27歳OL異世界でゾンビになって腐敗臭に苦労してます ぴえん

第2話 異世界への転生

舞は目を開けた。目の前には見知らぬ風景が広がっている。まるで夢の中にいるような感覚だ。深い緑の森が広がり、冷たい朝露が葉っぱに光る。周囲の空気は澄み切っていて、鼻をつくほどの新鮮さがあった。

「ここは…どこ…？」

彼女の声は森の静寂の中に消えていった。舞はゆっくりと体を起こそうとするが、全身に広がる異様な感覚に気付く。手を見つめると、皮膚が青白く、冷たく硬直している。胸に手を当てると、心臓の鼓動が感じられない。

「まさか…私、ゾンビになってる…？」

その言葉が彼女の口から漏れた瞬間、現実の重さが彼女の上にのしかかる。自分の体から漂う異臭が鼻をつき、彼女は思わず顔をしかめた。異世界の澄んだ空気と相反するかのように、腐敗した肉の臭いが彼女の周囲を取り巻いていた。

舞は立ち上がり、ふらつきながらも足を前に進める。体の動きはぎこちなく、まるで自分の体ではないような感覚が続く。彼女は周囲を見渡しながら、自分がどこにいるのか、どうしてこんな状態になったのかを理解しようと必死だった。

「何が起こったの…？私、どうして…」

思考が混乱し、頭が痛む。しかし、次の瞬間、彼女はある音に気付いた。遠くから聞こえる助けを求める叫び声。それは、切迫した恐怖に満ちていた。

舞はその声に向かって歩き始めた。彼女の新たなゾンビとしての力が、彼女を前へと進ませる。木々の間を抜けると、そこには魔物に襲われている少年、レオン（16）の姿があった。

その魔物の姿は、まさに悪夢のようだった。巨大な体躯は人間の倍以上あり、暗黒の鱗に覆われた皮膚は光を吸い込むように見えた。目は赤く光り、まるで炎が宿っているかのように燃え上がっていた。口からは鋭い牙が覗き、涎が滴り落ちる。その息は腐った肉のような悪臭を放ち、周囲の空気を腐食させるかのようだった。

魔物の手は鋭利な爪で覆われ、地面を引き裂く音が響いた。背中にはコウモリのような翼があり、その影が地面に不気味な形を作り出していた。魔物は低い唸り声を上げながら、レオンに向かって一歩一歩近づいていく。

「大丈夫？今助けるから！」

舞は叫びながら、魔物に向かって突進した。彼女の体は、自分でも信じられないほどの力と速さで動いていた。魔物が振り向き、赤い目で舞を睨みつけた瞬間、舞はその爪が自分に襲いかかるのを感じた。

舞は素早く身を翻し、その鋭利な爪を避ける。彼女の動きはまるで風のように速く、魔物の攻撃を次々とかわした。彼女はその隙をついて、魔物の胸に向かって拳を振り下ろした。その瞬間、彼女の拳が魔物の鱗に当たり、鈍い音が響いた。

魔物は一瞬後退し、再び攻撃を仕掛けてきた。舞はその巨大な爪を再び避け、今度は魔物の足元を狙って蹴りを放った。彼女の蹴りは正確に魔物の関節に当たり、魔物はバランスを崩して倒れた。

倒れた魔物の上に舞は素早く飛び乗り、拳を連続で振り下ろした。彼女のゾンビとしての力は驚異的で、魔物の鱗を次々と破壊していった。最後に、舞は魔物の首に手をかけ、そのまま力を込めて引き裂いた。

魔物の頭が地面に転がり、赤い目の光が徐々に消えていく。舞は大きく息を吐き、立ち上がった。彼女の周囲には、魔物の体から放たれる腐臭が広がり、それが異世界の澄んだ空気に混ざり合っていた。

レオンは驚き、恐怖と感謝が入り混じった表情で舞を見つめる。

「ありがとう…でも、あなたは一体…？」

舞は一瞬言葉を探し、苦笑いを浮かべた。

「私は桜田舞。この世界に突然来ちゃったみたいだけど…どうやらゾンビになっちゃったみたい。」

レオンは困惑しながらも、舞の手を取り、感謝の気持ちを伝えた。

「僕はレオン。助けてくれてありがとう。村に戻る途中だったんだ。君も一緒に来てくれないか？村の長老なら何か知っているかもしれない。」