姫様っっっ!!

上から大きな尻尾が襲いかかる。

既に避けられない程の距離にあった。



( あ。死ぬ )



ーーーーヒュンッッ

ドッッッッ!!


"グゴァァァーーーー!!"



「ーーー姫様!!それ使って下さい!!!」



( ーーーあ、剣 )


目の前の尻尾には剣が刺さっていた。先程、執事が投げたものだ。


( ロゼルトの )


姫は導かれるまま、剣に手を伸ばし、ケツァルサーペントの尻尾を縦に裂くように滑らせながら、剣を抜く。そして、構える。


ケツァルサーペントは悲鳴を上げながら、自身の尻尾を傷つけた剣を持つ姫を見据える。そして睨み、吼える。



" グゴルァァァァァ!!!"



ケツァルサーペントの叫びが耳に、脳に、響く。重く、圧がかかる。

その叫びに姫は顔をしかめつつ、

ーーーーー笑う。



「活きがいいッッ!!」



ケツァルサーペントが姫を喰わんと、突進する。

それをヒラリと避け、剣を横に振る。

鱗は傷つき、肉がちらりと見える。


( っ!本当に固いな…っ )


ケツァルサーペントの頭と尻尾が襲いかかる。その攻撃は雨のように降り注ぎ、落石のように爪痕を残す。

姫は攻撃を避けていく。蝶のように、踊るように。ヒラリ、ヒラリと。

攻撃を避けながら、確実に傷をつけていく。


ケツァルサーペントが尻尾を横薙ぎに振るう。

尻尾には同じ箇所に幾つもの切り傷がある。

姫はそこを狙い、一閃。



" グルァァァァァァ!!!"



切り口からは、大量の血が流れ出す。切り落とされた方はピクピクと痙攣している。


「ほら。攻撃手段が一つ減ったぞ!」


姫は再び構えようとした。


剣を構えようとした位置に、ケツァルサーペントの顔があった。


ケツァルサーペントの牙が、今にも姫の腕に当たりそうだった。


牙には、毒がある。




ーーー姫は、死ぬとは思わなかった。




" グゴルァァァァァァァ!!!!! "




ーーー執事の一太刀が、ケツァルサーペントの頭を切り落とした。




ケツァルサーペント頭は転がり、胴体は姫に届く一歩手前で倒れ、痙攣する。


「「「ーーーーーーーーーーー」」」

「ーーー…………う、」



「「「「うおおおぉぉぉぉぉ!!!」」」」



ケツァルサーペントの討伐は終わった。


「姫様!お怪我ありませんか?」

「ん、ない。それにしてもさすがだな、元暗殺者は。1人で出来ると思ったんだが…。ハァ~…。…良いトコロ奪われたぁぁぁぁ!!」

「1人で殺りきろうとしてたんですか!?危ないでしょうがッ!!」



後日。

世界各国にある多種多様な武器を、ピエロのように扱う元暗殺者の執事は、姫を守り、ケツァルサーペントを倒したことで、たんまりとボーナスを貰ったそうな。

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