そろそろ染みたかな?
タレに浸けておいた肉は、小麦粉と片栗粉を炭酸水でといた液にくぐらせる。
熱した油にくぐらせた肉を入れ、きつね色になるまで揚げる。余分な油は切って、唐揚げの完成。
「ほらほら、揚げたて食べなー」
「「い、いただきますっ」」
カリッ
「うゎ、うンまっっ!」
「ころもがカリカリですね。炭酸水でといたからですか?」
「お、せーか~い。揚げる直前じゃなきゃ炭酸が抜けちゃうから、そこだけ気を付ければいいよ。あと片栗粉ね」
「生姜があっても良かったんじゃないですか?」
「文句言うなら食うな」
出来た料理やパン、サラダ、いくつかの飲み物を、それぞれキッチンワゴンに乗せる。
「さ!お届けものしに行くぞぉ!」
「「おーー!」」
「落とさないようにしてくださいね」
「あー…あったけー」「うまっ!これうまっ!」「カリッカリ!えヤバ!えうま!」「これ何の肉だ?」「さあ…?うまいし、なんでもよくね?」「オレ、トマト苦手なんだけど…」「シッ!姫様の手作りなんだから文句ゆーなよ…!」「新入りぃ。ずりいなぁおい」「お前、姫様に弟子入りしてこい!」「じゃがいもホックホクー」「酒飲みてぇ…」「分かる。ワイン欲しい」
姫は怪我をした第一騎士団の団員たちに、出来たばかりの料理を振る舞った。
「わざわざ申し訳ございません」
「いや、いいんだ。意見がよく聞けるからな」
姫はしたり顔をする。それを見て、執事は頭を抱え、第一団長は顔を少し青ざめ、見習い料理人と新人騎士は顔を引きつらせた。
彼らは料理に使われた肉の正体を知らない。彼らは姫の、意見という名の実験台になってしまった。
第一団長は、一切肉に手をつけなかった。
「なぜだ」
「「「「当然でしょうが」」」」
メイド達は噂する。
「ねえ、『暴食姫』っているじゃない?」
「ええ。ベルゼローナ王女ね」
「あの御方も残念よね~。見た目と性格はいいのに~」
「本当に。あの趣味さえ無ければ優良物件に簡単に嫁げるでしょうに」
「「「「ハァ~~………」」」」
「っでもね、でもね?ベルゼローナ様に婚約のお話が来てるみたいなのぉ~!」
「「「へ~~」」」
「…あれっ。反応うすっ…」
「まあ、" 姫 " だし」
「そんなに興奮するものでもないわよ」
「そういえば~。ベルゼローナ様の執事の~ロゼルト様のことなんだけど…」
メイド達の噂は広がる。
暴食姫 いぎたないみらい @praraika
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