第7話 コンビ
その日は突然、何の音沙汰もなくやって来た。
「冒険者が侵入しました」
入口を見ると二名の冒険者。
一人はヒューマンの男性、もう一人はエルフの女性だろう。
アイリーンから種族の話を聞いていて良かった。
ま、女性の耳がエルフの特徴的な形だから聞いていなくても理解できたと思うが……。
「ここか? 聞いていた高難度ダンジョンは……」
「そうみたいね。集落から近かったし聖職者の話と合致するわ」
聖職者?
ははぁん、アイリーンが俺の位置を冒険者に知らせてくれたのだろう。
それに近くに集落って言ってたな。
アイリーンの街作りも順調に進んでいるのだろうか?
「トラップに気をつけてね」
「はいはい、分かってるよ」
男が前でそこから少し距離を取り女が付いて歩く。
男は巨大なバスターソードを背負っている。
戦士だろうか?
そういや、アイリーンからジョブについて聞いていなかったな。
今度来てくれたときに聞くとしよう。
女は腰にダガー、片手に弓を持っている。
遠距離攻撃をしてくる相手とはまだ戦ったことが無いな。
練習相手としては丁度良いかもしれない。
「む? 分かれ道か……」
「一つは下り坂、もう片方は平坦になっているわね」
「聖職者が高難度ダンジョンと言っていたしマッピングしながら進むしかないだろう。まずは平坦な方を進むぞ」
「了解」
ありゃま、そっちに進むか?
最初の分岐点は俺がまだまだ雑魚ダンジョンだった頃に作った道だ。
最奥の部屋に辿り着けるのは下り坂の方向なのである。
平坦な道の先には以前の最奥部屋があるが今はとあるモンスターの寝蔵となっている。
カチッ
「ヤバい! 何かスイッチを踏んでしまった!」
シュパッ
側面の壁から弓矢が発射される。
ふふふ、ダンジョンのトラップによくあるタイプだ。
相手が実力のある冒険者ならこの程度は難なく躱すだろう。
男は想定通り前に大きく移動し矢を躱す。
だが、甘いな。
カチッ
「なっ!?」
ヒュゥゥゥ
ズガッ
「トム!」
男の頭上から鉄のトゲが落下し男の右肩に直撃する。
アイリーンから聞いていた連携罠というやつだ。
相手の行動を先読みし罠を設置する。
ここでの壁矢は躱される前提。
後ろに下がれば何事もなく前に進めるが矢を躱す際に前に進んでしまうと必ず踏む位置にトラップ始動の床スイッチを仕掛けている。
頭に直撃すれば一発KOだったのだが……ふむ、もう少し落下位置を左にしておくか。
「トム、大丈夫?」
「ああ、大丈夫。この程度ならポーションを飲めば……」
コプッ
男がバッグから小瓶を取り出し自身の口に注ぎ込む。
右腕を封じられたままなら武器が振れないからな。
治療は必要だろう。
「ウゥゥ」
二人の前にワーグの群れが現れる。
これが連携トラップの三つ目。
落下トゲが床に落ちた時の音で魔獣が集まってくるようになっている。
「ひぃふぅみぃ……計五匹か。リン、援護を頼む」
「任せておいて!」
ヒュッ
女が放つ弓矢がワーグの脳天を貫く。
さすがのエルフ、弓の名手と言うだけのことはあるようだ。
「おおお! 五煌連斬!」
男が豪快な五連撃をワーグに放つ。
「ギャウギャウ!」
ワーグも必死に前衛の男を攻撃しようとするが巨大な剣を振り回す男に近付けないでいる。
「二つ目!」
ヒュッ
「ギャン!」
三匹のワーグをあっという間に仕留められてしまった。
冒険者も伊達じゃないってか?
「あと二匹! うぉぉぉ!」
男が大きく叫ぶとワーグは逃げ出してしまった。
ウォークライというスキルかな?
さっきの五連撃といい、この男のジョブを詳しく知りたいところだな。
「さて、前に進むか」
ふむ、ここのトラップでは仕留めることはできなかったか。
まぁ、まだまだ設置済みのトラップはあるし今も二人に合わせたトラップを構築中だ。
最奥の部屋に二人が辿り着くには一旦、戻らないといけないし試せる時間はまだまだありそうだ。
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