第12話 マリーの犠牲と舞の葛藤

舞とチームは、巨大な魔物と対峙していた。鋭い牙と爪を持つ魔物が、彼らに向かって咆哮を上げる。戦闘が激しさを増す中、舞と仲間たちはそれぞれの力を駆使して戦っていた。


「リック、右から攻撃するわ!」と舞が叫び、素早く魔物の右側に回り込んだ。


リックは頷き、左側から魔物を攻撃する。「了解!皆、気をつけて!」


その瞬間、魔物が鋭い爪を振りかざし、チームメンバーの一人であるマリーに向かって突進してきた。彼女は避けきれず、魔物の攻撃をまともに受けてしまった。


「マリー!」とリックが叫んだが、間に合わなかった。


魔物の爪がマリーの体に深く食い込み、彼女は地面に倒れた。舞はその光景に凍りついた。


「マリー…!」


舞の目の前で、マリーが苦痛に歪む表情を見せながら倒れていく。その瞬間、舞の内側から突如として強烈な衝動が湧き上がった。ゾンビとしての本能が、マリーの負傷した姿に対して欲望を掻き立てた。


(ダメだ、こんなことは…!私は人間としての理性を失うわけにはいかない…!)


舞はその思いに抗うように目を閉じ、深呼吸を繰り返した。だが、内なる声は止まらない。


(お母さん、お父さん…)


舞は心の中で家族の顔を思い浮かべた。彼女の中で人間としての理性とゾンビとしての本能が激しくぶつかり合っていた。その瞬間、リックが叫んだ。


「舞さん、何してるんだ!早く助けてくれ!」


舞ははっと我に返り、すぐにリックの方を見た。彼は必死に魔物と戦っていたが、仲間を失ったことで力が弱まっていた。舞は深呼吸をし、自分の内なる衝動を押さえ込み、リックに向かって駆け寄った。


「ごめん、今行くわ!」


舞は再び戦闘に集中し、魔物に立ち向かった。彼女の心の中には、マリーを守れなかった後悔と、ゾンビとしての本能に打ち勝つ決意が燃えていた。


「これ以上、仲間を失うわけにはいかない…!」


舞は自分の全力を振り絞り、魔物に攻撃を加え続けた。リックと他のチームメンバーも力を合わせ、ついに舞の拳が魔物の頭部を貫いた。


魔物が地面に倒れ、その命が尽きた。舞とリック、そして他のチームメンバーは疲れ果てながらも安堵の表情を浮かべた。しかし、彼らの勝利は悲しみに包まれていた。マリーの無惨な姿が、皆の心に重くのしかかっていた。


「マリー…彼女を守れなかった…」とリックは声を震わせた。


「リック、私たちは全力を尽くした。彼女の犠牲を無駄にしないためにも、この経験を次に活かそう」と舞は静かに言った。


舞はマリーの遺体に近づき、そっと彼女の目を閉じた。「ごめんね、マリー。あなたの勇気を忘れない」


その言葉と共に、舞は心の中で再び家族の顔を思い浮かべた。彼女の心には新たな決意が生まれていた。自分の本能に打ち勝ち、仲間と共に生き抜くために、彼女はこれからも戦い続ける。


「私はまだ終わっていない。必ず元の世界に戻ってみせる。そして、家族に再会するために…」

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