始まる災害
「な、なんで地上に魔物がいるんだよぉぉぉぉぉぉ!?」
隼人の怒号が部屋に響き渡る。今の理不尽な状況に対しての怒りが、隼人の胸に込みあがって来ていた。
アーレとフローラが召喚できる?そりゃあそうだろう。だって、この場所、あるいは日本全体、あるいは世界全体がダンジョンのようになっているのだから、ダンジョンという事は、魔物も当然いるという事で。
「くそ、よりによって相手がトロールかよ!」
今部屋に侵入してきた魔物の名前は、トロール。 Bランクのモンスターだ。
当然、今まで戦ってきたモンスターとは、文字通り格が違う。
「おぉりゃぁぁぁぁぁぁ!」
アーレが声を上げながら、果敢に突進していく。だが、無謀にもほどがあった。
「グハハハハギャギャギャギャ!」
「なっ!?」
トロールが、防御することもなく腕でアーレの一撃を受け止める。
そして、アーレの首をつかみ、投げ飛ばして見せた。
「グボォッ!?」
潰れたカエルのようなうめき声をあげながら、アーレが壁に激突する。
力なく倒れたアーレを、みて、俺はすぐさま召喚を解除した。
「と、とりあえず逃げるぞ!」
このままでは、本当に命が危ない。そう思った俺は、逃走を開始した。
「くそ、あいつ速すぎだろ!?」
俺がマンションの扉を開け、外に出たころには、マンションが半壊していた。それでもなお、トロールは追ってくる。
必死で逃げていた俺だったが、トロールに回り込まれてしまった。
「くそっ、ここまでか……」
俺は何かないかと周りを見渡す。そうすると、後ろにある魔物がいるのが見えた。
(あいつを使えば……もう、やるしかない!)
そう思った俺は、全身全力で、その魔物に突撃していった。
その魔物の名は、テレポーター。四足歩行をしている動物型の魔物で、自分が危害を加えられそうになると、相手をダンジョン内のどこかに飛ばし、逃げ出す厄介な魔物だ。
「グギャギャギャ!」
俺が逃げ出そうとしていることに気づいたトロールが、こっちに駆けてくる。
しかし、もう遅い。俺はテレポーターの顔に、全力で殴り掛かった。
瞬間、俺を光が包み込む。俺が宙に浮くと、その光が空へかけていった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!?」
光が地面に衝突したと思うと、俺が地面に投げ出される。どうやら、逃げ切ったらしい。
近くにラジオが落ちていたので、好都合だと思い聞いてみる。
ー今、地上にモンスターが現れるという、未曾有の大災害が発生しています。
避難の手が回っているのは、目黒区、品川区、新宿区……
お、新宿区があった。多分、朱莉と爺ちゃんは大丈夫だろう。ここが日本だという事も分かったし、大きい収穫だ。
「とりあえず、魔物たちを召喚しないとな……来い、アーレ、フローラ!……ん?」
召喚をしようとして、俺は違和感を覚えた。普段は、召喚の時に何かを手繰り寄せるような気がして、その後魔物たちを召喚するものだが……今回はそれがなかった。
嫌な予感がして、俺はもう一回叫ぶ。
「こ、来い!アーレ、フローラ!」
だがしかし、何も起きない。最悪の事態は、最悪の事態の後に起こるのだと痛感することになった。
「アーレとフローラが、召喚できない!?」
そう、テレポーターに飛ばされたとき、魔物と距離が離れたせいで、召喚ができなくなってしまったようだ。
魔物たちとの繋がりは微かに感じるのだが、それを引き寄せることはできない。
俺が絶望に打ちひしがれていると、近くの茂みががさがさとなった。
「ま、まさか、魔物か……?」
この茂みを魔物が揺らしたのであれば、俺はすぐさま命を奪われることになる。
茂みをそっと覗いてみると、そこには、一羽の黒い鳥がよこたわっていた。
「こいつは……ブラックバードか?」
ブラックバード、Fランクのモンスター。
戦闘面での強さはないにも等しいが、仲間が誰も居ないよりはましだろう。
そう考えた俺は、持っていたティッシュで鳥の血を拭き、けがの処置をしてやった。
「ピピイ?」
ブラックバードが目を覚ます。自分のけがが治っているのを見て、俺の肩に飛び乗ってきた。
(主従関係の締結を確認。)
声が脳内に響き、主従契約が結ばれる。
これで、ブラックバードは俺の仲間になった。
少し安心していると、一体のゴブリンが飛び出してきた。
「ま、まずい!」
今の状況では、ゴブリンにも殺されかねない。自分の力の無さを思い知ると同時に、ブラックバードを守らねばという意思に駆られた俺は、逃走を開始しようとした。
だが、ブラックバードがゴブリンへ飛んでいった。
「ピピイ!」
「おい、無茶だ!お前の力じゃ、ゴブリンには勝てない!」
しかし、次の瞬間、ブラックバードが羽をはばたかせ、風の魔法を使う。
「グギャ!?」
目を潰されたゴブリンが、うめき声をあげる。その隙に、ブラックバードがゴブリンの脳をつつき、絶命させて見せた。
「ピピイ!」
自慢気に胸を張るブラックバードと対照的に、俺は内心かなり驚いていた。
「ス、ステータス!」
と俺が叫ぶと、ブラックバードの目の前に大きな板が現れる。
そこに書いてあった内容に、俺は目を見開く。
夜雀 ランク:D
力:D
魔:D
知力:E
俊敏:C
スキル:夜の羽:(羽をまき散らし、触れた相手に呪いをかけ、少しずつ衰弱させる。)
風魔法(風を操り、物を吹き飛ばす、魔物を切り裂くことができる。)
黒鳥の爪(闇属性の魔力をまとった一撃を繰り出す。また、これを応用して身体の強化もすることができる。)
(ブラックバードじゃなくて、夜雀……だと?)
ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます!
本作はパロディを多く含むため、了承して楽しめる方のみ読んでいただけると幸いです。
また、テストにより更新が大幅に遅れてしまったこと、大変申し訳ありません!
また、応援コメントや★、フォローなど大変励みになりますので、是非お願いします。
それでは次回もよろしくお願いします!
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