第2話 魔力溢れる異世界

「良い子だねぇ〜」

……どうも、めっちゃカッコつけて

最期を迎えたというのに異世界に転生した

主人公を目指す一般高校生赤子です。

(羞恥心でまた死にそう……)

赤子でも思考がしっかりと出来て良かったが、

これはこれでキツいものがある。

(神がいるなら、俺は異世界に連れてきた事を恨む)

「ディオスは本当に大人しいな」

お父様、俺……バリバリに高校生なんすわ

この世界に多分高校生って無いけども!

じゃなかった……俺の名前はディオス クレアーレ

クレアーレ家の一人息子である。クレアーレ家とは

子爵家に位置する、いわゆる下級貴族だ。

(貴族ってだけでも凄いけどな)

物語に出てくる下級貴族は不遇な扱いだが、

全体的に見れば貴族ってだけで恵まれている。

(ごめん、産まれてきたのがこんな息子で)

まぁ……喋れないから伝わんないんだけど。





「ディオスは魔術書が好きねぇ〜」

「将来は凄い魔術師かな?なぁ母さん」

両親が微笑ましく俺を見守る中、俺は……

(……この世界、最高だぜ!)

おいおい、前と言ってたことが違うって?

許せ、魔力とか憧れない男子居ないだろ(偏見)

異世界に来てから約2年、俺は

この世界に魔力が存在することを知った。

何故分かったのかって?それはだな……

母さんが料理で魔術使ってたから。

(いや……分かるよ?普通こういうのじゃないよね)

テンプレは父親の攻撃魔術とか最初に

見るものだし、俺もそういうのが良かったよ。

「将来が楽しみですね、旦那様」

「そうだなっ!」

(……俺知ってる!進○ゼミでやった所だ!)

こういうのは、赤子の時に努力しまくって

あれ?俺また何かやっちゃいました?パターンだ!

(勝ったな、ガハハ)

……と、思っていたのに




「ディオス、今日も鍛錬か?偉いわぁ〜」

「今日も頑張ります、母さん」

(何故だ……どうしてなのだ……!)

転生者に甘々な異世界は何処に行ったんだ!

俺、2歳くらいから努力してるんだが!?

無詠唱魔術?んな事出来なかったよ

膨大な魔力量?優秀だな、くらいの魔力だったよ

俺のチート主人公ライフは存在しないらしい。

「ディオス殿、鍛錬ですかな?」

「アラスカル様、いらしていたのですね」

あぁ……1つあったわ、主人公っぽい事

それは、公爵家と関わりがある事。

なんでもクレアーレ家と関わりの深い人が

公爵家の人間を助けた……らしい。

俺も父さんから少し聞かされた程度でよく知らない

「後で、ご指導お願いします」

「毎度の事ながら、勤勉ですね」

(そりゃ勤勉にもなるさ、それ努力しか出来ないんだから)

「すみませんが、少し……」

「あぁ、父様達とお話があるのでしょう?」

「本当に君は子供か疑いたくなりますね」

実際は精神は子供では無いのだが、

そんなこと言っても頭がおかしいと

思われるだけなので、黙っておく。

待っている間、剣でも振るっておくとしよう。


「はぁっ!」

前にも言った気がするが、この世界には

魔力が存在する。

そんな魔力をこんな風に剣に纏えば……

剣を振るうだけで風圧が発生する。

そして、数分剣を振るった後……

(あ〜あ、疲れた……昨日無茶し過ぎたな)

アラスカルさんが来るなら、程々にしたのに

一言くらい俺に言ってくれも良いのになぁ……。

「凄いですね」

「へっ?」

俺は突然、背後から声を掛けられ

思わず振り返ってしまう。

(……マジ?)

振り返って、そこに……俺の目の前に映ったのは

「セレネ シャトラ様……!?」

シャトラ家……公爵家の愛娘であった。

そんな公爵家の娘を前にして、彼が思うのは

(……主人公ムーブ展開来たァ!)

彼は『主人公』に憧れるバカである。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る