第6話 深夜の目覚めと腐敗の進行

舞は深夜、突然目を覚ました。辺りは真っ暗で、窓から差し込む月明かりだけが、小屋の中をかすかに照らしていた。何かが変だ、と彼女の第六感が警告を発していた。彼女はベッドから起き上がり、自分の体に異変が起きていることを直感的に感じ取った。


冷たい空気が肌を撫でる中、舞はその腐敗臭に気づいた。自分から漂うその匂いが、以前よりも強く、鋭くなっている。彼女は手を見つめ、驚愕の声を漏らした。


「これは…」


彼女の手の皮膚はさらに青白く変色し、ところどころ黒ずんでいる部分が広がっていた。触れると、肉が柔らかくなっているのが分かる。腐敗が進んでいる。自分の体がゆっくりと崩れ始めていることに気づき、恐怖が胸を締め付けた。


舞は鏡を探し、小屋の片隅に置かれた古びた鏡の前に立った。自分の顔を見た瞬間、絶望的な気持ちがこみ上げてきた。頬は痩せこけ、目の周りには深いクマができている。唇もひび割れ、ところどころから血が滲んでいた。


「これが…私なの…?」


その問いは、誰にも答えられない。しかし、腐敗臭を放ちながらこのまま放置すれば、村人たちに危険が及ぶ可能性が高いと彼女は理解していた。


「なんとかしなければ…」


舞は深呼吸をし、自分の中で冷静さを取り戻そうと努めた。腐敗臭を抑える方法を考えるために、現実世界での知識を総動員する必要があった。彼女は医療ドラマや生物学の授業で聞いたことを思い出そうとした。


まず、腐敗を遅らせる方法として冷却を思い浮かべた。冷たい場所に身を置くことで、細菌の活動を抑え、腐敗の進行を遅らせることができるかもしれない。しかし、異世界の環境で冷却手段を見つけるのは容易ではない。


次に、匂いを遮断する方法を考えた。匂いを抑えるためには、何か強い香りで覆い隠す必要がある。彼女は小屋の中を探し回り、薬草が置かれている棚を見つけた。そこには強い香りを持つハーブがいくつか置かれていた。


「これを使ってみよう…」


舞はハーブを手に取り、それを自分の体に擦り付けた。ローズマリーやラベンダーの香りが、腐敗臭を一時的に和らげる。彼女はさらにハーブを砕き、水に混ぜて全身にかけた。匂いは少し和らいだが、完全に消えることはなかった。


「これで少しはマシになるかな…」


舞はそうつぶやきながら、自分の体の冷たさを感じ続けていた。腐敗が進行していることを実感し、心の中で絶えず葛藤が続いていた。しかし、村人たちに危害を及ぼすわけにはいかない。彼女は強い決意を胸に、次の対策を考え始めた。


「村の人たちに聞いてみるしかないかもしれない…」


彼女は小屋の窓から外を見つめた。夜明けが近づいていることを感じ取りながら、明日には村人たちに自分の状況を説明し、協力を仰ぐことを決意した。


「私はまだ諦めない…人間としての理性を保ち続ける…」


舞はそう心に誓い、再びベッドに横たわった。冷たい夜風が彼女の体を撫でる中、彼女は目を閉じ、眠りに落ちるまでのわずかな間、未来への希望と不安が交錯する中で静かに呼吸を続けた。

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