の問いになんで俺に聞くという表情を浮かべながら考え始める、生徒会のメンツで一番最初に突っ走るのは凛だ、面白いことや気になることには突っ込まずにはいられない性格、優也に意見をもとめること自体珍しいのだ。
「昔の生徒会長が残したかもしれないもの……俺は面白そうだなと思うけど」
凛が先に突っ走らないということはあまりそそられなかったからと考えながらも、優也自身は少し興味があった、それは単純に高校生男子の心をくすぐる浪漫というものから来ているのだが。
「そっか、私も少し気になるしやろっか」
凛はそう優也に耳打ちする、ただ単に黒川にはめられたみたいなのが気に食わないだけな凛、しかしあまりに突然の至近距離と甘い香りが優也を動揺させた、優也は「そうだな」と冷静な素振りで言ったあと、誰もいない方をじっと見つめていたのは少し赤くなった顔を隠すためだったかもしれない。
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