朱莉の魔物
「じゃあ、朱莉のモンスターを召喚してくれ。」
「はい、分かりました。……来て、ウィッチ、スライム!」
朱莉の声に伴い、二匹の魔物が召喚される。
「あの後、大丈夫だったの?ご主人。そして、その男は誰?」
「ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる…」
ウィッチとスライム、この前ボスの部屋で倒れていた二匹。
どちらも短期決戦系のモンスターなので、動物系のモンスターや、防御が薄いモンスターは手玉にとれる反面、ゴーレムのような耐久型のモンスターに弱いという明確な弱点がある。
そう、例えるならば、MOBAのゲームで、スピードタイプのキャラクターだけで編成してるようなもんである。
いつかタンクのようなモンスターを入れて、バランスがとれるようにしたいのだが……
思考を巡らせつつ、俺は二匹のモンスターに対して話し掛ける。
「おれはお前らのマスターの友達。これから一緒に潜る機会も多くなるだろうから、よろしく。」
「ふ~ん、なるほどね。」
「ぷるぷるぷる……」
「ちょっとあなたたち、なんか変な勘違いしてない!?」
「まぁ別にいいさ。そんなことよりも、戦闘を見せてくれるかな?」
「う~ん、それもそうですね……」
そこに、一体の魔物が飛び出してくる。
リリパット、弓を使って攻撃してくる魔物だ。
「丁度いい、あれを倒してくれるか?」
「了解です。ウィッチは魔法で牽制、スライムは後ろから絞め殺して!」
朱莉が指示を出すと、ウィッチとスライムが素早い動きで行動する。
「ライトニング・スピア!」
ウィッチが雷の槍を発生させ、リリパットの矢を打ち消し、顔に当てる
「ギャアッッ!?」
転んだリリパットに忍び寄ったスライムが、リリパットの顔に張り付く。
「モガッッ!?モガ……」
だんだんとリリパットの断末魔が小さくなり、やがて息絶える。
「これが、私たちが普段使っている戦法です。」
率直に言うと、強い。特に、ハマる相手には。持久力がないという弱点を、短期決戦でカバーしている。
でも、明確な弱点を抱えている。
「弱点は二つ。
一つ目は、距離を詰められると無力だという事。今の相手は遠距離タイプのリリパットだったらよかったけど、ガンガン距離を詰めてくる相手には勝てない。多分、今の編成だとうちのオークが片手を使わなくても全滅させられると思う。」
一呼吸置き、さらに俺は続ける。
「二つ目は、呼吸をしない無機物系の相手には、スライムの窒息には頼れないという事だ。」
モンスターは、大きく三つの種類に分けられる。
一つは、動物系のモンスター。オークやマンドラゴラなどがこっちに入る。
一つは、異形系のモンスター。スライムや鬼、ゴブリンなどが代表的だ。
最後の一つは、無機物系のモンスター。呼吸などをせず、魔力で動いている。この相手には、朱莉の戦法が通用しない。現に、朱莉はゴーレムに敗北している。
勿論、他のケースもあるのだが、大きく分けてこの三つだ。
つまり、問題は、戦法が効かないモンスターが多すぎるという点だ。
この前は俺が助けに入ったが、いつも俺が傍にいるとは限らないのだ。
このことを俺が伝えると、朱莉は悩みの表情を見せた。
「分かってます……、私のパーティーは、振れ幅が大きい。
一体、どうすればいいんでしょう?」
「まぁ、それは新しいモンスターを増やしたり、スキルを獲得させたりで解決できる。焦らず、じっくりやっていこう。
しばらくは、俺と一緒にダンジョンに潜ることになる。一人で行かないように。」
「はい、分かりました……」
まだまだ道は長い。とりあえず、このダンジョンを早く踏破してしまおうか……
(五味山side)
(くそっ、何であいつが朱莉ちゃんのそばに居やがる!?)
五味山修は、心の中で大きく怨嗟を挙げていた。先程、隼人を睨んでいた男、五味山修は、自分が思いを寄せる朱莉が隼人と話していることに、大きな不満を抱えたようだ。
一応言っておくと、彼は朱莉の友達、まして恋人でもなんでもない。もはや、朱莉に認知されているかどうかもわからない。
(天田の野郎、絶対に許さねえ……!、俺の可愛い朱莉ちゃんを奪いやがって……!)
つまり、彼の隼人に対する思いは、完全なる逆恨みなのである。
だが、そんな性格をしているが故に、彼の周りには人が集まらず、目立つために冒険者を始めても、クラスメイト達に見向きもされないという時代に陥っているのである。
(糞糞糞くそ!!こうなったらもう、あの方法しかねぇ!)
そう言って彼は、ダンジョンに向かう。
彼を勝負で任して、朱莉を隼人の魔の手から救い出すために、これは正義の行いなのだと信じて。
(待っててね、朱莉ちゃん……!いま、僕が隼人なんて言う糞野郎から助け出してあげるからね!お礼は、朱莉ちゃんでいいよ、なんちゃって……)
下卑た妄想をしながら、隼人たちがこの後潜るダンジョンのゲートに足を踏み入れる。。
自分は正義の味方だから、隼人なんかより全然強いのだと……
隼人がこれまで死線を潜り抜けていたとも知らずに。
ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。
本作はパロディを多く含むため、了承して楽しめる方のみ読んでいただけると幸いです。
今回は、ラブリーチャームな魔法使い、フローラの紹介です。
フローラ
ヒールハイピクシー Dランク
好きな食べ物 隼人がたまに持ってくるチョコのお菓子
なまじ顔が整っており、外国人のような髪の色をしているため、プリティでキュアキュアな戦士たちに似ている。
最近起こったこと 隼人が料理をしている鍋に美味しくなると思ってチョコを入れ、こっぴどく叱られた
また、応援コメントや★、フォローなど大変励みになりますので、是非よろしくお願いします
それでは次回もよろしくお願いします!
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