炸裂、ハイキック

逆上した五味山が、朱莉に向かって駆けていく。

だが、隼人は五味山の進路に立ちふさがり、顔面にキックをお見舞いした。


「ぶげではっ!?」


情けないうめき声をあげる五味山に対し、俺は冷静な口調で言う。


「やっぱ、そんなこったろうと思ったぜ。」


正直、話してもいない朱莉を好きになるほど恋愛感情が歪になっているこいつの様子と、こいつの正直キショい性格から、俺に負けて朱莉に手を出そうとすることは予想通りというか、むしろ良くここまで小悪党のムーブをかませたなというのが、率直な感想である。


「天田先輩に負けて、こんなことをするなんて……、心底、軽蔑します。」


言葉が柔らかめの朱莉でさえも、こんな風に言わす始末なのだから、もう接近を禁止するまでもなく、朱莉と関わることはないだろう。


「ぐぅ、ま、待って……!これは、単なる誤解で……」


まだそんなことを口走る五味山を置き去りにして、俺らはダンジョンを出ることにした。朱莉のトレーニングのつもりが、まさかこんな面倒な目に合うなんて……

初のダンジョンでイレギュラーな魔物に襲われたり、やはり自分には疫病神がついているんじゃないかと疑う隼人であった。


魔物の素材の換金や報酬などを受け取り、俺がギルドから帰ろうとしていると、朱莉が声をかけてきた。


「あ、あの……よろしければ、この後食事なんてどうでしょうか?あんな人に絡まれて、少し疲れたでしょうし……


ふむ、一緒に食事か……ってえぇ!?

もちろん、隼人は冒険者になることしか考えていなかったので、彼女いない歴=年齢である。

冒険者になった今の隼人にとって、この誘いには断るという選択肢が存在しなかった。


「迷惑なら、それでいいんです「いや、行こう。」


そして、二人で行く店を決めることにした。二人とも換金などをしたばかりで、懐には余裕があったが、高級店などは予約が必要だったため、結局近くのファミレスにすることにした。


今や国民的ファミレスとなっているゴストに行くと、ちょうど席が空いていたので、すんなりと座ることができた。


「ファミレスに来るの、すこしひさしぶりな気がします。」


「俺は一人暮らしだから、よくお世話になってる。」


「へぇ、先輩一人暮らし何ですか、いいなぁ。」


他愛もない話をしながら、俺はドリンクバーと唐揚げの定食を頼み、朱莉は

ドリンクバーにハンバーグにチキンのステーキ、それとカルボナーラを頼んでいた。


「朱莉、そんなに食べられるのか?」


「はい、自分、恥ずかしながら結構食べる方でして……実は、先輩をお誘いしたのも、お腹が空いて我慢できなかったからなんです……」


「いや、全然いいと思う。」


むしろありがたい。いや、そうじゃなくて。

いっぱい食べる女の子っていいよな……


そうこうしてるうちに料理が届き、冷めないうちに食べることにした俺達は、結局食べることに夢中で、あまり話すことができなかった。ダンジョンが終わった後の食事って、本当においしいのだ。


俺達は店の外に出て、駅まで歩くことにした。


「すみません、ご飯代払ってしまわせて……」


「いいよいいよ、そもそもこっちが勝手に支払っただけだったし。」


(朱莉がトイレに行った好きに、会計を済ませておいた。朱莉は自分の分は自分で払うと言ってきたが、男としてちょっと格好つけたく、受け取りを拒否した)


「今日は、大変でしたね。先輩も、家に帰ってゆっくり休んでくださいね?」


「わかってるよ。そっちこそ、もう無理はしないでな。」


街灯で煌めく夜の街に、二人の声が溶けていく。


新宿駅のプラットホームで、俺達は分かれた。なんだか、今日はいい夢を見れるような気がした。



その晩、俺は不思議な夢を見た。

死んだ母親と父親の顔が、何かを必死に訴えかけてくる。

しかし、俺の耳には何も届かない。


それがしばらく続いた後、ふっと視界がブラックアウトし、暗闇の中を歩いていると、光が俺の体を包んだ。

それと同時に、俺はベットから跳ね起きたのだった。  


「なんだ、変な夢を見たな……」


あくびを欠きながら、俺は朝食の準備をする。

ベーコンとパン、それにキャベツとトマトのサラダを用意した俺は、あることを思いつく。


「この料理、結構うまくできたな。アーレとフローラにも、食べさせてやりたいなぁ」


そう俺が呟くと同時に、目の前に黒い空間が現れる。


「……え?」


「おい、何だここ!?」


「なんでダンジョンじゃないのに、目の前にマスターがいるの!?」


そう、俺は現実世界でモンスターを召喚した。

いや、召喚できてしまったのだ。

現実世界でモンスターが召喚できるという事は、その逆も然り……

最悪の想像を頭がよぎる中、唐突に窓ガラスが誰かによって破られる。


「な、何だぁ!?」


俺が驚愕の声を上げる中、窓ガラスを破ったそれはゆっくりと家の中に入っていく。


そこにいたのは、巨人の魔物であるトロール。


あぁ、最悪な想像が、当たってしまった。

前にいる魔物を目の前にして、俺は叫ぶ。


「なんで、こっちの世界に魔物がいるんだよぉぉぉぉぉ!?」







ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

本作はパロディを多く含むため、了承して楽しめる方のみ読んでいただけると幸いです。

次回から、新章に突入します。

この先、主人公はどうなるのか。大食いで責任感強めで可愛い女の子である武器屋の娘の朱莉の属性が、これ以上盛られることはあるのか。

キャラクターたちの運命を、是非見守ってください。

また、応援コメントや★、フォローなど大変励みになりますので、是非お願いします。

それでは次回もよろしくお願いします!

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