ボスの部屋、そこで起きる災難

食事を終わらせてから1時間後、彼らは大きな扉を前にして立っていた。


「ここが、このダンジョンのボス部屋か……」

「間違いないわ。今までより強い魔物の気配がするもの。」


ようやくボスの部屋にたどり着いた一行は、来るボス戦に向けて、心と体の準備を行っていた。


「よし。お前ら、これからボスの部屋に突入するぞ。準備はいいか?」

「こっちは準備できてるぜ。」

「私も終わったわ。あとはボスを倒して帰るだけよ。」


「よし!それじゃあ行くぞ!」

隼人はそう言い放ち、ボスの部屋の扉を開け放った。


扉の先には、いかにも番人というような緑の鬼が立っていた。

その魔物の名前を、隼人は知っていた。


「あいつはハイゴブリン!Eランクの魔物の中でもかなり強いほうだから、気をつけろ!」

これまではFランクの雑魚的だったのに対し、このボスはEランク。文字通りこれまでとは格が違う相手に、全員に緊張感が走る!


まず最初に動いたのはヒールピクシーだった。魔法のファイアを発動し、ゴブリンの視界をふさぐ。

その隙に、オークが筋肉増強によって力を溜める。


「グギャギャギャギャ!!」

ハイゴブリンもこのままでは危ないと感じたのか、一気に距離を詰めてきた。

「もう遅ぇよ!」


すでに力を溜め終わったオークの迎撃に、ゴブリンが吹き飛んでいく。

「グギャアアアアアア!!」

壁に激突したゴブリンは、そのまま魔石と素材を残して消えていった。


「……終わりか?」

あまりに呆気ない勝利に、隼人は拍子抜けする。

(まぁ、相手とはランク差があったし、こんなもんか。


次はもっと難しいダンジョンを攻略するのもありかもな……)

そんなことを考えながら、ひとまず二人にねぎらいの言葉をかけることにする。

「やったな。みんな、お疲れ『グギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!!』

だが、ねぎらいの言葉は大きな咆哮によって遮られる。


「な、何よこれ!?」

あまりの声量に耳をふさいで蹲ったヒールピクシーが言う。

「これは・・・ッ、ダンジョンの本当の主が現れやがった!」


通常的には、ダンジョンの主は一匹である。しかし、ごく稀に通常のボスとは違い、強いボスが住んでいる場合がある。

合計で何回クリアされたかなど、その主が出てくる条件は様々なので、ギルドも感知できない場合が多い。

それ故に、すべての冒険者に恐れられている現象なのである。


そして数秒後、部屋の中心に大きな黒い穴が開き、そこから巨大なゴブリンが出てくる。

「まさか、あれはゴブリンジェネラル!?」


ゴブリンジェネラル。ゴブリンキング、ゴブリンクイーンに続くゴブリンの上位種で、Dランクの中でもかなりの強さを誇っている。


「よそ見してる場合じゃねぇ!来るぞ!」

そして戦いの火蓋は切って落とされた。

ゴブリンジェネラルが一気にオークとの距離を詰める。

そして、もっていった棍棒でオークを乱打し始めた。


「ギャギャギャギャギャギャギャギャ!!!!」

愉悦に染まった表情で乱打を続けるゴブリンに、オークは必死に反撃を続けている。


しかし、ジリジリと壁に追い詰められ、ダメージも蓄積していった。

ヒールピクシーも回復と炎で必死にオークの手助けをしているが、応戦虚しくオークの武器が吹き飛ばされてしまう。


「くそ、まずい!」

そしてオークの斧が吹き飛ばされ、ハイゴブリンの殴打を受けたヒールピクシーが地面に転がる。




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