第2話 可愛くない者同士。

 はあ…なぜこんな事になってしまったのか…。


 母が亡くなって5年。私も姉のアデレードも二十歳になって其々独立をしても良い歳にはなった。


 なったけどっ! 行き成り「再婚」とか何を言い出すんだっこのハ◯親父は!(実際◯ゲてないけど…ッチ) 夕食にエドモンズ親子としながら、お互いの挨拶なんてものをしている。


 まず最初にダリア夫人が「再婚と言ってもまだ先の話しなのよ?それに貴女達の事をもっと知ってからでも全然遅くないわ」ニッコリと微笑み見せるけど…一体どこで父と知り合ったのか。


 と、言うよりまさか母が亡くなる前から「愛人」関係だったって事はないんでしょうね?


「えぇ。最初は驚きましたが、私も妹のセレスティアも二十歳の良い大人です。母が亡くなり余生を独りで過ごす父の事を思えば…ダリア夫人みたいな方が傍にいらっしゃてくれた方が安心しますわ」


 姉も夫人に負けないほどの、笑みをうかべ正に大人対応で返しているのには、感心するしかないわ。


 それに比べ私は、皆の会話に入る事もなく、カチャカチャとフォークとナイフで食器に音を立てていた。


 横目で父の方を見れば、余程の上機嫌なのか普段の倍の量のワインを呑んでいるし。


 さっきからチラチラと、頬を染めながらルイを見ている姉は、ちゃっかり一張羅いっちょうらに着替えオマケに化粧直しまでしている。


 当の本人は、先程私に嫌な態度とは全く違い父に話し掛け笑顔だし(調子の良い奴)


 私からすれば何だか異様な光景にも見える訳なのよ。


 無理に会話に入らなくとも平気だわ。だって…昔から父は私の話しより姉の話しを優先で聞いていたんだもの。


 私が話し掛けても、二言三言で終わる素っ気無い返事に対し、姉が話し掛ける事で会話と言うものを思い知らされていた。


 子供ながらに会話って成り立つんだって思ったわ。


 何が「成り立つ」よ!幼い子供が考えるような事じゃないつぅの!


 そりゃ…私は姉と違って容量はよくないし、見た目も酷いかも知れない。


 だから、少しでも父に認められたくて見て欲しくて勉強だって頑張っているのに、父は見てくれない。


 黙々とひたすら食べている私に、ルイが「やっぱり食事の方が良いですよね」なんて皮肉めいた台詞を言って来た。


「ングッ」まさかの不意打ちを食らった、私は口に入れたばかりのローストビーフを噛まずに、飲み込んでしまう所だった。


「やだっセレスティアッたら今日はいつものお食事じゃないのよ?がっつかないでよ!恥ずかしいわ」ってなんで私よりアデレードが赤くなんのよ!確かに…の前では、はしたなかったかも知れないけど…。 


「この子ったら!またっ。ごめんなさいねセレスティア嬢。気にしないで召し上がって頂戴な?」


「はあ…」優しい声でルイに注意をしていたダリア夫人が謝れば、先程まで彼と愉しげに談笑していた父が言った。


「…ルイは何も悪くはない。セレスティア、お前はもう少しは姉さんを見習って皆と会話に入ったらどうなんだ?さっきから食べてばかりで」ワイングラスをタンッとテーブルに置き私を蔑む目で見る父にチクンッと痛む。


(まただ…また私を見るその目にはウンザリだわ)


「バレンタイン伯爵。俺が調子に乗ってしまった言い方をのが悪いんです。ただ美味しそうに食べる姿を見て気持ち良いなと思ってしまって…すみませんセレスティア嬢。嫌な気持ちになったでしょう」 庇う彼に皆の注目を浴びる私は、許すしかない状況に、私自身も過敏になっていたのかも知れないわね。


「いいえ、私自身も皆様の前ではしたない真似をしてしま「はいっと言う事でこの話はお終いにして折角家族になるんだ。今日はとことん呑みませんか?伯爵」 私の言葉を遮り、ガタンと席を立ち上がれば父に新しいワインをグラスに注いでいた。


(はっ?ちょっと待ってコイツ!鼻から私の事なんて気にしていないんじゃ…)


 呆気に取られた私を見て「フン」と鼻で笑っている彼にグーパンしても許されるんじゃない?


 幾らイケメンでも、やはり中身が無い生意気な奴なんじゃない! いんや!違うグーパンをするのは自身に向けてだわ!


 一瞬でもコイツに良い所があるのかも?と思ってしまった私を殴りたい!?


 夕食を終え、リビングで食後のお茶をし会話は尽きないみたい。


 私も夕食を終えたらサッサと部屋に帰りたかったけど…ダリア夫人が私の手を何故か握って離さない。


 と、言うのも夫人も父に勧められワインを召し上がったのが原因で、今は少し酔っている。


「こんなに楽しく呑んだのはいつぶりかしら」なんてつい呑み過ぎたのよね。


 リビングに移動をする際に、夫人がフラついたのを、私が咄嗟に腕を掴んだのが原因なんだけどね?


「だ、大丈夫ですか?夫人!」


「あらぁ?セレスティアちゃんありがとうね?私ったら呑み過ぎたのかしらね」ポポポッと頬を高揚させ少し呂律が回らない夫人を(…か、可愛い)なんて思ってしまった。


「まあまあまあっセレスティアちゃんの手ってぷにぷにしていてとても気持ちが良いわぁ」


 それから、リビングに移りソファーに座っても、夫人は私の手を離さないでいるって訳。


 まぁ…手くらいは差し出しても一向に構わないわ?構わないんだけど…さっきからルイの突き刺す様な視線が痛い。


 ソファーに座っていても私は皆の会話に、入る事はなくただのヌイグルミみたいに座っているだけ。


 夫人って前世は猫か何かだったのかしら。さっきから皆と会話をしつつも私の、腕や手をプニプニと容赦なく揉んで来る。


 夫人が猫なら私の前世はきっとヌイグルミよね?きっと。


「…母さん。さっきから令嬢の手を揉み過ぎだって…全くどんだけだよ」 夫人に対し「スン顔」のルイはカチャンと紅茶のティーカップを置き苦言をしていたけど、夫人は「あらぁルイくんは妬きモチを妬いているのかしら?だったら貴方も彼女の手を握ってみなさいな?病み付きになるから」


 夫人はそう言うと「ちょ…っ夫人!」私の手をグイッとルイの前に突き出した。


  待って!待って待って待って! さっきから夫人に揉まれ続けられた、私の手は汗で湿っているんです!そんなベタ付いたモノを彼に突き出したら。


「う…わ。汗でベタベタじゃん。母さんヤメテよ」


  眉間にシワを寄せた彼の顔は本っっっ当に嫌そうな面構えだった。


 その顔を見た瞬間、私の中の隅にある「乙女心」が傷付いた。


 それは、とても小さな「乙女心」だったけど、傷付いたのには変わりがない。


「セレスティアも良い加減に夫人から手を離しなさいな?ご迷惑でしょ?」


「そうだぞ?失礼だぞ」


 ルイの横に座っていたアデレードは、如何にも良き姉を演じる彼女と、厳格な父を演じ姉と一緒になって私を煽る。


  迷惑?良い加減?自から夫人の手を握っている様にでも見えるの?


 なんて2人に言える勇気が有れば、最初から惨めな存在になんかなってないっつうのよ!


 普段は優しい姉なんだけど…皆がちょっとでも、私に注目をされているかと思うと急に「攻撃」に変わる。


 そう自分が一番じゃないと気が済まない性格。 これの何処が優しい「姉」なんだって?分かる!分かるけど…これがのが現状だから。


「ハハハ…そうですよね。夫人ごめんなさい」 夫人が握っている手から抜け出し、そして惨めな気持ちになってしまう。


「あらぁ。私はちっとも嫌じゃ無かったわ?だってセレスティアちゃんから「皆様!折角の楽しい宴の中一人先に部屋に戻る事をお許し下さいませ。どうやらこのセレスティア少しワインを呑み過ぎたみたいで早めに就寝に就きたく存じます」 なんてのは嘘に決まってる。


 だって私今日はお酒を一滴も口にしていないのだから。


「やっぱり、あれほど呑み過ぎないでねって言っているのに…はあ。お父様良いわよね」


「ああ、そう言う理由なら仕方がない。後で白湯を部屋に持って行く様にメイドに伝えよう」


「ありがとうございます!それでは皆様引き続きお楽し下さいまし」


 めいいっぱいのピエロを演じリビングを後にした。


 私もあの2人の事は言えないわよね?私自身「ピエロ」を演じているんだから。


 リビングから出て自身の部屋に向かう中、後ろの方から私に向かって近づいて来る靴音が耳に入った。


(さっきお父様が言っていたメイドが白湯を持って着いて来たのかしら?)


 そう思っていた私は振り返る事もなく、歩いていたら急に後ろから服をガシッと掴まれた。


「…なっ!?」まさか服を掴まれるなんて夢にも思っていなかった為に、ビクッと掴まれた反動で体が上がる。


「アンタッ見た目とは違い歩くの早ぇな?」 この声、乱暴な言い方をし服を掴むのは、ルイ・エドモンズだ。


 まさか、彼が私の後を追いかけるなんてってか、それかまだ私に文句を言い足りなったって訳?


「なっなんですの?行き成り女性の服を掴むだなんて失礼ですわよ!」そりゃ そうだわよね?


「あ、いや…っ」パッと掴んでいた服から手を離した彼は何か言いたい顔だけど、何処か言葉を選んでいるみたいにも見えた。


「あん時、アンタ酒なんて一口も呑んで無かったのに何故あの時否定しなかったんだよ?それにアンタの手を離さないで握っていたのは母さんだろ?」


(…見てたんだ?私がお酒を呑んで無かった事も夫人が自ら手を握っていた事も)


「あ、貴方には分からない世界があんのよ関係無いでしょ」けどついキツイ言い方をしてしまう私。


 素直に言えば少しは分かってくれたかも知れないのに…本当嫌な性格だわ私って。


「…ふ~ん。まっアンタが良いなら別に構わないけどさ?呉れ呉れも俺の母さんには迷惑掛けないでくれよ?プニプニ体系の?」


「んなっ!プニ…ッ?」 彼の言葉にカッと熱くなってしまった私にルイは口角を上げて「楽しくなりそうだ」と一言だけ言って、再びリビングの方に向かって行った。


 キィィィィッッッ何が楽しくなりそうなのよ!? 今でも、父や姉の性格に悩まされていると言うのに…義母・義弟の存在に頭を痛める事にろうとは。







  ◇◆◇◆◇あとがき◆◇◆◇◆



 ここまでお付き合い下さり本当にありがとうございました!



 



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