後輩とダンジョンはデートに含まれるのだろうか

「天田先輩、居ますか?」


昼の休み時間の喧騒に包まれる二年D組の扉を開け放ったのは、如月朱莉だった。

端正な顔立ちにクラスメイト全員が注目する中、俺は席を立つ。


「おぉ、朱莉。用事か?」


「あ、はい。武器が完成したので、今日ダンジョンでお渡ししたいんですけど……

そういえば、さっきから心なしか視線が集まってませんか?」


そりゃそうだろう。いきなり現れた美少女が、陽キャでもない普通のクラスメイトと話しているんだから。

この人間、自分が可愛いという所を自覚していないところが一番悪いところなのだ。


「場所はこの前のダンジョンでお願いします。それでは、また放課後に。」


彼女が去っていった途端、今まで彼女に向けられていたクラスメイト全員の視線が俺に向けられる。


「お前、一年生の中で一番可愛いと言われてる如月さんと知り合いなのかよ!」


「やっべぇ、俺も冒険者なろうかな……」


皆が口々に騒ぐ中、俺はある視線に気付き、その視線のもとをたどる。


(あいつの名前は……確か、五味山だっけ?)


五味山修(ごみやま しゅう)、確か冒険者の資格を持ってたはずだ。それなのに、驚くほどクラスから注目されず、彼への関心はたった三時間で冷めてしまったはずだ。

見ると、俺に対する敵意……いや、殺意?を込めた視線が送られている。

俺がじっと見つめていると、五味山は視線をそらした。


(まぁ、いいか。)


俺は特に気にも留めずに、ダンジョンのことを考えた。

あいつら、新しい武器気に入るかなぁと、思いを馳せる。



放課後、俺はいつもの新宿のギルドに来ていた。

ギルドの扉を開けると、朱莉が駆け寄ってくる。

手には随分重そうなアタッシュケースを持っている。

「ごめん、待たせたか?」


「いえ、大丈夫です。今来たところなので。」


と、付き合いたてのカップルのような会話を交わし、隼人たちはダンジョンのゲートをくぐる。


「よし、では早速武器をつけてみましょう。先輩の魔物を召喚してください。」


朱莉にそう言われ、隼人はアーレ達を召喚する。


「ん、武器が届いたのか?」


「そういえば、この前いろいろと調査されたわね。」


「あぁ、武器が届いたぞ。」


朱莉がアタッシュケースを開け、中から武器を取り出す。一つはオーク用のどでかい斧。某モンスターを一狩りするゲームで出てきそうな大きさだ。

渡された斧を、オークが取り出す。


「おぉ、見かけによらず軽いんだな、この斧。ん、取っ手についてるこのボタンは何なんだ?」


「このボタンはですね……こうすると、ほらこの通り!」


朱莉がボタンを押すと、斧の取ってから鎖が伸びる。


「このように、遠くの敵に斧での攻撃を充てることが可能になります。遠距離のフローラさんがいるので、これで中距離も補えるかと。」


ほぉ、やっぱりいろいろ考えてるんだな。確かに、斧での攻撃を逃げる相手に使ったり、遠心力を乗せることができて、良い武器だ。


「ねぇねぇ、私のは!?」


さっきまでじっとしていたフローラが、待ちきれないといった様子で聞いてくる。

多分、アーレが新しい武器をもらったのをみて、自分がどんな武器を貰えるのか気になったのだろう。分かりやすい奴だ。


「魔法を主に使うフローラさんには、こちらを用意させていただきました。」


朱莉がそう言うと、フローラサイズの腕輪を出す。


「これは、魔法使用時の必要魔力量を減らし、魔法の制度や飛距離などを伸ばす補助効果のある腕輪です。」


さらに、と朱莉が一呼吸おいて伝える。


「魔法の効果を複合させることができる効果もあります。まぁ、こちらは使ってみた方が分かりやすいと思います。」


「へ~、楽しみ。もとから強い私が、さらに強くなったらもう敵なしね!」


おいおい、あんまり調子に乗るんじゃないぞ。


「それでは武器の紹介が終わりましたので、そろそろ行きましょうか。ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします。」


「あ、あぁ……」


正直、こっちは冒険者を始めたばっかりで実践はあまりしたことがないので、正直教えるのは不安だ。でも、好きな冒険者のダンジョン配信や、戦術について書いた本はいくつか読んでいるので、教えられるといいな、と願いつつ隼人たちは奥に進むことにした。


取り敢えず、俺たちの武器を試すことから先にやらせてもらうことにした。

目の前の魔物は、ゾンビとヌエ、どちらも固く、タフな魔物だ。

しかし、俺たちの敵ではない。


「アーレはゾンビを、フローラはヌエを攻撃しろ!」


簡潔な指示に従い、アーレとフローラは攻撃を開始する。

フローラが魔力を練る間、アーレが前を張って攻撃する。

本来ならば二対一で不利なはずだが、ハンデなど物ともせずにフローラを守っている。

そして、フローラが魔力を練り終わった。


「行くよ、どいて!」


アーレが横に回避し、フローラが魔法を打つ準備が整った。


「フレイム・レイ!」


そして、炎をまとった光の矢が、ヌエとを焼き尽くす。

勝てないと判断したのか、ゾンビが背を向けて撤退する。ゾンビのわりに足が速い。どうやら最近の走るタイプのゾンビだったようだ。しかし……


「もう遅せぇよ!」


アーレが振るった斧が、鎖の遠心力を持ち、ゾンビに襲い掛かる。

ゾンビの背中を切り裂き、戦闘が終わった。


「凄い……ほぼ完璧な戦闘でしたね……


朱莉が感嘆の声を漏らす。


「今ので分かっただろ、俺達が指示することは、大まかな流れだけ。あとは、カードを信じることが大切なんだ。」


そう、俺はほぼ何も指示していない。強いて言えば、どっちがどっちを攻撃するか程度だ。


「その大まかな流れをすぐに指示するために、魔物などの知識を付けておかなくちゃならない。朱莉の実家なら、魔物に関する本があると思うから、是非読んでみてくれ。」


「はい、分かりました。」


後は彼女がモンスターを召喚し、実戦経験を踏むためだ。


二人と二匹のモンスターは、今日もダンジョンの最深部を目指すのだった。






ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます!

本作はパロディを多く含むため、了承して楽しめる方のみ読んでいただけると幸いです。

今回は主人公のモンスター、オークのアーレです。


アーレ

オーク、ランクD

好きな食べ物 隼人が作ってくれた鳥のスープ

使用武器:斧

最近起こったこと:隼人とフローラと一緒にご飯を食べていたら、毛皮がもふもふだという理由で枕代わりにされた。

戦闘は得意だが、おおざっぱな性格をしている。

オークだが、敵のオークでも多分ためらいなく殺せるタイプ。



また、応援コメントや★、フォローなど大変励みになりますので、是非お願いします。

それでは次回もよろしくお願いします!

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