戻るな
古蔵祐章
戻るな
昼休憩天気の会話と手羽煮付け口から出せない骨砕き呑む
遠回り深夜の鼻を通過する金持ち眠る庭の雑草
虫なのかスパイスなのかわからない浮くそれをあえて食べてみる朝
道路脇ビールと遺影だけ持って花見する人傘もささない
夢現コツンの音に我帰る天から落ちるカナブンのパチモン
初めての雪ベランダで舐めてみたあの日を超える煌めきがない
茹蛸の「しね」と「辞めろ」を受け流し家路について腹から笑う
昨日から未だ消えない保留音こめかみの奥に埋まる心臓
消えかけた痣を強めに押す儀式無くさずに済む祈りの証
本当は好きな食べ物茶碗蒸しお前にだけは絶対言わない
泣き声で目覚める夜明けのワンルーム頬の水気のあとに湿疹
どっちかな元からそこに居たあの子頭の中では二人が喋る
親指をホッチキスに入れてみてガチャンと鳴すとそりゃまあ痛い
「寝ぼけてる?」笑う声の隙間にも夢から羽音ブンブンブンブ
賢いを重ねるたびに詰まってくさすがだよねを被る錠剤
恨みごと夜通しとなえて境なく込めた決意が懇願にかわる
軒先で大きな火花を浴びながらバンよりヒューが刺さって苦い
本心を詳らかにするわけがない飾るこの身を見て分からんか
4桁で耐えた通帳握りしめそれでも俺は長子でいたい
この世界全てを捨てたと言いながら水道管の業者は招く
戻るな 古蔵祐章 @kurano_0511
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