03 ドラグレシアがご満悦のところに勇者のパーティが攻めてきて

 火の国フレイガルド――


 ここは火の属性を持つドラゴンの種族の国だということだ。


 ドラゴンの中にはさまざまな属性の種族がいるらしいが、先の大戦とやらで火の種族が勝利し、ドラグレシアはドラゴン属の頂点に立つ称号「竜帝」を名乗っているのだとか。


 ふむ、なるほど。


 どうせ取り入るのなら、強いやつのほうがいいだろう。


 しょっぱなからついてるかもしれないぞ。


 で、いま俺は、そのフレイガルドにあるドラグレシアの居城「グレンゲリア城」で、彼女の相手をしているというわけだ。


 グレンゲリアって「紅蓮華」とかぶってるが、まあ偶然だろう。


 火っぽい名前って、どこでも共通なのかも。


「ふむ、この炎という歌もよいな。われはすっかりリサの虜ぞ。カイトよ、もっとだ。われにもっと、リサの歌を聴かせるのだ」


「はっ、ドラグレシアさま」


 俺は「カイト」と呼ばれ、すでにドラグレシアの召使いのような立場になっている。


 彼女の部下も丁重にもてなしてくれるし、うまい飯にもありつけた。


 うん、悪くない。


 神さまからの指令、この世界「アマデウス」を音楽で満たすということも、案外早く達成できるかもしれないぞ。


 おや――


「陛下、たいへんでございます!」


 ドラグレシアの腹心、コルネリオスがこっちへやってくるぞ。


 なんだかえらくあわててるな。


「何事だコルネリオス? われはいまとても気分がよいのだ。つまらぬ用事ではあるまいな?」


 彼女は豊満な胸を遊ばせながらいった。


 しかしでかいよな……


 うむ、悪くない。


「勇者レーテシアとそのパーティが、ここフレイガルドに攻め込んでまいったのです! 陛下、なにとぞご指示を!」


 ほへ?


 勇者?


 レーテシアって?


「なにい、レーテシアが? あの小娘め、ついにわれがすべる地に乗り込んできおったか。ふん、まあよい。われが行って、返り討ちにしてくれる」


「ドラグレシアさま、勇者レーテシアとは……?」


 俺はおそるおそる聞いてみた。


「うむ、レーテシアはアマデウスの辺境出身ながら、頭角を現して仲間を集め、われわれドラゴン属のみならず、デビル族やビースト族、とにかくおのれら人間以外はことごとく悪と見なし、討伐と称しては蹂躙を繰り返す生意気な女勇者なのだ。きゃつめ、われを怒らせるとどうなるか、目にもの見せてくれるわ」


 ほう、レーテシアとかいう勇者は女性なのか。


 ちょっと気になるかも。


 美人かな?


 どんな人か、見てみたい。


「そうだ、カイトよ」


「は?」


「われらを鼓舞する音楽を選んでかけるのだ。リサでなくともかまわん。選曲はおまえに任せる。首尾よくことが運んだあかつきには、おまえにしかるべき位を与えてやろう。それと――」


「それと……?」


「勇者レーテシアの一味を生け捕りにして懐柔し、おまえのしもべとして与えてやろうではないか。どうだ、できるか?」


「おお、なんと……」


 位か、それも興味あるけど……


 勇者の一味を俺のしもべに?


 なんかそれって、すごく悪いことな気がするけど……


 まあ、流れだしね。


 それに、レーテシアって人は女性らしいし、もし美人だったら……


 ふふふ……


 これぞ異世界ハーレムのパターンですか!?


 なんかいい感じだぞ、よーし……


「どうだカイト、音楽は決まったか? 決まったのならかけるがよい。われがそれを、魔力で国中の者たちに聴かせてやる」


「はっ、ドラグレシアさま、すぐに」


 戦いを鼓舞する音楽か。


 過激系のクラシックか?


 それともロックやメタルとかか?


 待てよ、ドラグレシアはLiSAを気に入っている。


 それにここは火の国フレイガルド。


 その住人たちを決起させる曲だ。


 火、火をつける、点火……


 よし、これだ。


「ドラグレシアさま、決まりました。すぐにお聞かせいたします」


「おお、さすがはカイトだ。よし、頼んだぞ」


 俺はスポティファイのプレイリストをいじり、藍井エイルの「IGNITE」をタップした――

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