閑話休題 祖父の家

行方不明になっていた少女を助けた二日後の学校帰り、おれは祖父の家に来ていた。といっても、都内だから割とすぐに行けるのだが。

武器工房に行くのは週末にすることにした。多分、時間も必要だろうし。


祖父の家の扉をガラリと開ける。


「爺ちゃん、久しぶり。帰ってきたよ。」


「おぉ、隼人か。しかし、帰ってくるっていっとった日は今日だったかのう?」


「今日って電話で伝えたでしょ」


爺ちゃんは大分ボケてしまっている。今年で七十二歳だし、しょうがないのかもしれない。ただ、日常や過去のことを忘れていく爺ちゃんを見ると、一抹の寂しさを覚えてしまうのは、仕方のないことなのだろうか。


緑茶を用意し、爺ちゃんと机に向かい合って座る。


俺が出した緑茶を飲みながら、のんびりとした様子で祖父が問う。


「そういえば、冒険者の方はどうだい、順調かい」


「あぁ、特に怪我もせずにできてるよ」


「そりゃよかった。」


そんな他愛もない話をしていると、爺ちゃんは急に真面目な顔つきになって言う。


「チビだったお前が、勇敢な冒険者になってなぁ。お前の両親たちにも、自慢できそうだよ。」


「まだ死なないでしょ」


「予定じゃ。」


やっぱり、爺ちゃんは年々衰えてきている。物忘れもひどくなっているだろうし、腰も良くなさそうだ。それでも俺と一緒に住むことを拒むのは、俺に窮屈な思いをさせないためだろうか。

爺ちゃんのやさしさが心に沁みる。


「そうじゃそうじゃ、お前に渡すものがあったんじゃった。」

そういうと祖父はおもむろに立ち上がり、のそのそと自分の部屋へ向かっていく。

少しして、祖父が戻ってきた。


「これ、お前の両親からの手紙じゃ。少し前に整理してたらでてきてのぉ、お前に渡すことにしたんじゃ。」


祖父の手から手紙を受け取り、中身を読む。


‐拝啓、未来の息子へ

おじいちゃんの家に預けてきたこの手紙を読んでいるという事は、私たちはもうこの世にいないでしょう。

なんてそれらしいことを書いてみたけど、やはり慣れないものね。

あなたのお爺ちゃんには、私やお父さんが、あなたより先に天国に行ってしまったときに、機会を見て渡すように頼んでおきました。

まぁ、ガサツなおじいちゃんのことだから、きっと忘れているでしょうけど。

隼人は、もう子供の時からかっこいいものが大好きだから、将来は電車の運転手、もしかしたら冒険者なんかになってるかもしれないわね。

あなたは、きっと人を助けられるような、立派な人間になっていると思う。

だから、私達が死んでしまっていても、その心は失わないで。

あなたの為にそれらしいものは用意できないけど、この手紙を書いてみました。

頑固なおじいちゃんのことだから、きっとあなたに迷惑をかけてしまうと思って、一緒に住みたがらないでしょう。

それならば、あなたはお爺ちゃんに頼ってもいいから、しっかり自炊をして、部屋を掃除して、しっかりした生活を送ること。

それができていれば、私たちは安心して天国で暮らせます。

だから、すぐにこっちには来ないでね。

母親より




俺はこの手紙を読み終わったとき、少し涙ぐんでしまっていた。

祖父は、俺が冒険者になることを少し危惧していた。きっと、この手紙を読んだのだろう。

俺が冒険者になって、身の危険にあったら、天国の娘に顔向けできないと思って。

だから、俺にはこの手紙を読ませなかった。

きっと、冒険者になろうとしている俺の足枷になってしまうと思ったから。


そう思い祖父の方を向くと、微かに笑いかけてきた。


「なんじゃ、男がそんな顔をしよって、しゃんとせんかい」


そういう祖父も、目尻に涙が浮かんでいた。




祖父の家を出て、家に帰る。

そしてベッドに横たわり、思いをはせる。

母さんと、父さん。俺が八歳のころに、交通事故にあって死んでしまった。


両親が鬼籍に入り八年、家で留守番をしていたら、知らないところで両親が死んでいた。そんな幼いころの恐怖を、今でも思い出す。


俺は、葬式で泣くことができなかった。むしろ、自分を勝手においていった両親を、憎いとも感じていた。

そんな俺に唯一優しくしてくれたのが、爺ちゃんだった。


爺ちゃんは俺が高校に入るまで、一人で面倒を見てくれた。祖母はもう他界してしまっていたため、男で一人で……





そんなことを考えながら、俺はベッドの上で目を閉じる。


この日を境に、隼人はダンジョンの探索をとても慎重にするようになったのだとか。







ここまで読んでいただきありがとうございます!

本作はパロディを多く含むため、了承して楽しむことのできる方のみ読んでいただけると幸いです。

今回から、このスペースでキャラや魔物の紹介をすることにしました!

今回は、本作の主人公である隼人です!


天田 隼人 十六歳

人間

血液型:O型

好きな食べ物:ポンデケージョ(セ〇ンで売ってるもちもちのチーズパン)

趣味:ダンジョン探索

誕生日 九月七日

好きな動物:プレーリードッグ (本人曰く、立ってる時が可愛くて良いらしい)

冒険者の試験の勉強に時間を費やしながら、編差値高めの高校へ入学できたので、かなり地頭がいい。

八歳の時に両親が交通事故で他界、祖父に育てられる。



こんな感じでキャラの紹介をしていきたいと思います!

これからどんどん新キャラが増えていく予定なので、ゆるっと見てくれると嬉しいです!

また、応援コメントや★、フォローなど大変励みになりますので、よろしくお願いします!

それでは次回もお楽しみください!


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