第10話 雨~shower~

 僕――星井照ほしいてるは、ちょっと普通とは違う高校生。

 今は放課後、僕は後輩の森井華もりいはなの友人の衣笠小雨いかさこさめを助けるため、1年のクラスへと来ていた。

「小雨さんいますか?」

 そう聞くとそのクラスの人が

「小雨~呼ばれてるよ!」

 と呼んでくれる。

「また貴方ですか」

「しつこいんですが」

 とうざがられてしまう。

「だが華の頼みなんでね」

「その指輪、壊させてもらうよ」

「させない……そんなこと!」

『させてたまるか!』

 案の定怪人態となり、抵抗しようとしてくる。

「来ると思ってたから、玲から刀借りてるんでね!」

「ふん!」

 向かってくる小雨に刀を振るう。

『そんな刀程度で私を止めれると思うな!』

 しかしそんな言葉とは裏腹に刀一本に止められてしまう小雨。

『何故刀で止まるんだ!』

「俺が今まで何体倒してきたと思ってるんだ!」

「どうやれば止まるかぐらい!」

「わかっているんだよ!」

 一年生がかなり怯えている。

 そりゃ友達やクラスメイトが突然怪人になったらびっくりするよな。

「さて、ここで決着をつけてもいいがお前のクラスメイトが可哀想だからな」

「ついてこい!」

 そう叫ぶと俺は屋上に向かって一目散に走り出す。

『言われなくても!』

 そうして光弾を放ちながら追いかけてくる小雨。

「やっとついた」

 屋上へと到着すると反転し、小雨の方を向く。

『いつもいつもしつこいのよ』

『それにあいつも……』

「あいつ?」

 俺が不思議に思っていると

「多分、小雨ちゃんの幼馴染だと思う」

 華が教えてくれる。

『あいつには相応しくて、あいつに思いを馳せている女がいるのに何故私に構うの……』

「そいつにとってお前の方が大事なだけじゃないのか?」

『黙れ!あいつにはもう相応しい人がいるんだ!』

『だから……私は』

『私ハァァァァ!』

「うっそぉ?!」

 急にエネルギーが上昇を始める。

『オマエヲツブシテアイツモツブス!』

「これって」

「暴走よ」

魔狐まこ!」

 近くで雑貨屋を営んでいる狐面超能力少女が助けに?来てくれた。

『オマエモジャマヲスルノカ!』

 今度は光弾ではなくビームを放つ小雨。

『ガァァァ!』

 もはや人間じゃなく獣だな。

『アズマ……ライゴォォウ!』

「嘘だろ?!」

 まさかの俺の友人の東が幼馴染だったらしい。

「ってことは相応しい女って天狐か?!」

『テンコ……ソウダ』

『アイツガァァァ!』

 そこら中にビーム攻撃をばら撒く小雨。

「なぁこれやばくないか?!」

「見りゃわかるわよ!」

「一旦ここから私が引き剥がすわ!」

「頼む!」

 魔狐に相手を頼み俺は急いで下駄箱へ向かう。

「先輩、小雨ちゃんどうしてあんなに暴走してるんだろ」

「お前よりも嫉妬の感情が強かったのかもな」

「先輩……やっぱりかっこいいです!」

「今そういう事言ってる場合じゃないぞ!」

 俺と華は靴を履き替え外に出ると

「くっそぉぉ!」

 小雨に押し負けている魔狐がいた。

「狐狗狸燦!」

 狐、狗、狸のエネルギーが小雨に向かっていく。

「ってなんで聞かないのよ!」

『アズマ……アズマァァァァァァ!』

「うわっ!」

「きゃあっ!」

 再度ビームをばらまく小雨。

「おぉい!こいつどうすりゃいいんだよ!」

「わかんないわよ!」

「と、とりあえずここから引きはがしましょう!」






 そうしてどうにか公園に誘導することができたが、結局決定打は与えられず、苦戦を仕入られている。

ぜろ!さっさと決着付けたいから3で行くぞ!」

≪五分が限度だからな、気をつけろよ!≫

「わかってる!」

超速化チューンアップ・ハイスピード!」

「さっさとお前を助けてやる!」

 そうして目にもとまらぬスピードで小雨に連撃をしかける

 しかし

『ジャマダ!』

「まじかよ!」

 攻撃が当たり吹き飛ばされてしまう。

「まさか……このスピードに追い付くなんて」

「ショルダー・ガトリング!」

 肩のキャノンの先をガトリングへと変更し攻撃を仕掛けるが

『ウガァァァァァァ!』

「ちょっ待っ――」

 ものともせず吹き飛ばされる。

「ちょっと断斬!しっかりしてよ!」

「無茶いうなって」

「こいつパワーが段違いすぎる」

「5分でケリをつけられる相手じゃない!」

「じゃあどうするっていうのよ!」

「なぁ魔狐」

「どうしたの?」

「確か近くに池ってあったよな」

「あるけど……まさかあんた!」

「いったんそこに沈める」

「この子はどうするのよ!」

「一か八かだ」

「そうでもしないとこいつを止める算段はない」

「先輩!本気なんですか!」

「今俺の出せる全力はフェーズ3だ」

「それで倒せないのならいったん封じるしかないだろ!」

「それはそうだけど……」

「迷ってる暇はない!」

「魔狐!ここから何キロだ!」

「2キロくらい!」

「じゃあこのまま運ぶぞ!」

超速化・弐式チューンアップ・ハイスピード・タイプツー!」

 背中にブースターを装備する。

「オラァァァァァ!」

 一直線に池へと移動する。

 そして池に到着し

「沈めぇぇぇぇ!」

 ドボォォォンっと池の底に突き落とし自分だけ浮上する。

「悪い、ちょっと外す」

「先輩……」

「すまない」

 



 夜の公園に叢雲玲むらくもれいと二人で向かい合う。

「どうしようか」

「あぁ、あいつを鎮静化できないと勝ち目はない」

「そしたら、東雷豪あずまらいごうに会わせるのが楽か?」

「いや、むしろ興奮するだろう」

「ならどうすれば」

「あいつの復帰までの時間にあれを使えるようにしなきゃな」

「あれ?あれってなんだ、玲」

「フェーズ4だよ」

「あるのか!」

「ただ負荷は尋常じゃないし持っても」

「持っても?」

「3分だ」

「まじかよ」

「3分でケリをつけろって?」

「そうだ」

「しかしそうでもしないあぎりあいつには勝てない」

「もはや自分の体を気にしてる場合ではないぞ、星井」

「わかってる」

「だが俺は腐っても人間だ」

「どうしてもそういうのは怖いんだよ」

「じゃあなんだ?あいつに頼るのか?」

「やだね」

「ならこれしか択はないぞ、星井」

「……はぁぁ」

「わかった、制御の練習をしよう」

「そうこなくっちゃ!」

≪この力は3以上のパワーがあるからな≫

≪ブレーキをかけつつって感じだ≫

「了解」

≪速度は常時速化チューンアップ・スピード状態だし≫

≪私の切れ味も上がってるはずだ≫

「了解」

 そう返事すると目の前に泥でできた人型の物体が現れる。

≪一時的な敵を作った≫

≪反応速度とかは今日見た小雨のものからとっている≫

≪実践的だろ?≫

「あぁ!」

 そして日をまたぐまで練習するのだった。




 次の日、学校に行くと人だかりができていた

「東。この人だかりは?」

「お前知らないのか?」

「知らないから聞いてるんだよ」

「ネット上にここで怪物が現れたっていう情報が拡散されて」

「みんな何かあるんじゃないかと見に来てるわけだ」

「華ちゃんのこともあったしな」

「はぁ~ん」

「面倒くさいことになってるんだな」

 なんて東と話していると

「先輩」

 小声で華が話しかけてくる。

「どうした?」

「小雨ちゃんが」

「小雨が?」

「町で暴れてるって!」

「はぁ?!」

「どうした?照」

「いや、何でもない」

「えぇ……さぼりたくはないんだけど」

「致し方ないだろ?星井」

「玲……まぁそうだな」

「行くか!」

 そして町へ行こうとするとスマホが震える。

「何々……今日は休校にします?!」

 俺と華は顔を合わせ

「ラッキー!」

「行くぞ!華!」

「はい!」

 そして契約している駐輪場へ向かう。

「玲はもう零になっておいてくれ」

「わかった」

「よし、華は後ろに乗れ」

「えっ」

「迷ってる場合じゃないだろ!」

「う、うん!」

 そして駐輪場を出てバイクで暴れている地点へ向かう途中で、

「全てを斬り捨てる者、断斬だんき!」

 変身をしておく。

「ついたな」

『ガァァァァ!』

『コワシテヤル…スベテ!』

「そこまでだ!怪人!」

『マタオマエカ』

『コノマエカテナカッタクセニ!』

「こんどはどうかな?」

「フェーズ4!」

 フェーズ1よりも紅い、真紅のボディに肩にはキャノン、背中や足にはブースター、フェイスパーツは肆と刀が融合したようなデザインになる。

「さぁ、悪しき縁は断ち斬ろうか!」

『フザケルナァァァァ!』

「よっ!」

 高速移動でよけそのまま刀を振るう

『ンナッ!』

『キサマ……!』

「人間は日々進歩するんだぜ!」

極・速化アンリミット・スピード!」

高乱斬こうらんざん!」

 高速で移動しつつ何度も斬りつけ続ける。

『オイツケナイ!』

「残念だったな!」

『ダマレェェェ!』

 当たり前のように全方向へと光線を放つ小雨。

 それをジャンプで躱し!

「これで終わりだ!」

「ザビ・セブ・ガガ・ジオ・ギル!」

断縁斬だんえんざん!」

『シマッタ!』

 一刀両断しその切り口から小雨を救出する。

「消し飛べぇぇぇ!」

断影剣・光だんえいけん こう!」

 輝いた刀で横に一閃斬り込む。

 すると段々と光へとなっていく怪人。

『コレデオワリダトオモウナァァァ!』

 完全に消滅した。

「うぐっ!」

「先……断斬!」

 華が駆け寄ってくる。

「そいつは救急隊に任せよう」

「確かにサイレンの音がする」

「そうですね」

「よし」

 辛い体に鞭打って無理やりバイクで離脱する。

 その日の夜、ニュースになっていた。

「いやぁ……ニュースになるのは想定外だな」

「どうしようかな」

「どうするもないだろ?」

 隣にいる玲が話してくる。

「正体を明かさないように気をつけながら振る舞うしかない」

「いやでも学校であんだけ力使えば流石にバレるんじゃ」

「そこは魔狐にどうにかしてもらえるように頼んである」

「軽い記憶操作だな」

「えぇ?!」

「なんつーもん頼んでるんだよ」

「しょうがないだろ?」

「あそこまでばれたら一旦リセットが必要だ」

「ただし消すのはお前の正体だけだ」

「そうでもしないとお前これから暮らせなくなるぞ」

「わかってるけどさ」

「さすがにやばくない?というか魔狐にそんなことできるとは思えないんだが」

「たまたま手に入ったオーパーツがあるとかなんとか」

「1回きりらしいけど」

「だからそこは気にするな」

「わかったけど……後々面倒くさいことにならんか?」

「まぁその時はその時だろ」

「わかった」

「それじゃあ魔狐に連絡しておくな」

 そうして電話をかけようとする魔狐。

「待った!」

「華はどうなる?」

「一応効果範囲外にしてもらう予定だ」

 ほっと胸をなでおろす。

「さてはよかったとか思ってるな」

「安心しろよ、もうあるかわからないモテ期だからな」

「ただ説明はしておくよ」

「ありがとう」

 そして次の日に学校に行くとみんな謎のヒーローの話をしていて僕をヒーローのように扱う人は華を除きいなくなっていたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る