化狐編

第11話 謎~gimon~

 僕――星井照ほしいてるは普通とはちょっといいがたい高校生。

 ひょんなことから怪人を倒すヒーローのようなものに変身できるようになってしまった。

「先輩!昨日のあれって」

 後輩の森井華もりいはなが話しかけてくる。

「あぁ、いちおうれい魔狐まこに頼んでやってくれたみたいだね」

「なんかこれ以上ばれるとやりずらいとかなんとか」

「なるほど?」

 叢雲玲むらくもれい、僕ががヒーローのようなもの……断斬だんきになってしまった要因の刀であるぜろの人間態?で色々サポートしてくれている。

 昨日、森井さんの友人の衣笠小雨いかさこさめさんを助けた後に魔狐というこれまた零と出会う要因を作った雑貨屋の店主に頼んで僕が力を零から借りて使った記憶や変身しているところが移ったデータを一括で全世界から消してくれたらしい。

 どうやったんだろう」

「まぁ確かに謎のヒーローの方がかっこいいですもんね!」

「だね」

「まぁたイチャイチャしてるのか?」

あずま!」

 東雷豪あずまらいごう、僕の中学時代からの友人で小雨さんの幼馴染だったみたい。

 人との距離を縮めるのがとても得意で悪いやつではないけれどたまにお調子者な面が出るときがある。

 悪いやつではないんだけどね。

「そういや昨日久しぶりに小雨が連絡してきたんだよなぁ」

「最近は既読すらつけてくれなかったのにどういう心境の変化があったんだ?」

「まぁ……普通に仲良くなりたいんじゃないか?」

「私には東さんに幼馴染がいたことに驚きですけどね」

天狐てんこ!」

藤野ふじのさん!」

 藤野天狐ふじのてんこ、最近うちの学校に転校してきた女の子。

 うん、なんかそれぐらいしかいうことがないな。

「なんか失礼なこと考えなかった?」

「考えてないよ!」

「ってそんなことはどうでもよくて」

「3人とも、これを見てくれ」

 東が見せたのは一つの動画だった。

「この真紅のヒーロー」

「一体誰なんだろうな」

 そう、東の僕が玲から力を借りた時の記憶は消えているから僕が正体なんじゃっていう憶測は出てこない……はず。

 そしてうちの生徒にも同様のことは起きている。

 結構注目されることが減って気が楽なんだよね。

「他に純白の武者、赤い背中にブースターのついたヒーロー、青い方にキャノンのついたヒーロー、黄色のブースターとキャノンが付いたヒーローと同じひとなんだろうねなぁ」

 今、東が述べたのは僕の変身した姿のバリエーションで状況に応じて姿を変えて戦っている。

「ちなみにネットではスラッシュやKATANAかたななんて言われてるな」

「えっそんな名前付いてるの?」

「名乗ることがないから持っている武器からその名前が付けられているらしいね」

 と天狐が続ける。

「へぇ~KATANAかぁ」

「かっこいいな」

「なんでお前がうれしそうなんだよ」

「いや、うらやましいだけだよ」

「まぁそりゃモテてそうだしなぁ」

 ぐっ……実際は全くモテてませんよーだ。

「あとさ、今日は後輩ちゃんも混ぜてあの雑貨屋に行かないか?」

「いいねぇ」

「え~またいくの?」

「いいだろ?天狐」

「あそこ面白いものしかないんだから」

「僕はいいけど、森井さんもいいの?」

「もちろん!結構お世話になったし」

「なるほどね」

 そうして僕らは放課後、雑貨屋へ向かう.

「やっぱりここに来ると目新しいものがあって楽しいんだよね」

「わかる~」

 なんか藤野さんと東仲良くなってない?いや別にいいんだけどさ。

 小雨があんなふうになった理由もわかる気がする。

「いやぁ……そんな風に喜ばれると商売しててよかったぁってなるよ」

 魔狐がうれしそうにしてる……客来ないのかな。

「ねぇ先輩」

「どうしたの森井さん」

 森井さんが小声で話しかけてきた。

「魔狐さんってあのお面の下ってどうなってるんでしょうか」

「確かに」

「めっちゃ気になる」

「でしょ?」

「一回聞いてみます?」

「だね」

「二人ともどうしたんだい?内緒話なんてして」

「いや、魔狐さんのお面の下ってどうなってるのかなって」

「確かに、気になるな」

「いや隠してるのを聞くのはどうかと……」

「天狐は気にならないのか?」

「いや……え~っと」

 そういえば藤野さんってここに来るたびに気まずそうにしてるんだよね。

「ねぇ、冗談として聞いてもらえればいいんだけどさ」

「魔狐と藤野さんって姉妹だったりする?」

「「そんなわけないでしょ!」」

「はもった」

「ハモリましたね」

「ハモったね」

「「ハモってない!」」

「まただ」

「やっぱり気が合うんじゃないの?」

 東が詰め寄る

「ちょっ……ちょっと!近いです!」

 顔が真っ赤な藤野さん。

 やっぱり気があるんじゃないのこの子。

「た、ただ名前が似てるってだけで決めつけるのはよくないよ、照」

「それよりも買いたいと思えるような品はあったかな?」

「俺、この指輪が欲しい!」

「「?!」」

 僕と森井さんが一斉に振り返る。

「お、おいどうした二人とも」

「い、いやちょっと嫌な思い出が、ね」

「ははっ大丈夫だよ」

「それはあれとは逆でむしろ体の状態をよくするやつだからさ」

「本当だろうね?」

「あぁ、私の目に狂いはないよ」

「天狐ちゃんは何かあった?」

「こ、このイヤリングを」

「イヤリングかぁ」

「きれいでいいな」

「えっあっありがとうございます」

「そのイヤリングは確か緊張しづらくなる効果があったよ」

「厳密にはリラックス効果だね」

「照は?」

「僕は……この勾玉のキーホルダーだね」

「えっ」

「な、なんだよ!」

「いいでしょ別に!」

「かっこいいんだから」

「いやぁ……中学生っぽいぞ」

「い、いいじゃんか!」

「魔狐!これの効果は?!」

「あ、口調変わった」

「私こっちの先輩の方が好き~」

「まぁこっちが本来の星井さんっぽいもんね」

「こ、効果ね」

「えーっと」

 手帳をバラバラと捲る魔狐。

「あった」

「えーと、浄化って書いてあるね」

「浄化?」

「うん、なんか悪しきものをある程度までなら祓えるみたい」

「今じゃねぇよ!」

「て、照?」

「いや、すまん」

「少し取り乱した」

「しょうがないでしょ……あれの後に仕入れたんだから」

 小声でいう魔狐さん。

「まぁこれ、買うよ」

「最後に華ちゃんは?」

「私はこの指輪かな」

「大丈夫か?それ」

「えーと、効果は」

「天狐ちゃんのネックレスと同じで翻訳機能だね」

「一応動物とも話せるみたい」

「じゃあみんな買うってことでいいのかな?」

「もちろん!」

 そうしてみんなで買い物をして外へ出るのだった。

「な~んか引っかかるんだよなぁ」

「魔狐のことか?」

「うん」

「どうしてもあんなに隠すと逆に気になるもんよ」

「まぁ色々あるんじゃないか?」

「そうかなぁ?」

 なんて話していると

「あ~!東」

「小雨!」

「また私を置いて!」

「ごめんって!また今度誘うから!」

「だいたい天狐さんも近いんですよ!」

「ご、ごめんね?」

「ぐるるるる」

「うぇっ?!」

「な、なぁこいつも正直になり過ぎじゃないか?」

「いいじゃないですか」

「こうやってにぎやかな日々が続けば」

「そう――」

 そうだな、と言いかけた時。

「待った」

「え?」

「嫌な予感がしてきた」

「悪い!あの店戻る!」

「えっ!ちょっと先輩!」

「すまん!」

 街を走り抜け、来た道を戻っていき

 バァン!と度を蹴破ると

「て、照?!」

「ったく、ついには周りにすら危害を及ぼすようになったのか?」

「――あい

 またもや元カノの星河哀せいがあいがいたのだった……

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