武器工房に行こう!

行方不明の少女を助けてから六日後の土曜日、俺は武器工房「如月工房」

に足を運んでいた。

見ると、その工房はダンジョンの中に作られていて、魔物の召喚ができるようになっている。


「すみません、天田です。」


中に向かってそう呼びかけると、工房内からドタドタと走る声が聞こえた。


「天田君!来てくれたんだね。中にどうぞ。」


そうして俺は案内され、仕事部屋に通された。


「ここで僕たちは武器を作っているんだ。早速だけど、君のモンスターを召喚してくれるかい?」


「分かりました。」


そして俺はアーレとフローラを召喚する。


「オークのアーレと、ヒールハイピクシーのフローラです。良い武器を作ってやってください。」


「分かった、全身全霊で臨ませてもらうよ。身長を図ったり、魔法を見せてもらったりして作る武器を決めるから、そこの客間で待っていてくれるかな。多分、娘もいるはずだ。」


誠さんが指さした方向を見ると、大きな襖があった。

その襖を開くと、中には机といす、お茶と茶菓子がある。

そしてそこには、前にダンジョンで助けた行方不明者の女の子がいた。


俺が座ると、女の子は口を開く。


「以前、大変お世話になりました。ここの娘、如月朱莉(きさらぎ あかり)です。本当に、助けてくれてありがとうございました。」


静かで、鈴を転がしたような声色で彼女が言う。


救助したときは必死で分からなかったが、彼女の顔は瞳も大きく、和風な顔立ちにボブの黒髪がよく似合っている。

端的に言うと、かなり綺麗だ。


「?……どうかしましたか?」


じっと彼女を見つめている俺のことを疑問に思ったのか、尋ねかけてきた。


「い、いやなんでもない。朱莉さんは、あの後大丈夫だった?」


「幸い命に別状はなく、後遺症も残りませんでした。それと、私の方が一つ年下なので、朱莉と呼んでもらって大丈夫ですよ。」


「あ、あぁ。じゃあ、朱莉。これでいいかな?」


「はい、大丈夫です。」


他愛もないやり取りの後、俺は気になっていたことを彼女に問う。


「唐突で済まないんだけどさ……なんで、あの時ゴーレムに挑むような無茶をしたの?」


そう、彼女はダンジョンから脱出できるアイテム、逃走瓶を持っていた。

それにも関わらず、自分の魔物に相性が悪いゴーレムに挑んだ理由を知りたかった。


「……」


気まずい沈黙が流れる。


「別に無理して言わなくたっていい。でも、何か悩みを抱えてるのかなって思ったから、さ。」


俺がそう言うと、彼女はフッと息を吐く。


「いいえ……話します。」


少し間を置き、朱莉がポツポツと話し出す。


「私の両親が経営してるこの工房は、昔は冒険者御用達の名店、密かに繁盛してたんです。でも、最近の冒険者は、武器などを使わず、強いモンスターを使ってモンスターが生まれた時から持っているスキルや、魔法を駆使して戦う人が多くなりました。」


「そうなると、必然的にうちの売り上げは落ちていきます。

経営不振に溜息をついている父の顔を見て、どうにかしてまたこの店を繁盛させたいと思うようになりました。

それで、武器を使えば相性の悪いモンスターにも勝つことができると世間に証明しようと思いました。」


「でも、焦りすぎたみたいです。結果はゴーレムに惨敗、あなたに迷惑をかける羽目になってしまいました。」


馬鹿みたいですよね、と朱莉が自虐的な笑みを漏らす。


「いや、全然そんなことないと思うぞ?」


「え?」


俺は正直な感想を漏らす。


「だって要約すると、親を助けるために無理をしちゃった、って話だろ?裏を返せば、責任感が強い故の行動だとも言えるだろ。」


「でも、結局は失敗したんですよ?これじゃ意味ないでしょう?」


「それは結果論だろ。ただやり方がちょっとばかし悪かっただけだ。

 やり方を見直せば、きっとこの工房にも利益を与えられると思うぞ?」


「やり方が、悪かっただけ……、面白い考え方ですね。」


フフ、と彼女が小さな笑みを漏らす。


そこへ、誠が部屋へ入ってきた。

「待っていてくれてありがとう。

 いいデータが取れたよ。」


「それじゃあ、そろそろお開きにしましょうか。私、見送ります。」


そうして俺と朱莉は玄関を出る。俺が門を出て、朱莉に背中を向けるとほぼ同時に、朱莉が口を開く。


「あの、今度一緒にダンジョンに潜りませんか?武器も届けたいですし、戦い方も教えてもらいたいです。もちろん、そちらが良ければの話ですが……」


きっと勇気を振り絞っていっただろう彼女の言葉。朱莉の姿は、心なしか不安げに見えた。


「あぁ、良いよ。詳しいことは学校でな。」


その瞬間、朱莉の顔がぱぁっと明るくなるのがわかった。

なんだこの生物、とても可愛い。


「はい!よろしくお願いします。」


そして、俺は今度こそ帰路に就くのだった。








ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます!

本作はパロディが多く含まれるため、了承して楽しめる方のみ読んでいただけると幸いです。


今回のプロフィールは、この作品のヒロイン枠、朱莉です。


如月朱莉 十五歳

人間

血液型 A型

好きな食べ物 あんみつ(こしあん)

趣味 釣り

誕生日 四月十五日

好きな動物 燕(本人曰く、子供に餌を口移しで上げてる姿が可愛いらしい。)

昔繁盛した工房の一人娘。親の遺伝子を受け継いだのか、かなり美形。責任感が強い。

得意な科目は国語、社会、英語。それと副教科全般。(理科と数学は平均より少し上くらい)


また、応援コメントや★、フォローなど、大変励みになりますので、是非お願いします。

それでは次回もよろしくお願いします!

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