あったまるぅー

「いやー。さすが暴食姫!魔物の調理もお手の物ですなー!」

「あははっ。いやーまーそれほどでもあるんだよねー!」


ケツァルサーペントの生活圏は、王城から片道2日の距離だった。

必然的に野宿をすることになり、姫は道すがらに倒していた魔物で、簡単な料理を作り振る舞っていた。


「逞しいですね…。まさか、オークを食べることになるとは思いませんでした…」


オーク。ヒト型の豚の魔物。知能は低く、集落を作り人間、特に女性を襲う。金になる部分がない上、生殖能力が高く、広い地域に生息しているため冒険者たちからも嫌わている。


「ヒト型でも豚は豚だし、行けると思ったんだが。正解だったな!!」


まず、血抜きをしてから内臓を全て取り出し、水でよく洗う。綺麗になった肉は手頃な大きさに切り分ける。


次に臭みを取るために、薬草と一緒にひたすら煮込む。浮いたアクは全て取り除く。アクが出なくなったら取り出し、肉を煮込んだ水は薬草ごと捨てる。


オークの肉で作ったのはスープだった。


臭みを取った肉を一口大に切り、辺りに生えていた野草や薬草をいれ、塩・胡椒で味付けをしたシンプルなもの。

ただ、採ってきた物の中に生姜が混じっていたようだった。おかげで、体がよく温まるスープになっていた。


「どうだ?ロゼルト。ウマイだろぉ?」

「ええ。塩加減がちょうど良いですね。オーク肉も臭みがなく、普通の豚肉のようです」

「フフーン。スゴいだろ!」

「ですが。一国の姫としては褒められたものではありません。料理はまだ良いとしましょう。お菓子の方がより良いですが。ただ、オークをご自分で仕留めるのはダメです。ご自分の立ち場を理解してますか?貴女は第三王女なんですよ?怪我をすると我々の責任になるんですよ?それを分かっていて行動しているんですか?勘弁してください、本当に。私の " 給料 " が減るし、最悪殺されるじゃないですか」

「うーん。君のその欲に忠実なところ、私、気に入ってるよ」

「なら大人しく、私のお願いを聞いてくれません?」

「やだ」


いつものように、姫と執事の攻防が始まる。


この場所は、ケツァルサーペントの生活圏からはまだ距離があった。


姫一行は食事中で、全員が纏まって食事をしていた。


食事中は武器を横に置き、狭い間隔で座っていた。


そして、緊張感をほぐすいつも通りの会話。



危機感が欠如していた。



最初に気付いたのは、少し遠くにいた執事だった。


( いつの間に!? )


ケツァルサーペントの尻尾が、姫に向かって振り下ろされていた。

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